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45 ◇ご乱心
私と瑛士が別れた時、どちらの両親にも本当のことは話してなかった。
私たちは性格の不一致で離婚していたのだ。
元旦那である瑛士から復縁を請われている旨を記して
私は本人である瑛士と両家の面々に召集をかけた。
場所は両家のどちらでもなく、私や瑛士さんの家でもなく……
某オリエンタルホテルで個室を予約してのことだった。
この時、私は最愛の夫蓮を亡くし、かなり精神的に混乱していたかも
しれない。
いつもの自分では考えられないようなことをやろうとしていて、
ついにその日は来た。
「眞奈さん、お元気そうでよかったわ。
ところで瑛士から復縁を申し込んだようだけど、こんなふうな席を
眞奈さんが設けてくださったってことはぁ、もしかしてもしかするって
期待してもいいのかしら?」
「お久しぶりです、お義母さん。
残念ですがそういうことではなくてですね、今までオブラートに包んで
きてたことがあるのですが、今日はそれを取っ払った話をしたいと
考えましてこのような席を設けさせていただきましたの」
元義母は、えっ? と落胆を隠しきれない様子で皆と同じように
定位置の席に座った。
元夫の瑛士が今にも何かを話したそうにしているのが目の端に入ってきた。
そんなひきこもごもな気持ちを持って座っている皆を前にして、
私は瑛士のこれまでの所業を一切包み隠さず、またきれいな言葉を使わず
ありのままの私の感情を込めて話した。
46 ◇やさしい夫だったけれど
「私にはずっとやさしい夫でした。
だけど私たちずっと夫婦の営みがありませんでした。
私は瑛士さんの誘いを断ったことなど一度もありませんでしたが、
いつしか瑛士さんからの誘いがなくなってしまい、私は瑛士さんがそういうの淡白なら
仕方がないのだと自分に言い聞かせて、そのことで彼を責めることもなかったです。
そんなふうでも私たちは仲良く暮らしていました。
だからこそです……瑛士さんがいろんな女性たちとデートしたり、LINEで
下ネタトーク炸裂させていたことを知って、私は絶望したのです」
「瑛士、今までのことは本当なの?」
真っ先にそう口火を切ったのは元義母だった。
「否定しないのね。
情けないわ。
いくらやさしくたってそれは奥さんを……
眞奈さんを大事にしてたとは言えないわね。
眞奈さんを心身共に寂しがらせていたなんて。
眞奈さん、知らなかったとはいえ、私が育て方を間違えていたのね。
本当にごめんなさい……」
私は小さく義母に向けて力なく首を振った。
「母さん、言い訳にしかならないのは分かってるけど、だけど俺、眞奈のことは
大切にしてたし、大事に思ってたし、本気で愛してる」
「ほんとに母さんは恥ずかしいわ。
母さんだって相手があなただったら夫にはごめんですよ。
まだ若い奥さんに夫婦生活も求めないなんて、しかも他の女性とは
やってたのなら、もう言い訳無用だわね。
よくそんなので眞奈さんにやり直してほしいなんて言えたものだわ。
私あなたの母親を止めたい気分になってきちゃった。
ほんとに何て酷いことを……」
「母さん……」
「瑛士、聞いてたら本気で愛する女性とはできなくて、
どうでもいい遊び相手とならSEXできるっていうのは、あぁあれか、
何か病気なのか?
身体とオツムが病気なんだろ? お前」
「ややややっ、違いますよ、父さん。
他の女性と下ネタで盛り上がったりデートしたのは事実ですが、
身体の関係は誰とも持ってませんから。
母さんの早とちりですよ。
実際眞奈だってそんなことひと言も言ってませんよ」
「ええいっ、じゃかましいわ。
自分の妻ひとり満足させられんとはそんな奴男じゃないっ。
〇〇〇だ、お前は!」
元義父は、正気では言えないようなそしてどこまでが本心か
分からないような、その場にいる皆をまるで煙《けむ》に巻くような下劣な言い草で
夫を懲らしめてくれた。
思わずクスクス笑いがちらほら聞こえたし、私なんか仰け反って笑って
やったわ。ガハガハ~ふんっ。
元義父は達観しているのだろう。
今更すでに40代近くの息子に叱責もないものだということを
よくご存じのようだ。
激しい言い回しの割にあまり怒りが感じられなく、ただただお疲れの
ように見えた。
47 ◇今妊娠してまぁ~す!
元義父も元義母ももしかしたら、今かいまかと孫の顔を見られる日を
待っていた……そんな日々もあったに違いない。
そんな中、不仲で別れてしまった息子夫婦。
よもやよもやの、息子が原因の離婚だったことを元息子の嫁から突き付けられ、
がっくりせずにはいられないだろう。
御気の毒で仕方ないけれど、今の私の勢いを止められる人間などいないだろう。
最愛の夫を亡くした私にとってこの部屋にいる人間は皆カボチャと同じで、
私は今まで胸に溜めていた瑛士への怒りと悲しみをまき散らさずにはおれないのだ。
撒き捨てごめん!
いざっ。
「皆さまぁ~瑛士さんから相手にされなかった私ですがぁ~なんとっ、
ちゃちゃぁ~ん。
わたくしっ、今妊娠してまぁ~す!」
私の両親に関しては、この時には既に瑛士さんとの離婚の本当の理由と
蓮さんとのことを知らせていたので、妊娠のことまで含めてすべからく
ことの顛末を知っていた。
だけど、瑛士さんのご両親は私の再婚のことは知らないし、瑛士さんも
付き合っていることは知っていたようだけど、私の妊娠のことを知らずにいたはず。
3人は揃いもそろって口をあんぐり開けて次の言葉を探しているよう
だった。
「なんだっ、仲直りしてちゃっかりやることやってたのか? 瑛士」
元夫婦ではあるけれど、夫婦生活を復活させていたと思い込んだ元義父は、
喜びの篭った声音で言った。
瑛士さんは元義父さんに首を必死で振って否定した。
その様子を傍らで見ていた元義母が察しを込めてじっと私の次の言葉を
待っていた。
「実はわたくし、直近に再婚しておりまして、このお腹の子は今の夫の、
蓮の忘れ形見なのです」
流石に私のいきなりな台詞を聞いた元義両親は、言葉をなくし
下を向いてしまわれた。
「瑛士さん、どうこれで私との復縁なんて考え、遥か彼方にぶっ飛んで
っちゃったでしょ? 私のお腹の中には、蓮さんの子がいるの」
コメント
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うわあああ第16話読み終えたよ〜!!😭💥 元義父の「〇〇〇だ、お前は!」からのガハハ笑いのシーン、めっちゃツボったwww でもその裏で眞奈さんの怒りと悲しみが溢れてて胸がギュッてなったよ…。蓮さん失ったばかりでこの修羅場、よく立ち向かったねホント尊敬する!! 最後の妊娠発表で元義両親ポカーンも最高にスカッとしたけど「蓮さんの忘れ形見」で涙腺緩んだわ…。続きが気になりすぎる〜!!✨