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私達は魔王を討ち果たすと、返す刀で本隊と合流し魔族の残党に最終決戦を挑んだ。
連戦で厳しい戦いになるかと思ったけれど、魔王が倒れてからの魔族はあっけなかった。本当に拍子抜けする程あっさりと決着がついた。
「終わったのね」
スターデンメイアが滅ぼされたのが20年ほど前。
それからは長く辛い戦いの日々だった。
それはもちろんユーヤも同じ。
「召喚されてから随分と経ったが、最後は呆気ないものだったな」
「最初は苦しめられたが、終わってみると魔王がばらばらに棲息していた魔族を集結させてくれたお陰で一網打尽にできたわけか」
「皮肉なものね」
まだスターデンメイアは復興段階だし、魔獣が全部いなくなったわけでもないので、全てが終わったわけではないのだけれど……まあ、これで一応の幕引きね。
「今までありがとねユーヤ」
「全てお前のお陰だ。全く大した奴だよ」
「おいおい何言ってるんだ?」
私達が感謝の言葉を口にすると、ユーヤは不思議そうに首を傾げた。
「まだ魔獣どもがわんさかいるんだ終わりじゃないだろ?」
「それこそ何言ってるんだ、よ」
「全くだ。後片付けまで手伝わせるわけにはいかんさ」
私とゴーガンは苦笑いした。
「それにもう5年よ」
「え?」
意味が分からないといった感じのユーヤに私は溜息を吐いた。
「彼女を5年も待たせているでしょって事よ」
「あ!?」
やっと合点がいったようね。
「5年は待たせ過ぎだよな」
「彼女はあれだけの美人なんだから、あんまり待たせてたら横から掻っ攫われるわよ」
「それは困る!」
そのユーヤの慌て振りに私とゴーガンは大笑いした。
「だったらさっさとリアフローデンにお帰りなさい」
「アシュレインの連中には、またお前が出奔したと伝えて上手くはぐらかしておくさ」
どうせアシュレインの奴らがユーヤの手柄に群がってくるでしょうけど、そんな真似は絶対にさせないわよ。
「フレチェリカ、ゴーガン……今までありがとう」
「それは私達のセリフよ」
「ああ、もともとは俺達の戦いだったんだ」
「早く彼女の所へ帰ってあげて」
「ああ、2人とも元気でな」
ユーヤは私達に拳を突き上げ私達に応えると、アシュレインの方角へと去って行った。
そんな彼の背中を私とゴーガンは見えなくなるまで黙って見送った。
「良かったのか?」
「何がよ?」
「お前、ユーヤを好きだったろ?」
「いったい、いつの話をしてるのよ」
私の気も知らないで、本当に呆れた人。
「そんなの5年前に失恋してからずっと抱えているわけがないでしょ」
「そ、そうなのか?」
「そう言うゴーガンはどうなのよ」
「お、俺?」
こいつは……
私があんたの気持ちに気づいていないと思っているの?
「私はユーヤの彼女みたいにずっと待ってあげたりしないわよ」
「そ、それって!?」
「ぷっ、くっくっくっ……あはははは……」
珍しくゴーガンがあたふたとしているのが可笑しくなって私は笑い出した。
「わ、笑うなよ」
「だって柄にもなく照れてるんだもの」
「俺はユーヤみたく恰好良くないんだよ」
少し拗ねた彼の包帯が巻かれた手を取った。
「この傷は私を守って負った傷……」
魔王から私を守る為にゴーガンが負った体中の傷にそっと触れていく。
その全てが愛おしい。
「この傷も……この傷も……全てが私の為に体を張ってくれた証し」
私は今までで一番の優しい笑顔をずっと見守ってくれていた彼に向けた。
「ゴーガンは最高に格好良いわよ」
「フレチェリカ!」
大きな巨体が小さな私を抱き締める。
「お、お、俺とずっと一緒に……ず、ずっと傍にいてくれ!」
それは彼の精一杯の想いの言葉。
だけど……
「雰囲気ぶち壊し。やり直し」
「フレチェリカ~」
素直に答えるのが癪で、ついつい意地悪をしてしまう。
私ってこんな所が本当に可愛くないのよね。
「くすっ、嘘よ」
情けない表情で泣きそうな彼の顔に、爪先立ちになって私は顔を近づけた……
こんな関係もいいのかもしれないわね。
それに、きっと彼は私を守ってくれる。
これからも……今までの様に……
2人で……ずっと……ずっと……