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放課後、部室の前で荷物をまとめていたとき。
背後から勢いよくドアが閉まる音がして、
振り返ると――若井が立っていた。
「……若井?」
「……なぁ、元貴」
声が震えていた。
いつも明るい奴なのに、
今は眉間に皺を寄せて俺を真っ直ぐ見据えている。
「お前さ、涼ちゃんと……何なんだよ」
空気がピリついた。
俺は思わず口を開きかけるけど、言葉が喉で止まる。
「この前だって、一緒に帰ってただろ。
肩まで寄せて、楽しそうにさ。
……俺、全部見てんだよ」
「……っ」
近づいてくる若井。
逃げられない距離まで詰め寄られて、胸ぐらを軽く掴まれる。
「俺、お前のこと……ずっと、
幼馴染でいられると思ってた。でも……違うんだろ?」
その瞳は、苦しげで、でも必死で。
俺の心臓が痛いくらいに高鳴る。
「……若井……」
「答えろよ、元貴。……俺、お前に、負けたくねぇ」
「負けたくない」――それは誰に? 涼ちゃんに? それとも……?
頭がぐちゃぐちゃになる。
けど、若井の手の温度と、声の震えが、全部まっすぐ俺にぶつかってきていた。
若井の手が胸ぐらを掴んだまま、震えていた。
顔が近い。目を逸らそうとしても、逸らせない。
「……俺さ……」
若井が息を呑む。
そのまま、ぐっと顔を寄せてきて――
「……元貴のこと、好きなんだよ」
その言葉が落ちた瞬間、頭の中が真っ白になった。
「す、すき……?」って反射的に聞き返してしまう。
「そうだよ……!ずっと幼馴染だって思ってきたけど、
最近お前が涼ちゃんと話してるの見て……
胸が痛くて、イライラして……もう耐えらんねぇんだよ」
声は震えてるのに、目だけは必死で、逃げ場を許さない。
俺の心臓も爆発しそうだった。
「……若井……」
呼んだだけで、彼は余計に掴む手を強くした。
「ごめん……こんな言い方しかできねぇけど…
…俺、お前が涼ちゃんに取られるのが怖いんだ」
その一言に、胸が締め付けられる。
涼ちゃんの優しい笑顔、寄り添ってくれた時間。
でも今、目の前の若井の熱に、全身が飲み込まれそうになっていた。