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帝竜バルナルドと顔を合わせた南雲修一。
サーベイランス越しではあるものの、首脳会談が行われていた。
「つまり、バルナルド様は私たちと争う構えではないと? そういう訳なのですね?」
『そういう訳である! 確かに余は、かつて人を気の向くままに蹂躙しておった過去を持っておる。それが過ちであったと認めよう。償いの機会を施されるのならば、余もそれに応じる準備がある』
帝竜バルナルドは全てを諦めて「セルフ封印で長き眠りにつこう!」とまで追い詰められていた。
そこに降って湧いた、逆神六駆の上官。
ビッグウェーブだろうとタイダルウェイブだろうと、もはや乗りこなすしかなかった。
「思ってたよりもずっと話の分かる古龍じゃないっすかー」
「そうだね。話に聞いていた性格と結構違って、私も驚いているよ」
『な、なに!? 余について、誤った風聞を流す者がおるのか!?』
「ああ、いえいえ。ただ、ジェロードさんがですね。帝竜殿は逆神に並々ならぬ恨みを持っておいでだったと言っていたものですから」
『た、確かに! 封印から解放された時には、気が昂ってしまいそのように申していた! だが、勘違いをするでない! べ、別に、逆神を滅ぼしたいとか、そういうのではないのである!!』
バルナルド様、なんだかツンデレヒロインみたいな事を言い始める。
「ああ、なるぼど。こちらも事情は把握しておりますので、心中お察しします。ある日突然封印されたら、そりゃあ頭に血も上りますよ。分かります」
『ナグモ……!! 卿ほど優れた男ならば、そちらの世界の中枢を握るのも容易かろう? 卿が望むのならば、我が力を貸してやるのもやぶさかではない』
「あ、南雲さん。やっぱりちょっと危険思想入ってますよ!」
「そうだなぁ。力による征服がベースなのは良くないなぁ」
バルナルド様、勢い余って邪竜認定されそうになる。
『ああ、いや、待て! 今のはアレだ。良い意味での力を貸すと言う、アレである! 余は数千年の時を生きておるがゆえ、そう! 知識や経験も卿らより多く得ているのである! そう言った意味での力だ! 決して、暴力などと言うものではない!!』
「これは失礼しました。そうですよね。帝竜バルナルドと言えば、スカレグラーナの地に人が生まれる前から君臨されていた気高き古龍だと、ナポルジュロさんも話されていましたから」
『な、ナポルジュロ……! あやつめ……!! 憎い事を……!! うふふ……』
その後、さらに講和の条件について話し合いは続いた。
南雲の提案する要望は実にシンプルである。
1つ。スカレグラーナ人の今後の成長と発展を見守り、必要があれば助力する事。
2つ。不必要な力による介入を行わない事。
3つ。何か要望があれば、南雲修一を通して欲しい事。古龍にも快適な生活を求める主権を認めるので、少しでも思うところがあれば話し合いの場を持ちたい旨。
そして大事な4つ目。
サーベイランスを壊さない事。
スカレグラーナ人と同じくらい大切なサーベイランス。
火山の熱にも耐え、深海の水圧にも耐える自慢の逸品をもう壊さないで欲しい。
それは南雲の切なる願いだった。
サーベイランスさえあれば、ホマッハ族と古龍、双方の意見を逐次得る事ができる。
つまり、「肝心な時には呼んでも返事しない、ナグモ」とそしりを受ける事がなくなる。
「こちらとしては、以上の条件を飲んで頂けるのであれば、今後のバルナルド様の生活の安全を保障いたします。と言っても、私が生きている限りの事になりますが。なるべく次世代の監察官にも守らせます」
探索員協会がいつまで存在しているかは分からないが、遠い未来まで生きる予定の帝竜バルナルドにとって、その安息の時間はほんの一瞬である。
だが、現状を考えれば、ほんの一瞬の安寧が何よりも欲しい。
腕とか翼をもがれないと言う確約が、喉から手が出るほど欲しかった。
『ナグモ……。卿の寛大なる措置に感謝する。ジェロード、ナポルジュロと共に、スカレグラーナの地を守り続ける事、ここに帝竜の名をもって誓おう』
