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バイクで逃げ切った後、ネグとレイは街中のコンビニに寄っていた。
「……うわぁ、やば……」
ネグはリュックを抱えたまま、小さなカップアイスを手に取る。
レイは相変わらず淡々とした口調で言った。
「さすがにあんだけ逃げたら疲れたやろ。食べて落ち着けや。」
アイスを食べながら二人はそのままデパートに入った。ネグはスマホのモバイルバッテリーや替えのイヤホン、ちょっとした日用品を手に取りながら、軽く笑っていた。
だが──その瞬間。
ガッ──!!
突然、腕を強く掴まれた。
「ッ……!」
振り向くと、そこにはすかーと夢魔。
二人の目は血走っており、その顔は怒りに満ちきっていた。
「やっと見つけたぞ……!」
「何時間かかったと思ってんだよ……お前……!」
掴まれた腕は強く、逃げられない。ネグの心臓は一瞬止まりかけたが、すぐに考えを巡らせ、咄嗟に声を出す。
「た、助けて!兄さん!!」
その声は普段より少し低めで、震えていた。
本気で泣きそうな、か細い声。
すかーと夢魔の動きが一瞬止まる。
「……兄さん?」
その直後──
「おい!!!」
怒号が響いた。
奥から、レイが急いで駆け寄ってきた。
表情は普段よりも明らかに強張り、目は鋭く二人を睨みつけていた。
「手ェ離せや……!」
レイはそのままネグの腕を掴んでいたすかーと夢魔の手を力強く引き剥がした。
「は……? なんやお前……」
すかーはレイを見下ろすように言うが、その目にはまだ怒りが消えていない。
夢魔も隣で低く唸る。
「ネグ返せよ。あいつ、俺たちのもんだろ……!」
だがレイは一歩も退かなかった。
そのままネグを抱えるようにして、強い声で言い放つ。
「お前らみたいなんに、触らせるわけないやろ。……二度と近づくな。」
すかーと夢魔の視界の先で、レイはそのままネグを抱えたままデパートの透明な柵を飛び越えた。
──三階分の高さ。
「ッッ!!?」
すかーは思わず叫ぶ。
「バカかお前!!死ぬぞ!!」
だがレイはそのまま、手すりに足をかけて、一気に下へと飛び降りた。
見事な着地。ネグをしっかりと抱えたまま、膝を軽く曲げて衝撃を吸収し、そのまま駆け出す。
夢魔も唇を噛みしめたまま、ただその後ろ姿を見送るしかなかった。
「マジかよ……あいつ……!」
⸻
レイは走りながら、ネグに声をかけた。
「お前、相変わらずやな……また厄介ごと抱えて。」
ネグはレイにしがみつきながら、小さく笑ったが声には出さなかった。
心の中で、ただクスクスと。
だがレイの表情は冷めていた。
「べつに、お前のこと大事とか思ってへんし。別に友達やしな。ただ……あいつら、ムカつくだけや。」
レイの声はあくまで静かだったが、言葉は強く、迷いはなかった。
⸻
その頃、すかーと夢魔はデパートの屋上に立ち尽くしていた。
「ふざけんな……! あいつ……!」
「今度こそ絶対捕まえてやる……!」
その怒りは夜が明けても、収まりそうになかった。