テラーノベル
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そこに偶々、寧々が歩いていた。
「司と類…?何してるの?」
寧々視点だと司が類を壁に追い詰めていて、類は自身より10センチも低い司に支えられている。混乱も当然だ。
「!」
「司アンタ、また始めたんじゃないでしょうね!」
司の状態から、また誕生日の話を司が引っ張り出してきた事を察する。
そして、寧々は類の幼馴染である。類がまだ自分の才に気付いていない頃、類の記憶力の話を類から聞いた。
そうして、司に支えられて顔色が少し悪い類は過去を追体験したのだろうとも察しがついた。現在でも追い詰められていたのに、追体験自体もそうだが、それも傷を抉るようなものだったら類の負担は相当だ。
「司!一度離れなさい!」
「なぜだ!寧々にオレの恐怖が、不安が分かるか!」
「貴方より、類の負担の話をしているの!」
ショー以外では大声を出すことが少ない寧々の大声に、司が負けんばかりの大声で返す。
一方類は、先程の司の寧々に対する大きな声の反発に、また記憶の引き出しを開けた。次々と開けた。
類の誕生日を誰かが口にしてる記憶は、司と、寧々と、本当に幼少の頃に母親が一応と教えてくれた時だけだ。膨大な記憶量に比べて誕生日に関する記憶が少なすぎる。
引き出しを開ける。
誕生日は誕生日ケーキを買って貰えると知った記憶。
その後のリビングに誰もいない自身の誕生日。
変人の遠巻きにされた記憶。
そのくせ類がワンダショに加入して給料が出るようになると自身の誕生日に高いモノをたかる母親。
これらを、追体験する。
「ひゅ、は、ぅあ、は、」
「類…?類!…司!離れなさい!」
「ぁ…」
寧々は司を退け、類の瞳を覗き込む。追体験は、普通の記憶でも負荷が大きい。
「類!戻ってきて!私の目を、見て!」
「ひゅ、ね、ね…?」
幼子のように寧々に縋る類。
「そうよ、寧々よ。大丈夫、大丈夫だから、戻っておいで。」
寧々がそう微笑めば、類は脱力した。寧々もそれを当然のように受け入れる。類の体躯は、寧々が簡単に支えられてしまうほどの細さであり、それがまた司の不安を増長させた。
類が安心して寧々の腕の中で意識を落とすのを、司は見ているしか無かった。そして、その中に黒く煮詰まったドロドロとした感情がある事を司は自覚していた。
廊下の角、司達の死角のオレンジ髪の人影には、誰も気付かない。
「へぇ」
零れた声がした。
「!?」
司と寧々が声がした方を振り向けば、そこに立っていたのは彰人。司は険しい表情となり、彰人から類を隠すように立つ。
「いつから、見てたの」
いつからかによっては、まずい。そう判断した寧々が彰人に聞く。
#暁山瑞希
ねる
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ʓ Ɩ ı @_︎💛🎪㌠
915
#青柳冬弥
「いつからって言うと、司センパイの『誕生日は?』からだな」
「つまり最初からだな」
最初から見ていた。その事実に、司はさらに表情を険しくさせた。
「怖い顔すんなよセンパイ。オレはただ神代センパイを保健室に送ろうと出てきただけだ」
彰人はへらりと笑ってみせた。
(このタイミングで出てきた東雲くんに類を任せるのは正直不安なんだけど…。類が軽いと言えども流石に私じゃ連れていけないし、東雲くんより、今の司に任せる方が怖いな。)
「そんなものはいらな寧々「頼める?」
寧々は司を遮って彰人に聞く。彰人はその答えに意味深に笑みを深くする。
「いいぜ、任せろ」
そうして、司に向き直る。
「退けよ、司センパイ」
彰人が司の前で挑発的に笑う。それを受けて尚、司が動く様子は無い。
だが、寧々が支えている類ごと移動をすれば、彰人は司を避けて類の元へ行く。そして、司が何かを発する前に、類を姫抱きにした。
「おい、やめろ」
その一言に、彰人が反応した。
「司センパイにやめろ、なんて言える権利があると思ってるのか?神代センパイをこの状態にしたのは司センパイだろ?」
司は押し黙る。彰人は司を見下すように笑う。
「アンタは選ばれなかったんだよ」
それだけ言って、彰人は歩き出した。
「保健室は逆方向だけど?」
「……うっかりしてた。保健室とか滅多に行かねぇから忘れてた」
コメント
1件
「類くんが幼子みたいに寧々に縋るシーン、本当に切なかった……。誕生日の記憶を“引き出し”に例える表現も好きです。それなのに膨大な記憶量の割に誕生日の記憶が少なすぎるってところがもう刺さりました。彰人くんの『選ばれなかったんだよ』も重い……。司くんのドロドロした感情も気になるし、続き待ってます!」