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「ねぇねぇ、今日は何の日でしょうか!」
敏弥の唐突な質問に俺はすかさずカレンダーを見た。
11月11日……1が4つ並んどるけど何か意味でもあんのかな。
「分からんわぁ……何の日なん?」
「も~う!ポッキーの日でしょ~?」
ポッキーの箱を開けながら敏弥は不満げに言う。
ポッキーの日なんていつできたんやろ。そんなん関係なく食べとった気がするねんけど。
「恋人同士でするゲームがあってね、ポッキーゲームって言うんだけど」
そう言うと敏弥はポッキーを1本咥え俺の方に向いた。
この角度かわええなぁ……
「ほら、早く咥えて」
「は、はぁ!?」
俺が片方咥えたら……き、キスしてまうがな!
「大丈夫!俺が先に食べ始めてあげるから♪あ、途中で折るの禁止ね?」
「わ、分かった……」
俺は覚悟を決めてもう片方を咥えた。
この角度だとポッキーを咥える敏弥の顔が妙に色っぽく感じるのは気のせいか?
「じゃあ行くよ~!」
そう言い敏弥は一気に食べ始めた。サクッサクサとポッキーを食べる音が部屋に響き渡っているが、今はそんなことどうでもええ。
「……っ!」
顔がどんどん近付いてくるのを感じると急に恥ずかしさが込み上げてくる。
やばい……このままだとキスしてしまうで! しかしそんな俺の思いとは裏腹に敏弥の顔は更に近付いてきていた。
もうあかん!そう思って目を閉じた瞬間だった。
チュッという音と共に柔らかい感触が唇に伝わる。
驚いて目を開けるとそこには満面の笑みを浮かべた敏弥がいた。
「あははっ、そんな恥ずかしがらなくても良いのに~可愛いなぁ♪」
「か、可愛くなんか……っ!」
あぁーもう!やられっぱなしやんけ……俺かてやればできるんや!
ポッキーを再び咥えると俺は敏弥の方に向き直った。
「あ、今度は薫君から?嬉しいなぁ」
何の疑いもなく敏弥はもう片方を咥えた。
敏弥が食べ始めるより先に俺はサクサクと食べ勧める。
「んんっ!……んん」
優しいキスなんかじゃない。激しく貪るようなキスをしてやった。ゲームなんやからしゃーないやろ?
「んっ、んむっ」
舌を絡ませると敏弥はビクッと反応した。
チョコの甘い香りに思わずクラっとする。
「ぷはっ……は、激しいキスは無しだよぉ……!」
「先にやったんはそっちやろ?」
そう言われると敏弥は言葉に詰まる。
「……で、でも!こんなキスするなんて思ってなかったもん!」
恥ずかしそうにそう言う姿が可愛くて思わず抱きしめそうになるが今は我慢やな。
「こんな可愛い敏弥が見れるんやったら毎日ポッキーの日でもええなぁ」
そんな冗談を言えば顔を赤くした敏弥が俺の肩をバシバシと叩いて来る。ほんまかわええ……。
「お、俺はもう懲り懲り……!」
そう言いながらもどこか嬉しそうな敏弥はほんまに天使。
それからというもの、毎年11月になるとこの日が楽しみで楽しみでしょうがなくなってしもうた俺であった。
END.