電話が鳴ったのはもうすぐ日付の変わる頃だった。
「あっ、もしもしぃ?キャメさん?」
「……りぃちょくん?」
少し語尾を伸ばすような言葉と、えへへーとずっと笑っているその様子に、今の彼は酒を飲んでいるのだと分かった。
しかし、だからと言って何で自分のところへ連絡してきたのだろうと思い、こんな時間にどうしたの?と聞いてみた。
「今さぁ、他の配信者さん達と飲んでてぇ、そろそろ帰ろっかなって思ったんだけど、ここキャメさんちから近いし泊めて欲しいなぁって思ってぇ」
なるほど、と納得した。
そういえば以前、今度飲み会あると言っていたような気がする。
「別に大丈夫だけど、うちまで来れる?大丈夫そう?」
「んー、足元ふわふわしてるぅ」
こりゃダメだろうな。
そう思い、上着を着て車の鍵を取り出した。
「今から迎えに行くから。どの辺の店?」
「えっとねぇ、キャメさんちから大通りの方出てぇ……」
思ったよりりぃちょくんは店の場所とうちの道を覚えていたようで、記憶が無くなるほどでは無いようだ 。
だいたいの道と店の場所が分かったので、早速迎えに行くことにした。
途中、コンビニに寄って水を購入する。りぃちょくんに渡しておこう。
車を店の前に停め、店内に入るとりぃちょくんがこちらを見て、赤ら顔でにっこりと笑ってくる。
「待ってたよぉ」
「はいはいお待たせ。そろそろ帰る?」
「うん!」
今日はありがとうございました、というりぃちょくんと同じように頭を下げる。今度はキャメロンさんも、と言われもちろわと返事をした。
店から出て、車の方へ案内をする。
「へへ、キャメさんの車久しぶり~!じょしせきは初めてだぁ」
「助手席ね。ずいぶん酔ってるね、水飲む?」
「あるの?」
「飲むかなって」
「さすがキャメさん~!気遣いやばい!」
「それ褒められてるのかなぁ」
苦笑いをしながら車を発進させる。
隣で水を飲むりぃちょくんに俺は話しかけた。
「コンビニ寄ってって良い?」
「いいよお、何買うの?」
「りぃちょくんのおパンツだよ」
「キャメさんのえっち!!」
「俺の貸す訳にいかないでしょ。服くらいしか貸せないよ」
「でも確かにりぃちょのりぃちょ大きいから、キャメさんのじゃはみ出ちゃうもんね……」
「イチモツは伸び縮みするから心配無用だし、あと俺のも大きいんですけど?」
「気にしてる~!冗談じゃーん!」
ご機嫌にケタケタ笑うりぃちょくんに若干イラッとしたので落ち着くためにラジオを付けた。
付けると思いのほかりぃちょくんは静かになった。
電灯やら店やビルの明かりを、車の窓に寄りかかりながらラジオを聞いているようだった。
ラジオがリクエストの曲を流す。ゆったりとした曲で運転中じゃなければ寝ていたかもしれない。
「おれ、この曲好きかも」
「奇遇だな、俺も」
「こういう曲聴きかながらドライブするとさ、なんか良いよね」
「あー、ちょっと分かるかも」
信号で止まると、りぃちょくんからの視線を感じた。
横を見ると逆行のように、でもりぃちょくんの表情はよく見える。にこりと笑っていた。
「キャメさん、このままドライブデートしよ」
「……まだ起きていたい感じ?」
「普段だったらまだ全然起きてる時間だから大丈夫」
「酔いが覚めて、さっきの曲聴いたらデートしたくなったんだ?」
少しだけ意地悪くそう聞くと頷く。
酒が入ると少し素直になるんだな。新しい発見だ。
りぃちょくんの頭をさらりと撫でる。
「いいよ、デートしよっか」
そう言って車を再び発進させた。
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