テラーノベル
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第一話「サッカーを救う旅の始まり」
――かつて、世界にはサッカーがあった。
少年たちはボールを追いかけ、仲間と声を掛け合い、勝利を目指して汗を流した。
サッカーは、ただのスポーツではない。
友情。
努力。
そして、夢。
それらをつなぐものだった。
……しかし。
ある日、世界中からサッカーが消えようとしていた。
原因は――。
サッカー狩り隊。
世界中のサッカーを取り締まり、サッカーをする者たちを次々と追い払っていく謎の組織だった。
街からサッカー場が消えた。
学校からサッカー部が消えた。
そして、人々はサッカーという言葉すら口にしなくなっていた。
そんな荒れ果てた街の片隅。
一人の少年が、壊れかけたサッカーゴールを眺めていた。
少年の名は――
不動明王。
不動はゴールポストにもたれかかり、空を見上げる。
不動 「……この世界も、もう終わりだな」
周囲には誰もいない。
かつて子供たちがサッカーをしていたグラウンドも、今では雑草だらけ。
転がっているのは、空気の抜けたサッカーボールだけだった。
不動はボールを足で軽く蹴る。
コロコロ……。
ボールは少し転がったところで止まった。
不動 「サッカーなんて、なくなったって別に困らねぇけどな」
そう言いながらも、不動はそのボールを見つめていた。
そのとき――。
「おーーーい!!」
突然、遠くから大声が聞こえてきた。
不動 「……?」
ズドドドドドドド!!
何かがものすごい勢いでこちらへ走ってくる。
不動 「なんだ……?」
次の瞬間。
ドンッ!!
不動の目の前に、一人の男が現れた。
青い服。
独特な髪型。
そして――ところてんのような体。
男は胸を張った。
天の助 「俺の名前は――ところ天の助!!」
不動 「……誰だ、お前」
天の助 「え?」
不動 「お前だよ!」
天の助 「俺?」
不動 「他に誰がいるんだよ!」
天の助 「いやぁ、俺はてっきり後ろにいる誰かに話しかけているのかと……」
不動 「誰もいねぇだろ!」
天の助 「そうか!」
不動 「納得すんな!」
天の助は、なぜか満足そうにうなずいた。
天の助 「改めて言おう。俺はところ天の助だ!」
不動 「……俺は不動明王」
天の助 「おお! なんだか強そうな名前だな!」
不動 「お前に言われても嬉しくねぇよ」
そんな二人が話していると――。
ザッ……。
ザザッ……。
遠くから複数の足音が聞こえてきた。
不動 「……チッ」
天の助 「どうした?」
不動 「また来やがった」
天の助 「何が?」
不動 「サッカー狩り隊だ」
その言葉と同時に、黒い制服を着た集団が姿を現した。
サッカー狩り隊・Rブロック隊員たち。
隊員A 「不動明王! まだこの場所にいたのか!」
隊員B 「サッカーをすることは禁止されている!」
不動 「はいはい……」
不動は面倒くさそうに頭をかいた。
不動 「また同じこと言いに来たのかよ」
隊員A 「我々は世界からサッカーを消す!」
天の助 「ほう……」
天の助が地面を見る。
そこには一個のサッカーボールがあった。
天の助 「じゃあ……」
天の助はボールを拾った。
隊員B 「なんだ?」
天の助 「これを使えばいいんだな?」
不動 「おい。まさか……」
天の助 「いくぞ!」
天の助がボールを蹴った。
――ドンッ!!
ボールはまるで弾丸のように飛んでいった。
隊員A 「な――」
ドゴォォォン!!
隊員たち 「うわあああああ!!」
ボールは隊員たちの間を高速で飛び回り、次々と隊員たちを吹き飛ばしていった。
そして最後には――。
ゴンッ!!
隊員A 「ぐわっ!」
全員が地面に倒れた。
不動 「…………」
不動は目を丸くしていた。
不動 「なんだ今の……」
天の助 「ただのシュートだ!」
不動 「ただのシュートじゃねぇだろ!」
天の助 「そうか?」
不動 「速すぎるんだよ!」
隊員A 「お……覚えてろ!」
隊員B 「Rブロック基地に戻るぞ!」
隊員たちは慌てて逃げていった。
天の助は腰に手を当てる。
天の助 「ふっ……勝った」
不動 「勝ったっていうか……お前、何者なんだよ」
天の助 「ところ天の助だ」
不動 「それはさっき聞いた!」
天の助 「そうだったな!」
不動 「……はぁ」
天の助は突然、遠くを指差した。
天の助 「さて!」
不動 「?」
天の助 「Rブロック基地へ行くぞ!」
不動 「……は?」
天の助 「サッカー狩り隊を倒しに行く!」
不動 「正気か?」
天の助 「もちろん!」
不動 「お前一人じゃ無理だろ」
天の助 「じゃあ不動も来るか?」
不動 「俺は行くなんて一言も――」
天の助 「行こう!」
不動 「人の話を聞け!」
天の助 「大丈夫だ!」
不動 「何が大丈夫なんだよ!」
天の助 「なんとかなる!」
不動 「…………」
不動はため息をついた。
不動 「……まあ、いい」
天の助 「おっ!」
不動 「どうせこの世界が終わろうとしてるんだ。だったら最後くらい、面白いことをやってみるのも悪くねぇ」
天の助 「決まりだな!」
二人はRブロック基地へ向かって歩き始めた。
――そのころ。
サッカー狩り隊Rブロック基地。
巨大な基地の司令室では、一人の少年が腕を組んでいた。
緑色の髪。
鋭い目。
冷静な表情。
Rブロック隊長――レーゼ。
レーゼ 「……遅い」
部下 「隊長、申し訳ありません!」
レーゼ 「不動明王を連れてくるだけの仕事に、どれだけ時間をかけている?」
隊員A 「そ、それが……」
レーゼ 「?」
隊員A 「謎の男に邪魔されまして……」
レーゼ 「謎の男?」
隊員A 「はい。ところ天の助と名乗る男です」
レーゼ 「ところ天……?」
レーゼが眉をひそめた。
そのとき――。
バァァァン!!
