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うさぎになっちゃったマッシュくん3
【レイン視点】
俺はマッシュに思いを寄せている。
マッシュに少しでも意識して欲しい、そう思い、見かけたら声をかけるようにしていた。
俺自身でも理解しているが、俺はものすごく無愛想だ。
昔はその無愛想さが気になることはなかったが、今では自分の表情筋が憎い。
マッシュといるとすごく暖かい、安心する。
そう思っても俺の表情はピクリともしなかった。
アイツも表情が変わらない。
だが、すごく愛おしい。
案外アイツは分かりやすいやつだ。
シュークリームを食べている時はすごく嬉しそうで、友人と一緒にいる時も楽しそうだ。
アイツは笑わないが、目が優しくなる。
きっと俺はマッシュのそういうところに惹かれたのだろう。
気づいた時には案外ストンと納得した。
そんなある時マッシュがうさぎになっていた。
ちょこんと丸く、ふわふわで黒い毛並みで、耳が垂れていた。
「もしかして兄さま……触りたい?」
フィンが突然そんなことを言った。
もちろん触りたい、とは言わず、頷いた。
「……だって、マッシュ君いい?」
フィンが聞くと、マッシュは頷いた。
俺はフィンからマッシュを受け取った。
すごく小さかった。
ふわふわで愛らしい、わたあめのようだった、
俺はいつもの倍優しく撫でた。するとマッシュは気持ちいいのか目を細めウトウトしだした。
可愛い。
脳みそにはその言葉しかなかった。
「兄さま嬉しそうだね」
フィンはくすりと笑い俺に言った。
「そうか?普通だぞ」
普通なわけがない。すごく心臓がバクバクだ。
「いつ頃戻るんだ?」
暴れる心臓を落ち着けフィンに問いかけた。
「先生が言うには明日には戻るって」
「そうか……」
少し寂しい気持ちになった。この姿のマッシュを目に焼き付けておきたい。
なんて思っているとフィンが突然
「……兄さま、良かったらマッシュくん連れてっていいよ?」
なんてことを言い出した。
マッシュも驚いたのかフィンのほうを見た。
「いいのか……?」
「うん、何だか兄さま寂しそうだったから。今のうちにうさぎ姿のマッシュくんを堪能してよ」
フィンはもしかしたら俺の気持ちに気づいてるのかもしれない。
「お前は嫌じゃないか?」
俺はマッシュにに同意を求めた。
するとマッシュはふるふると首を横に振る。
「決まりだな」
ふ…と笑えたような気がした。
うさぎだと親しみやすいのか、すごく自然な笑いだったと思う。
「どの道、この姿のままでは授業を受けていても仕方が無いからな、今日は早めに帰るか」
「マッシュ君をよろしくね」
「ああ」
そう、返事をし、マッシュを優しく抱いたまま転移魔法を使った。
「着いたぞ。ほら、おまえら仲良くしろよ」
部屋に着くといつものように飼っているうさぎ達が俺の足元に集まってきた。
いつ見てもうさぎは愛らしいな、そう思いながら俺はマッシュを床に手放した。
「今日はここにいるんだから、みんなと遊んどけ」
マッシュに気づいたうさぎ達はスンスンとマッシュの匂いを嗅ぎ、
安心だと思ったのか体を寄せてきた。
その光景はまさに天国のようであった。
(愛おしい……守りたいこの命……)
ウトウトしているマッシュの顔を見ていると、
まだ業務が終わっていない事を思い出した。
「……俺は残りの業務を終わらせて来るから仲良くしてろよ」
名残惜しいと思いながらも俺はマッシュの頭を撫で、部屋を出た。
魔法局につき、書類を受け取ろうとした時、ライオさんに声をかけられた。
「なんだか嬉しそうな顔をしているな。何かあったのか?」
「いえ…ただ、今毛色が違ううさぎを預かってるんです」
マッシュのことを思い浮かべ、頬が緩んだような気がした。
その表情が珍しかったのかライオさんは目を見開いた。
「驚いたな、お前もそんな顔をするのか」
「……悪いですか?」
俺がそう不機嫌そうに言うとライオさんは
「いや?大事にしてやれよ」
と、意味深な笑みを浮かべた。
俺は「そのつもりです」
とだけ言い、事務室を後にした。
書類がまとめ終わり、今日の仕事は終了した。
早く部屋に帰りたい、俺はただそう思うだけだった。
魔法局を出て、すぐに部屋に帰った。
だが、マッシュの姿が見当たらない。
(どこに行った?)
俺が当たりを見渡していると、
うさぎを入れているゲージにこんもりとうさぎの山ができていた。
そこを覗けば黒い毛色のうさぎが1匹。
周りのうさぎに囲まれ、スピスピと鼻を鳴らしながら眠っていた。
(愛おしい……)
ずっと眺めていたい気分だ。
すると、マッシュの耳がぴくりと動き、目を開いた。
「ただいま、マッシュ」
俺はマッシュに声をかけた。
マッシュはコクリと相槌をし、うさぎの山から抜け出した。
ぐ〜、と背伸びをするマッシュ。
「よく眠れたか」
コクコクと頷くマッシュが愛らしくてたまらない。
「そうか」
俺はマッシュの頭に手を伸ばし優しく撫でた。
やはり暖かい……
するとマッシュは俺の服をよじ登り、肩に乗った。
何をする気だ……?
そう思っていると、マッシュは俺の頬をぺろりと舐めた。
俺の思考が停止した。