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朝の日差しが、これでもかというように部屋を照らす。
コンタクトを装着した目で、柳原が帰った部屋を見回わす。
小さいテーブルに乗りきらずに落ちている缶。
寝相の悪い子供たちでも敵わないほどの乱れたシーツ。
部屋中に漂う煙草の匂い。
「————ふっ」
素面でそれらを確認すると、つい吹き出してしまう。
缶を水で濯いで袋に入れる。
シーツは剥がして洗濯機に突っ込む。
カーテンにも絨毯にも布団にも、アロマ入りのファブリズを吹きかける。
ひとつ、ひとつ、元の部屋に戻していく。
彩加と、ハルカと、トモキの三人の部屋に。
洗濯が終わり、それをもってベランダに出る。
この日差しの強さだったら、お昼過ぎには乾くだろう。
思いながら物干し竿にそれを引っ掛けていると、ポケットに入れたスマートフォンが鳴った。
『おい。これ見よがしに洗濯すんじゃねーよ。傷つくだろ』
慌ててバルコニーから覗くと、数十メートル離れたアパートの窓から、柳原がこちらに向かって白い煙を吐き出した。
【 泣く女 ~彩加の場合~ 完 】