テラーノベル
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ジェル「俺知っとるで?兄ちゃん」
莉犬「は、?」
莉犬「あっははぁ笑」
莉犬「何の話してるの笑笑」
莉犬「俺別になんも隠してなんかないって笑」
ジェル「じゃあ、なんで今泣いとるん?」
ジェル「カブトムシの話して」
ジェル「かっこよかったねって」
ジェル「今言ったやんな?」
莉犬「そ、それは…、」
ジェル「言い間違いだって言いはるん?」
莉犬「ほんとに言い間違いだし、!」
ジェル「まだ嘘つくん?笑」
ジェル「嘘つく人、俺嫌いなんやけど」
莉犬「…ッ」
ジェル「俺は今の兄ちゃんが大嫌いやッ!」
莉犬「は、?何言って、」
ジェル「はよ、ホントの事言うてくれへん?」
莉犬「だからッ…!嘘ついてなッ…」
ジェル「ふざけんなッ…!!!」
その声と同時に、頬に鋭い衝撃が走る。
莉犬「痛いッ…!!」
バシン、という音が鼓膜を叩く。
痛みよりも、心が先に揺れていた。
ジェルくんの手は震えていて、
涙で濡れた頬には、かすかに熱が残っていた。
がちゃ
気付くとジェルくんはもう部屋の中にはいなかった。
莉犬「うぅ、うわぁあん、うわぁぁ」
声を出した瞬間、喉の奥が詰まった。
嗚咽が漏れ、肩が震え、涙が視界を滲ませる。
息がうまく吸えない。苦しいほど泣いていた。
莉犬「ひっく、はぁッ…うわぁあん」
涙なんて今すぐにでも止めたいのに。
そんな気持ちを上回るように、涙が出た。
るぅと「りいぬ〜!帰りましたよ〜!」
さとみ「ただいまぁ〜」
るぅと「莉犬が大好きなお菓子いっぱい…」
るぅと「莉犬?どうしたんですかその顔」
莉犬「るぅちゃッ…ポロポロ」
莉犬「ひっく、ひっく…ポロポロ」
莉犬「はひゅッ…ポロポロ」
莉犬「うわぁぁん…ひゅッ…うわぁん」
るぅとくんたちが帰ってきてしまった。
本当は、帰ってくる前に泣きやみたかったな、
ふたりが帰ってきたらからと言って涙が止まることはなかった。
さとみ「おぉ、おぉ、」
さとみ「どした、莉犬」
さとみ「よちよち大丈夫ですよぉ、」
その声は懐かしい声だった。
今でも、みんなと同じような体力がある訳では無いが今ではもう聞かないような声だ。
いつもの低くてかっこいい声じゃない。
少し高くて、困った声。
そんな声が好きだった。
さとみ「何があったの?」
莉犬「なんも無いもん、」
さとみ「そっか、笑」
莉犬「こっくり、こっくり、」
さとみ「おいおい、マジかよ笑笑」
さとみ「俺の上で寝ちゃう感じ?笑」
るぅと「ちっ、ずるい…」
さとみ「おいおい、恨むなよ…笑笑」
帰ってきたら莉犬がないていた。
案の定、理由は教えてくれなかった。
それよりも少し気になったことがあった。
泣いている時。いや、 泣いていた時の声。
莉犬があんな泣き方をしているとなんて、
過去10年ぐらいは聞いていない。
相当、嫌な事があったのだろうか。
それとも…。
さっきは少し気まづい空気になってしまった。
だから、きっと余計に怖かったのではないかとそう思った。
るぅと「あんなに泣くの初めて見ました」
さとみ「お前が小さい時はよくこんな」
さとみ「感じで泣いてたんだよ」
るぅと「少し幼い感じがありましたよ」
さとみ「だな、」
さとみ「HSPあたりかもしれないな、」
るぅと「またですか?」
さとみ「まぁ、あれは治る訳じゃないからな」
さとみ「ふとした瞬間に何かあるのかもな」
るぅと「そうなんですね…」
るぅと「でもちょっと、めんどうです…」
さとみ「そう言うな」
るぅと「明日、莉犬大丈夫なんですか」
さとみ「あぁ〜墓参りか?」
るぅと「はい」
るぅと「もし、少しでも気分が悪かったら、」
さとみ「それは行かせらんねぇよな…」
るぅと「それにです!」
るぅと「さっき泣いてる時」
るぅと「もう少しで過呼吸の部類でしたよ」
さとみ「おぅ、」
るぅと「僕たちが少しでも遅かったら、」
さとみ「だな、」
さとみ「今回は俺たちがすぐ帰ったから」
さとみ「良かったが…、」
るぅと「そうですよ、」
さとみ「まぁ、大丈夫だよ」
さとみ「俺いるからなんとかなる」
るぅと「はぁ、笑」
るぅと「だからそういう問題じゃッ!」
さとみ「心配すんな。」
さとみ「莉犬なら大丈夫だから、」
るぅと「…」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸メール
ななもり「さとみくーん」
さとみ「ほい、なんでしょ?」
ななもり「ジェルくん泣いててさぁ」
ななもり「なんでって聞いても答えて」
ななもり「くれなくってぇ…」
さとみ「莉犬も泣いててさ」
ななもり「え、ほんと」
さとみ「マジ」
ななもり「二人の間になんかあったのかなぁ」
さとみ「かもなぁ、笑」
ななもり「莉犬くんは大丈夫そう?」
さとみ「ちょっと過呼吸気味だったけどな」
ななもり「そっか、それなら良かったぁ、」
ななもり「まぁ、様子見ですかねぇ、笑」
さとみ「だな笑」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ジェル
何となく、わかってた。気付いていた。
雰囲気があんまり変わっていなかった。
確かに、莉犬は莉犬だ。
変わらないものだって、あるだろう。
そうじゃない。おかしい所が沢山あった。
例えばキッチン。
危ないからと一回も入らせたことは無い、
未知場所。
それでも莉犬はどこがどこにあるのか、すぐに見抜いてみんなにご飯を振舞ってくれた。
明らかにおかしい。
前の莉犬くんには出来ないはずのことが、今の莉犬くんにはできてしまっている。
記憶が戻ったわけじゃない。
もし戻ったとしたなら、
もっと何かしら報告があるだろう。
そんなこんなで、気付いていた。
しかし、言い方を間違ったようだ。
兄ちゃんは、泣いていた。
俺は気まづい空間に痛くなくて、逃げ出した。
俺は兄ちゃんと分かり合えない。
コメント
7件
ここまで一気見させて頂きました! めちゃくちゃ面白かったです! 続き楽しみにしています!
いろいろ、見るの遅くなっちゃいました…… なんか知らない間にもっっっっと神作になっててびっくりです…w 神っ"っ"!!!!
いいお話です 続き楽しみにしてます