アパートを甲羅の上まで運ぶと俺はアパートの屋根の上に座った。
「いやあ、結構重かったなー。まあ、例の空中要塞より軽かったけど」
「ナオトー、生きてるー?」
「おう、生きてるぞー」
俺がそう言うとミノリ(吸血鬼)は俺の手を触ったり胸を触ったりした。
「な、なんだ? 俺は別にどこも悪くないぞ?」
「あんたねー、もう少し自分の体に興味を持った方がいいわよ。あっ、別にナルシストになる必要はないわよ。あんたがそうなったら普通に引くから」
「お、おう」
こいつが言いたいことはなんとなく分かる。
要するに自分の体のメンテナンスを怠《おこた》るなということだ。
「で、でもさ、俺はもうお前らと似たようなものなんだぞ? 今さらそんなことしなくても……」
「甘い! 甘すぎる! あんたはこの世にたった一人しかいないんだから、もう少し危機感持ちなさいよ!」
うーん、頭では分かってるつもりなんだけどな。
でも、やっぱりこうして誰かに言われると気をつけないといけないなーって思えるな。
「そう、だな。そうだよな。ありがとう、ミノリ。俺、少し調子に乗ってたよ」
「分かればいいのよ、分かれば。で? これからどうするの?」
「うーん、そうだなー。今日はこれ以上進めないから服作りに専念するよ」
「分かったわ。じゃあ、あたしは先に戻ってるから」
「ああ、分かった」
彼女が部屋に戻った直後、嫌な気配を感じた。
誰かが俺を探しているのか? それとも部屋にいる誰かを狙っているのか?
どちらにせよ警戒しておいた方がいいな。
俺はそれに気づいていないフリをしながら部屋に戻った。