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「みんなの誕生日を改めて聞きたい!」
ワンダーステージで突然司はそう宣言…宣言?した。突飛な発言に寧々の冷たい視線が刺さる。
「何を今更…」
「実は前回聞いた時にメモをするのを忘れていてな!」
メモ帳を片手にそう宣う司に、類は微笑んだ。
「ふふ、司くんらしいね」
「私はね!9月9日だよ〜!」
「はぁ…。7月20日」
司はそれをメモに書き込んでいく。
「えー…9月9日…7月20日…因みに俺は5月17日だ!」
「知ってる」
「知ってるよ」
「知ってるよ司くんの誕生日!」
司の自己顕示も、“知っている”と一蹴されつつ、類に目を向けた。
「類は、いつだ?」
「僕かい?僕は…」
類の言葉が止まり、口元に手を当て考え始める。
「…いつだったかな」
考える素振りこそ見せるものの、自分から誕生日を思い出す気配は無い。呆れたように寧々が横から口を出した。
「6月24日ね」
「ああ、言われてみれば確かにその辺りだった気がするよ」
「お前なあ…徹夜明けか?」
今夜はしっかりと寝かせなければと心に決めて、メモ帳に書き込んだ。
そして、類は何でもないように微笑んだ。
「まあ、僕の誕生日だ。忘れても問題無いだろう?」
「良くないが??」
1週間後、学校
「誕生日は?」
「5月17日だろう?そんなに言わなくても分かっているよ」
「それはオレの誕生日だろう。類の誕生日だ!」
類は困ったように眉を下げるが、司の表情は変わらないままだ。
「ええと…なぜだい?」
「話を逸らすな!言ってみろ!」
類はまた少し考える。
「すまない、忘れてしまったよ」
司はズイと類に近づく。
「6月24日だ!覚えろ!!」
「努力はしようか」
類の頭は既に司を天高く飛ばす機械の設計についてだった。
翌日
「誕生日は!」
「…すまないね」
翌日
「誕生日は!」
「司くん、そろそろ辞めないかい?」
翌日
「誕生日!」
「つ、司くん…?」
同日のワンダーステージ
「誕生日!」
「あの…」
「ねぇ司」
「ん?なんだ?」
「そろそろ辞めなよ」
ここの所ずっと聞いていた台詞に、類より先に寧々が苦言を呈す。
だが、司にはそれが理解できなかった。
「何故だ。類が自分を大切にしていない証拠だろう!オレは!類がいつか自分の事を無くしてしまうのが怖いだけだ!」
「たかが誕生日だけでそこまで考えなくても…」
叫びに、類がおずおずと言葉を述べる。
「たかが誕生日…?されど誕生日だ!!何故分からない?!そうやってお前は自分を蔑ろにして、自分を後回しにして、壊れてしまうんじゃないかって……不安で、不安で…」
司の段々と小さくなっていった。類は、何も言えない。ただ立ち尽くして、司の叫びを受けるしかなかった。
「司くん…」
えむも、不安そうに司の名を呼ぶ。
類は知ってしまった、司の必死さを。
「覚える、覚えるよ。君がそこまで望むのなら。」
「類…!」
類は結局司が望むからと自身の誕生日を覚えることを宣言した。“司が望むからと”。根本が治っていない事に、司だけが気付いて居なかった。
「類、誕生日は…?」
「…6月24日だね。」
それから、司が類に誕生日を聞くことは無くなった。
だが、事が動いたのは数週間後。司はふと思い出したように類に問う。
「類、誕生日は?」
「誕生日…。ええと…」
「は?」
言えない類を見て、司は再びあの恐怖に苛まれる。
気が付けば、類の両肩に手をやって廊下の壁際まで追い詰めてしまっていた。
そして蛇足にはなるが、類の“忘れた”は厳密には忘れたでは無い。
読者の中には「類は天才で忘れたい事も忘れられないほど記憶力が良いのに、何で忘れるんだろう…?」と疑問に思った人も居るはずだ。類は今まで自身の人生に起きた事は全て記憶している。天才というやつなので忘れることはない。
例えばだが、読者の貴方は朝起きてからの24時間の全てを事細かに思い出せるだろうか?
朝目覚めた時どこを向いていた?
登校、出社の時に何人とすれ違った?
すれ違った人の性別服装は?
信号機は幾つ青で幾つ赤だった?
昼間学校で見た教科書のページを暗唱できるか?
先生の言葉を一言一句違えず覚えているか?
友達との会話を寸分狂わず再現できるか?
そういうことである。類はこれらを全て記憶する、している。ただ、有する記憶が多すぎるが故に、記憶の引き出しも多い。その引き出しを全て開ける事を類が諦めた時、それは類の中で、“忘却”と名される。
類は数週間前の司の本音の叫びを思い出し、必死に記憶の引き出しを漁る。無作為に、でたらめに、引き出しを開ける。
そこで見つけたのは確かに誕生日に関する記憶だ。
幼少期のある日、母と買い物に付き合った帰り道。自分と同じか少し大きい位の年齢の少年が母親に誕生日プレゼントを強請っていて、母親も笑顔でそれをレジに運ぶ。
この日、初めて誕生日プレゼントなる存在を知った。
その時のショックにも似た感情も類はしっかりと覚えていたので、過去の出来事なのに、今体験しているような強烈なフラッシュバックに襲われる。
その影響かほんの少しふらついた。だが、幸か不幸か、その体を司が支え、その衝撃で類は今に戻ってきた。尤も、戻ってきたは良いが、司は司で類がまた自身の誕生日が言えなくなっていってる事に追い詰められて壊れかけているが。
コメント
1件
ああ、もう…これ、すごく好きです。 類の「忘れた」が、実は“引き出しを開けることを諦めた”っていう設定、天才ならではの苦しみが伝わってきて泣きそうになりました。 司くんの「たかが誕生日、されど誕生日」っていう叫び、胸に刺さります…。自分を大切にできない類が、司くんにとってはそれだけ怖い存在なんだなって。 そして、類が「司が望むから」覚えるって言った時点で、まだ根本は変わってないっていうラストも切なかったです。 続き、すごく気になります。かのさんの筆致、本当に繊細で好きです。
ʓ Ɩ ı
252
#腐ロセカ
まよ
40
#プロセカBL
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