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店の営業が終わって静かになったカフェ
ショコラは奥で片付けをしていて、僕はカウンターに寄りかかりながら食器を拭いていた
とっくに営業時間外。そんな店のドアベルが鳴ることはもちろんない。はずなのだが
カ「やぁ兄さん」
ガ「お疲れ様だにゃー!」
この店には時間を問わずやってくるお客さんが2人いる
ビ「カカオ、ガーナ、今日はもう閉店だけど…」
カ「あぁ知ってるさ。顔を見に来ただけだよ」
ガ「そうそう。可愛い妹がお兄ちゃんたちに会いに来るのは普通でしょ!」
ガ「…んー?ビターお兄ちゃん、なんだか顔色が良くなった?」
ビ「そうかな?」
カカオが静かに僕を見てニンマリと笑みを浮かべた
カ「ふふ、分かりやすいね」
ガ「ねぇねぇ、もしかて…」
ガーナもうっすらと笑いながら声をひそめた
ガ「お姉ちゃんとの距離、名前が付いたかにゃ?」
その一言で胸がどくんと鳴った
ビ「…」
言葉につまる僕を見て、カカオが肩をすくめる
カ「まったく、やっと気づいたんだね」
ビ「…うん」
_あぁ、そうか
そういうことだったのか
ガ『ビターお兄ちゃんは優しすぎるから気づくのが遅いにゃ』
カ『近すぎると見えないものがあるからね』
ガ『恋ってすごく分かりずらい形で表れるんだよ』
カ『泣く寸前なら何回も見てるから』
あの言葉はそういう意味だったのか
ビ「…2人とも、知ってたんだよね」
カ「さあ?どうかな」
ガ「ふふん、当たり前でしょ!」
ガ「…お姉ちゃん、ずっとビターお兄ちゃんのこと見てたにゃ」
ガ「ビターお兄ちゃんが気づいてなかっただけだよ」
少し困ったような笑顔で僕を見るガーナ
ビ「……そっか」
カカオが真面目な声で言った
カ「今ならわかるでしょ?」
カ「姉さんがどんな気持ちであの距離にいたのか」
ビ「…うん」
僕はショコラを守れていなかった
守られていたのは僕の方だ
壊さないための距離
ずっとずっとショコラはそれを保ってくれていた
俯く僕に、ガーナが言葉を向ける
ガ「でもこれからは逃げたらだめだから!」
僕はきちんとふたりの顔を見て誓った
カ「兄さん。1度名前をつけたらもう戻ることはできないよ」
ビ「…戻らないよ」
僕は目を瞑って優しく微笑む
この家族に、どれだけ支えられていたのだろう
これからも僕がショコラの弟なのは変わらない
ひとつだけ、新しい距離を見つけただけ
帰り道はもういらない