その夜。
過保護ルールのおかげで、私はいつもより早くベッドに入れられていた。
部屋は静かで、カーテン越しに月明かりが差し込んでいる。
(……眠れる、かな)
昼間はあれだけ騒がしかったのに、夜になると嘘みたいに静かだ。
私は布団の中で、そっと目を閉じた。
――けれど。
どれくらい時間が経っただろう。
ふと、胸の奥が、ひやりとした。
(……なに?)
目を開ける。
部屋は、変わらず暗い。
誰もいない。
物音もない。
なのに。
(……寒い?)
違う。
冷たい、というより――沈む感じ。
胸の奥で、何かが、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。
(……光じゃ、ない)
はっきりと分かる。
いつもの、温かくて優しい感覚とは、まったく違う。
私は小さく息を吸った。
すると。
――すう。
部屋の隅の影が、わずかに揺れた。
(……え)
目の錯覚、だと思いたかった。
でも。
影は、確かに。
まるで、生き物のように、ゆっくりと広がっていく。
(……なに、これ)
怖い。
心臓が、どくん、と跳ねる。
その瞬間。
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
影が、ぴたりと動きを止める。
(……止まった?)
私は、自分の手を見つめた。
何もしていない。
ただ、怖いと感じただけ。
それなのに。
(……今の、私?)
小さく、喉が鳴る。
――だめ。
これは、知られてはいけない。
そんな直感が、はっきりと胸に浮かんだ。
私は布団を強く握りしめる。
(……大丈夫)
ゆっくり、深呼吸。
胸の奥を、いつもの光で満たすイメージをする。
すると。
影は、すうっと元の形に戻り、
何事もなかったかのように、部屋は静寂を取り戻した。
――静かすぎるほどに。
(……今のは)
夢?
それとも――。
私は答えを出せないまま、布団の中で身を縮めた。
誰にも言えない。
言ってはいけない。
だって。
もし、これが知られたら。
(……きっと、みんな)
余計に、心配してしまうから。
月明かりの下で、私は小さく息を吐いた。
胸の奥で、
何かが、静かに息づいているのを感じながら。