こうして、早朝の首脳会談は締結された。
◆◇◆◇◆◇◆◇
王都ヘモリコンでは、未だにチーム莉子をはじめ、ほとんどの者が眠っていた。
特に六駆は疲れており、ちょっとやそっとでは起きそうにない。
彼は今回の遠征で、有栖ダンジョン攻略から2匹の古龍を相手にする大立ち回りと、いつになく煌気を消費していた。
それでもまだ余力があるのはさすが最強の男だと思う反面、彼が率先して休息を取ると言う状況は実に珍しく、それだけ幻竜ジェロード戦や、冥竜ナポルジュロの竜人化が大きな仕事だったと言えるだろう。
そんな眠れる王都に、動く影が1つ。
「おお、こいつぁすげぇ! オジロンベ製の剣も相当にヤバかったけど、このホグバリオンってのはやっぱり桁が違うぜぇ! まあ、元はオレが借りた剣だし? ちょっとくらいなら良いだろ!!」
逆神大吾であった。
「ぐぬぅ? 逆神大吾、いかがした? まだ貴公の息子たちは眠っておるぞ。貴公とて、我との戦いで消耗しておるだろう? まだ休んでおるが良い」
竜人ナポルジュロが大吾に気付き、「おっさんは寝てろ」と優しく声をかける。
戦いで遺恨を生み出さない。
元古龍らしく、気高い思想であった。
「お、おう! ナポルジュロの旦那! いやね、ちょいとその辺りを警護がてら回って来ようかと思ってな! ほれ、まだ帝竜ってのがいるだろ?」
「ほほう、見上げた心構え。醜くなったのは見た目だけであったか。だが、案ずるな。帝竜殿が万が一攻めてきても、我とジェロードで時間を稼ぐ」
大吾は「へへっ」といやらしく笑って、続ける。
「いやいや! 旦那たちにそこまでさせるのは忍びねぇ! オレはほら、見回りくらいなら余裕で出来る煌気は余裕であるから! ちょっと寝たら余裕で回復したし! もう余裕よ!!」
「ふむ。確かに、貴公の煌気は充実しておるな。貴公の息子、六駆はまだ本調子でないと見えるのに、そこはやはり経験の差か」
違う、ナポルジュロ。そうじゃない。
大吾はナポルジュロ戦でほとんどスキルを使っていないのだ。
『瞬動』や『激飛翔』に『天滑走』で追いかけっこをしていただけで、極大スキルの1つも撃っていなければ、腐っても逆神一族の1人。
ちょっと休んだだけで煌気はフル充電される。
「ほんじゃね、オレぁちょっとその辺りを回って来ますんで! ナポルジュロの旦那もその体になったばっかりですから、へへっ。ゆっくり休んでくださいや!」
「そうか。心遣い、痛み入る。貴公もあまり働き過ぎぬようにな。……ん? それは確かホマッハ族の秘宝剣ではないか?」
「げぇっ!? あ、ああ! これね! いや、そこに落ちてたから! ついでに返しとこうかなって! へへっ、へへへっ!!」
「なるほど。やはり醜くなったとは言え、我ら古龍を封じた逆神。心根はまだ清らかだと見える。気を付けて行かれよ」
それも違う。むしろ、ナポルジュロの心が清らかすぎた。
気高き古龍だった彼には、薄汚れたギャンブル依存症な中年の思考など計り知る事ができない。
大吾は王都の上空へ飛び上がり、『天滑走』で目的地を目指す。
その地の名前は、コンバトリ火山。
今まさに、身内が恥を晒そうとしている。
美しく纏まるはずのスカレグラーナの物語に、墨汁でシミをつけようとしているクソ親父がここにいる。
早く起きろ、逆神六駆。
コメント
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お疲れさまです〜!第194話、読ませてもらいました🥀 帝竜バルナルド様、思ったより話の分かる古龍でびっくりしたけど、「違うのである!」とか言い出すツンデレっぷりが可愛くて笑っちゃいました笑 南雲さんのサーベイランス愛も相変わらずで安心したよ〜 そして最後の大吾……やっぱり何かやらかそうとしてる感じがヒヤヒヤする💦 六駆、早く起きてくれー!次回が気になる展開でした✨
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