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雛百合隊のオペレーターである風間は口数が少ない。それはもう少ない。大体身振り手振りで済ませてしまうからだ。
そんな風間がオペレーターになったのは雛百合が誘ったからだ。無論雛百合に何故と問うと
「目についたから。」
と返答が返ってきた時には御影は爆笑していたし、風間は呆れていた。
それでも風間はその時目に止めてくれた事をある意味感謝している。
雛百合が風間を目に止めたのはある意味必然でもあったと言うことはきっと誰も知らないし、本人も忘れているのだろう。
雛百合と御影が出会って隊を結成することになるその年、雛百合は風間と同じクラスになった。噂で風間がほとんど喋らないことを聞いてはいたものの、実際に見ていると声を出すこともなかった。驚いても声をかけられてもそれらの反応を身振り手振りで済ませていた。一月経っても声を聞いたことがないと気が付いた雛百合はオペレーターにすれば声を聞けると思い付いた。普通に言えば声を出してくれることは知っていたが、この時の雛百合はそんなことを頭から抜け落ちていたため気付くことなく風間オペレーター計画を勝手に進めたのだった。
ボーダーにて御影に話をすると
「面白そうじゃん!その子俺らのオペレーターにしようぜ!」
と雛百合の計画を後押しする。
御影に後押しされ満足そうにした雛百合は次の日の学校で風間に詰め寄った。
「!?!?」
驚く風間を知らぬふりして
「私達のオペレーターになら無い?」
「!!!???」
「こないだ私隊を組んだんだけどまだオペレーター居なくてね。風間さんにやって欲しいんだ。お試しに1ヶ月やろ!1ヶ月やって嫌だったらやめて良いからさ。ね?ね??」
この時風間は雛百合のことを「押しの強い子」と認識したが、後にこの認識が改められることをまだ知らない。
結局この後雛百合に押し切られる形でボーダーに向かい、雛百合隊のオペレーターになった。
なったらなったで次はまた大変だった。
オペレートするもガン無視でトラップを作り始めた御影と、オペレートが間に合わず御影のトラップに引っ掛かる雛百合に最初の7日程、風間は頭を抱えた。しかし、御影から
「好きにして良いよ?マーカーとか明暗切り替えとかそういうのちゃんとやってくれれば多少遊んで良いよ。俺達も半分遊んでる様なものだし。」
と笑いながら言われた時は呆然として
「え?ボーダーそれで良いの?」
と聞き返したくらいだ。
「ボーダーとしてはちゃんとして欲しいだろうけど、俺達は俺達だからなぁ。他の何かにはなれないし。雛がアレだから良いんじゃない?俺もどっちかというと楽しんでる方だし。」
その言葉に風間は「あぁ、こいつら娯楽主義者なんだ。」と思ったし、それを間違いだとは思わなかった。どうせなら楽しい方がいい。そう思うのは彼らだけでは無いということを風間は知っていたから。
半月経つ頃には風間も遊び始めたし、楽しくなってきていた。その頃には雛百合隊のメンバーを「頭のおかしい奴ら」と認識したし、自分もその一員だという予感もしていた。きっとこのまま行けば「頭のおかしい奴ら」の仲間入りだとわかっていても、離れようと思う気持ちもなかった。
一月経つ頃には雛百合を「一部の人に中毒性のある人」、御影を「雛百合の支える愉快犯」と認識した。そして、自分の事も「雛百合隊を楽しむ娯楽主義者」と。そう認識を改めることとなったのだった。