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これまでどんな人生を送ってきたのか。それはどうせすぐに伝わることだ。急がず、彼の傷が癒えた頃に打ち明けよう。

でもそのとき俺はひとつだけ隠し事をする。


君に将来を誓い合った人がいたことは明かさない。


なんて別に、また関係を失うことを恐れているわけじゃない。

君がいつか全て思い出してくれるだろうと期待するわけでも、運命とか絆とかいうものを試すわけでもない。そんなものはまやかしに等しく、ロマンチストの思い上がりだ。

俺は神じゃないし、神頼みもしたくない。彼の、一度は自分に向けてくれた好意を、無理やり引き出すことをしたくないんだ。


愚直だろうが何度繰り返そうが、いちから君を愛することを誓う。誰に笑われても、否定されても証明してみせる。

だから俺は今までどおり、生きて。

もし君が全て思い出す日が来たら、その時は素直に謝ろう。もう初めて会った日のような生意気な態度はとらない自信があるから。


銀色に輝く指輪は彼に預ける。汗水流して働いた金で買ったものだけど、今の君が要らなければ捨てても構わない。今度は手では触れない、目では見えないものを贈ることにする。


時ばかり流れるけど、ずっと隣にいるから。




「うわぁ、風強いなー!」



快晴。北風が吹きよせる海岸沿いに車を停め、高科と矢千は大海を眺めた。今日は矢千の体調が良くなった記念にドライブに来ている。案の定、車好きな矢千は行く前から上機嫌で淀みなく喋り続けていた。

「やっぱりたまには現実を忘れて遊びませんとね! それで明日からまた仕事を頑張る!でしょう?」

「……そうだな」

波打つ度に水しぶきが上がり、また元の穏やかな海面に戻る。

自分達の関係もそうであったらいい。ささやかで密かな願いを乗せ、高科は果てしない水平線に目を眇めた。

「意外に冷えるからそろそろ行くか」

「はーい。……おかげさまでリフレッシュできたなぁ。部下のストレスマネジメントもばっちりですね、高科さん?」




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