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スーッと理科準備室のドアをゆっくりと開ける。
人の気配はない。
しかし罠だと分かっている以上油断はできない。
慎重に周囲を警戒しながら部屋に入る。
部屋は電気がついておらずカーテンで遮光され薄暗い。
犯人はまだ来ていないのか…?
異様な静けさに緊張が走る。
「よく来たな」
突然どこからか声が聞こえ、伸びてきた蔦のようなもので拘束される。
身体の自由が奪われ、その場に倒れる。
「まさか本当に一人で来るとはな」
声のした方を見る。
「お前は……!!」
暗闇に目が慣れてきて、そいつの顔が浮かびあがる。
そこにいたのは、一人の男子生徒。
「……誰だ?」
見知らぬ顔に鬱先生は眉を顰める。
その反応に眉間を抑える男子生徒。
「まぁ知らなくても無理ない。会ったことはないからな」
まさか男だったとは。草凪も言っていたが勝手に犯人は女だと思い込んでいた。
「お前が俺に脅迫文送りつけた変態野郎か」
そう言うと男子生徒は怒りに表情を歪ませる。
「変態はお前だ!!!」
凄い剣幕で叫ばれた。
言われ慣れてはいるがそんなガチで怒られたことはなかった為「す、すいません…」と咄嗟に謝ってしまう。
「女と見たら誰であろうと手ェ出しやがって!」
「……何のことや」
蔦でギュウギュウに縛られ、床に這いつくばった状態で見下ろされる。
蔦を伸ばしているのは男子生徒の後ろに隠れるモンジャラだとわかった。
「お前は自覚ないだろうな。教えてやるよ。お前の罪を」
冷ややかな視線。
ごくりと息を飲む。
「ーーーお前はナツミに手を出した。俺の妹に。
……そしてお前はナツミを捨てた」
その言葉に驚く鬱先生。
悔しそうに歯を食いしばる男子生徒。
「ナツミは、ずっと苦しんでた!お前に捨てられてから食事も喉を通らなくて体調を崩して、学校にも通えなくなった!全部お前のせいだ!お前が気まぐれで手を出して、そして気まぐれに手放して傷つけて…ナツミがどれほど泣いていたか知らないだろう!」
妹想いの兄なのだろう。
憤怒の感情が痛いほど伝わってくる。
「…ナツミが傷ついた分、お前も傷ついてもらわないと気が済まない」
男子生徒がしゃがみ、鬱先生の顎をガッと掴み上げる。
「なぁ、今までそうやって何人泣かせてきた?人の心を持たない悪魔め」
痛い。顎が割れる。
しかし拘束されていて抵抗できない。
「…ここ何階か知ってるか?3階だよ。落ちたらどこかしら折れるだろうな」
ハッと目を見開く。
男子生徒はにやりと嗤っていた。
「書いたよな?手紙に」
…冗談じゃなかったのか、あの脅迫文。
このままだと骨が粉砕される。
どうしたら…。
考えている間に体はツタで持ち上げられ、窓の方へと移動する。
シャーッとカーテンと窓が開けられ、一気に外の光が差し込む。
「俺がお前の罪を裁いてやる。
…最後に言い残すことはあるか?」
窓の外に出された体から、徐々にツタが緩んでいく。
「…せやな、最後にひとこと言っとくわ」
冷や汗をかきながら、男子生徒の方を見る。
「…俺は女を捨てたりせーへん、絶対に」
「…じゃあな、鬱先生」
ツタが完全に緩んだ。
体は下へ落ちていく。
そのまま地面にぶつかる筈だった。
「ーーー雪乃ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」
鬱先生は落下しながら叫んだ。
その声に呼応するこのように、空中で体が止まる。
男子生徒は窓から下を覗き込んで「なっ!?」と声を上げる。
何で止まったんだ!?
「残念。骨が折れる音は聞けなかったみたいね」
男子生徒の背後から声。
振り向く前に両手を拘束され地面に押さえつけられる。
「誰だ!?」