「ぼんさん、これーーーーぼんさん?」
「あっ、どした?」
少し遅れて気づくぼんさんに、また少し違和感。
「最近ぼんさんボケてません?」
「そうかなー?」
そう、一ヶ月くらい前からずっとこの調子だ。病気にでもかかってるのかと思うくらい、ずっと。
「一回ネットで調べてみましょう?」
「んー、やってみよっか」
ぼんさんとは半年くらい前から同居している。違和感を感じるのも間違いでは無いはず。
「んーと、病、ぼーっとする、っと」
パソコンを覗き込むと、奇病についてまとめられたサイトがあったので、開く。すると、気になる病名をみつけた。
「ん?“虚無病”?」
ぼんさんも呟く。
「感情が徐々に消えていってしまう病気…?」
「初期症状、ぼーっとする、返答が遅れる…?ぼんさんにそっくり……」
本当にそっくりだった。
「病院いこう」
「そこまでする?」
「もちろんです、薬があるなら飲ませたいですし。ぼんさんから感情が無くなるのは嫌です」
「〜〜〜〜!」
「ふふっ」
ぼんさんがぎゅううううっと抱きしめるので、思わず笑った。
結果、薬で進行を遅らせることしかできない。ずーんと落ち込む。
「そんな顔しないのー、俺が死ぬみたいじゃーん」
「ぼんさんは死にません」
「じゃあそんな顔しないで」
ちょっとずつ変な会話になってきた。
「だって…ぼんさん…最終的には話すこともできなくなっちゃう……っ」
「泣かないの〜」
「だって…だってぇっ」
泣いてしまう。
「俺もできるだけ頑張ってみるからさ、」
だから泣かないで、と自分を気遣ってくれるぼんさんに、また泣けてきた。
一ヶ月後。ぼんさんは、泣かなくなった。<悲しい>が表せなくなってしまったのだ。催涙スプレーなど、物理的に泣かせることはできるものの、感情的に泣くことができないらしい。この前、ぼんさんが派手に転んで血がドクドクと出ていたのに、ぼんさんは泣かなかった。そこから判明した。
更に一ヶ月後。ぼんさんは笑わなくなった。<嬉しい>と<楽しい>が表せなくなったのだ。笑おうとすると、歪な愛想笑いみたいになってしまう。
ぼんさんからどんどん感情が消えていく。対処法をまたあのサイトで調べるが、何も出てこない。医者もどうもできないらしくて、泣いた。
でも、ぼんさんは泣かないーーーー
俺から感情が消えていく。そのことで、最近はおんりーちゃんの元気がない。申し訳なくなってきてしまうが、謝ったらいけない感じがするので、前向きな言葉をかける事しか出来ないでいる。
実際は、感情が消えていくのではなく、感情が表に出せなくなるだけだ。でも、その方がもっと苦しい。
自分も泣きたくて、笑いたくて、楽しみたくて対処法をまたサイトで調べるが、何も出てこない。違うサイトを漁っても、世界のどこかに一人だけ、治せる人間がいるという噂のようなものしか出てこなかった。
俺は、どうすればいいのだろうーーーー
更に一ヶ月後、すごいことが起きた。なんと、ぼんさんが自然に笑ったのだ。どうか笑ってくれ、と願って脇をくすぐってみたのだ。そうしたら、笑った。これから、快方にむかっていくきがした。
一週間後、ぼんさんが次は泣いた。泣いてくれた。嬉しくて泣くと、ぼんさんも一緒に嬉し泣きした。
ついに泣くことができるようになった。おんりーちゃんが嬉がって泣くと、俺も泣ける。治ってよかったーーーー
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とんでもなくむずいわ