「お疲れさまです、律くん」
落ち着いた声がロビーに響いた。振り返ると、制服姿の柊木琴音が柔らかい笑みを浮かべて立っていた。
律の表情がふっと和らぐ。
「柊木先輩。今日はフロント補助ですか?」
「ええ。華さんの様子も少し見ておこうと思って」
琴音は華に視線を向け、優しく微笑んだ。
「少し顔色が良くなりましたね。慣れてきた証拠ですよ」
「……ありがとうございます」
その隣で、律はどこか安心したように頷いていた。
その穏やかな表情を目にして、華の胸がわずかにざわつく。
――自分には見せない顔。
それが気になって仕方なかった。
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