──室内に明かりが点いてはいない時点で薄々わかってはいたけれど、足音を忍ばせてベッドに近寄ると、案の定蓮水さんはまだ眠っていた。
部屋の中はしんと静まり返っていて、あまり声を出すのもはばかられるようで、「あ、の…」とだけ小さく呼びかけてみるけれど、無論それぐらいでは彼が起きる気配はなかった。
どうしよう……。起こすって、どうすればいいんだろう……。
そう言えば、男の人を起こしたことなんて、今までなかったような……。
やっぱりそういうのって、結婚している夫婦ならではのシチュエーションだよね?
「あなた、起きて?」とか言ってみたり……って、うわぁー、私ったら何を考えてるんだろう。
つい妄想が膨らんで、急に照れくさくなって、赤くなるほっぺたを両手で挟んだ。
いや、照れてる場合なんかじゃなくて、彼を起こさないと……。気を取り直して、もうちょっと大きな声で呼びかけてみようか。それとも揺り起こしたりした方がいいんだろうかと、あれこれと頭の中で考えていたら、
「……うん…」と、彼がふいに悩ましげな声を上げたもんだから、私の肩がビクッと大きく跳ね上がった。
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