テラーノベル
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体育のケガから数日。
足首の痛みはほとんどなくなった。
でも 俺とそうたの距離は、少しだけ変わっていた。
避け合うわけじゃない。
かといって、昔みたいでもない。
微妙な距離。 その距離感が、一番苦しかった。
⸻
朝。
教室に入ると、すぐに声が聞こえた。
🐬「おはよ、まなと。」
🐧「……おはよ。」
短い挨拶。
それだけなのに、クラスメイトが少し驚いた顔をする。
「お、仲直りした?」
「最近全然話してなかったじゃん。」
🐬「別にケンカしてたわけじゃねぇよ。」
そうたが笑う。
俺も小さく笑ってごまかした。
本当は、そんな簡単な話じゃない。
⸻
四時間目。
移動教室へ向かう途中だった。
廊下を歩いていると、誰かに肩がぶつかる。
「ごめん!」
その拍子に持っていたプリントが床へ散らばった。
🐧「あ……。」
しゃがもうとした瞬間。
🐬「そのままでいい。」
そうたが先にしゃがみ込む。
散らばったプリントを、一枚一枚拾い集めてくれる。
🐧「……自分でやる。」
🐬「いいから。」
何気ないやり取り。
でも。
その光景を見ていたクラスメイトが笑う。
「そうた、優し。」
「彼女いるのに、まなとの世話ばっかじゃん。」
その一言で。
空気が少し止まった。
🐬「……別に。」
そうたは照れくさそうに笑う。
でも、否定はしなかった。
俺は拾ってもらったプリントを受け取る。
🐧「ありがとう。」
🐬「おう。」
たったそれだけ。
なのに、胸が少しだけ温かくなる。
⸻
昼休み。
購買へ向かう途中、 そうたが俺の隣を歩いていた。
🐬「何食う?」
🐧「パン。」
🐬「また?」
🐧「楽だから。」
🐬「ちゃんと食えって。」
呆れたように笑う。
昔と同じ。
そのやり取りが、少しだけ懐かしかった。
すると。
👧「そうた!」
後ろから彼女が走ってくる。
🐬「あ。」
彼女は笑顔でそうたの腕を軽く叩いた。
👧「今日一緒に食べよ?」
いつもなら そうたは迷わず「いいよ。」と言っていた。
でも 今日は違った。
そうたは俺を見た。
ほんの一瞬だけ。
その視線に気づいてしまう。
🐧「……俺、先行く。」
そう言って歩き出そうとすると。
🐬「待って。」
そうたが俺を呼び止めた。
彼女も驚いた顔をする。
🐬「まなとも一緒に食わね?」
その場が静かになる。
👧「え?」
彼女が小さく声を漏らした。
俺も固まる。
🐧「いや……。」
断ろうとした。
でも。
🐬「久しぶりじゃん。」
昔みたいに笑うそうた。
その笑顔を見ると どうしても断れなかった。
🐧「……少しだけ。」
⸻
三人で食べる昼食。
正直、気まずかった。
彼女は優しく話しかけてくれる。
俺も普通に返す。
でも そうたは何度も俺を見ていた。
👧「そうた?」
彼女が不思議そうに首をかしげる。
🐬「ん?」
👧「さっきから、まなとのこと見すぎ。」
その一言で。
そうたの箸が止まる。
🐬「え?」
👧「無意識?」
笑いながら言われた言葉。
でも そうたは何も言い返せなかった。
本当に、無意識だったから。
俺は気まずくなって視線を落とす。
🐧「……俺、先戻る。」
立ち上がる。
🐬「え、もう?」
🐧「先生に呼ばれてたの思い出した。」
もちろん嘘だ。
これ以上ここにいたら また期待してしまう。
🐬「そっか。」
そうたは少しだけ寂しそうに笑った。
その表情を見て 胸が痛くなる。
⸻
教室へ戻る途中。
🐧「……ダメだ。」
期待するな。
あいつは彼女と付き合ってる。
優しいのは昔からだ。
俺だけ特別なわけじゃない。
そう何度も言い聞かせる。
それでも。
昼休みに見たそうたの表情だけは、どうしても忘れられなかった。
⸻
一方、その頃。
👧「ねぇ、そうた。」
彼女が静かに口を開く。
👧「最近、まなとくんのこと気にしすぎじゃない?」
🐬「……え?」
👧「なんかね。」
少しだけ寂しそうに笑う。
👧「そうたが見てる先って、最近ずっと私じゃない気がする。」
その言葉に。
そうたは初めて、何も返せなかった。
コメント
1件
読み終わりました…ああ、もう、胸がぎゅっとなる話ですね。そうたが無意識にまなとを見ちゃうところ、彼女に「見てる先が私じゃない」って言われて何も返せないところ、すごくリアルで切なかったです。まなとの「期待するな」って自分に言い聞かせる姿も苦しい…でも、そうたの「久しぶりじゃん」って笑顔で誘ったあの瞬間、きっと本心だったんだろうなって思うと、続きが気になって仕方ないです。丁寧な距離感の描写が本当に素敵でした🌷
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