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「月城さん。お若いのに美容院を経営されているそうで、本当にすごいね」
普段、あまり喋らないお父さんが言った。
悠人の持ってきてくれたお酒を、2人で一緒に飲んでいる。本当に美味しいお酒みたいで、お父さんはご満悦だ。
「いえ、まだまだ修行中です。穂乃果さんにはうちの店で頑張っていただいて本当に感謝しています」
「穂乃果は、まだまだ甘いところがあるのでね。月城さんに厳しく指導してもらわないとダメでしょうから。どうかよろしくお願いします」
「お父さん。私、今はちゃんと真面目に頑張ってるから」
思わず口を挟む。
「お父さん、お母さん。穂乃果さんは、美容師として素晴らしいセンスのある方です。私の店でも指名もつき始めましたし、これからもっと良い美容師になります。ですので、安心して下さい」
悠人……
私のこと、そんな風に思ってくれてたの?
だとしたら、私、期待に応えられるようにもっと頑張らないと。
食事も進み、お互いが少し打ち解けたところで、悠人は急に真剣な表情を浮かべ、ゆっくり口を開いた。
「……お父さんとお母さんに、改めてお話があります」
「あ、は、はい」
お父さんが、1口だけ、一気にお酒を流し込んだ。
やっぱり、わかってるんだろう、今から何を言われるのか。お母さんも、目をキラキラ輝かせて、前のめりになって悠人を見てる。
「今日、私がお邪魔させていただいたのは……」
その言葉に、お父さんまでが少し体を前に突き出した。そのままガチガチに体が固まった感じがして、ちょっと笑えた。
「私は、穂乃果さんと結婚をさせていただきたいと思っています。必ず幸せにするとお約束します。どうか、私を信じていただき、結婚をお許しいただけないでしょうか?」
この光景、テレビでは見たことがあった。でも、それが今、目の前で起こってることが信じられない。
「月城さん、頭を上げて下さい。うちは、小さな和菓子屋です。あなたみたいな人気の美容院を経営されている方に穂乃果はふさわしい娘なのか……」
お父さんはそう言って、一呼吸おいてから、また話し始めた。
「ですが私たち夫婦にとっては、かけがえのない、たった1人の大事な娘です。結婚するなら……必ず、どんなことがあっても、幸せになってもらわないと困るんです。こんな言い方をして申し訳ないですが、絶対に娘を不幸にしないと約束して下さい」
「お父さん……」
私は、その言葉が深く心に響いた。
こんなにも私は大切に思われてたんだ。
「もちろんです。どんなことがあっても、穂乃果さんを泣かせたり、不幸にはしません。ですので、どうか……ご心配なさらないで下さい」