司令室の窓ガラスが突然、粉々に砕け散った。
レーゼ 「!」
隊員たち 「な、何者だ!」
煙の向こうから、人影が現れる。
天の助 「よぉ!」
レーゼ 「……!」
天の助 「お前がレーゼだな?」
レーゼ 「そうだ。貴様は何者だ?」
天の助 「俺はところ天の助!」
レーゼ 「……」
レーゼは少し黙った。
レーゼ 「何をしに来た?」
天の助 「決まってるだろ!」
天の助はビシッとレーゼを指差す。
天の助 「サッカーで勝負だ!」
隊員たち 「サッカーだと!?」
レーゼ 「……面白い」
レーゼは立ち上がった。
レーゼ 「いいだろう。受けて立つ」
不動 「……本当にやるのかよ」
いつの間にか不動も基地の中に入っていた。
レーゼ 「不動明王……」
不動 「よぉ、レーゼ」
レーゼ 「貴様も来たのか」
不動 「こいつについてきただけだ」
天の助 「仲間だ!」
不動 「まだ仲間とは言ってねぇ!」
レーゼ 「ならば勝負を始めよう」
基地の中央に、急ごしらえのサッカーコートが展開される。
天の助とレーゼ。
二人だけの一対一。
レーゼ 「俺が勝てば、貴様らはこの基地から出ていけ」
天の助 「俺が勝ったら?」
レーゼ 「サッカー狩り隊Rブロックは、サッカーを取り戻すことを認めよう」
不動 「……!」
天の助 「よし!」
ホイッスルが鳴った。
ピーッ!!
レーゼがボールを奪う。
レーゼ 「いくぞ!」
レーゼは高速で走り出した。
不動 「速い……!」
天の助 「へへっ!」
レーゼ 「アストロブレイク!!」
ドシュウウウッ!!
強烈なシュートが天の助のゴールへ向かう。
不動 「天の助!」
天の助 「任せろ!」
天の助はゴール前に立った。
天の助 「ゴッドハンド!!」
巨大な手が出現し、アストロブレイクを真正面から受け止める。
ズガァァァン!!
レーゼ 「なに!?」
不動 「なんだ……あの技は……」
天の助 「止めたぞ!」
レーゼ 「……まだだ!」
レーゼは再びボールを奪いに行く。
しかし――。
天の助 「甘い!」
天の助がボールを奪う。
そのまま一気にゴールへ向かう。
レーゼ 「止める!」
レーゼが追いかける。
だが、天の助の動きは予想以上に速かった。
天の助 「ところてんダッシュ!!」
不動 「なんだその技名!?」
天の助 「今考えた!」
不動 「今考えたのかよ!」
レーゼ 「追いつけない……!」
天の助はゴール前まで到達する。
レーゼ 「シュートを打たせるか!」
レーゼが立ちはだかる。
天の助 「じゃあ、これだ!」
天の助がボールを蹴る。
ボールは高く舞い上がり――。
天の助 「ところてんシュート!!」
不動 「また今考えただろ!!」
ドゴォォォォン!!
ボールはレーゼの頭上を越えてゴールへ。
ゴールネットが大きく揺れた。
ピーッ!!
審判役の隊員 「ゴール!」
天の助 「勝ったぁぁぁ!!」
不動 「……マジかよ」
レーゼはゴールを見つめた。
レーゼ 「そんな……馬鹿な……」
天の助 「約束は守ってもらうぞ!」
レーゼ 「……分かった」
レーゼは静かにうなずいた。
レーゼ 「このRブロック基地では、もうサッカーを狩らない」
不動 「……!」
隊員たちがざわめく。
隊員A 「隊長……!」
レーゼ 「俺たちは間違っていたのかもしれない」
天の助 「よし!」
その瞬間。
基地の外から歓声が聞こえ始めた。
「サッカーができるぞ!」
「本当に!?」
「ボールを持ってこい!」
街の人々が、再びグラウンドへ集まり始めていた。
不動はその光景を見つめる。
不動 「……」
天の助 「どうした?」
不動 「いや……」
不動は少しだけ笑った。
不動 「悪くねぇな」
天の助 「だろ?」
不動 「……おい、天の助」
天の助 「なんだ?」
不動 「俺も一緒について行っていいか?」
天の助は驚いた顔をした。
そして――。
天の助 「別にいいぜ!」
不動 「そうか」
天の助 「これからサッカー狩り隊を全部倒して、世界中のサッカーを取り戻すんだ!」
不動 「面白そうじゃねぇか」
二人が歩き出そうとした、そのとき。
「待ってくれぇぇぇ!!」
背後から声がした。
二人が振り返る。
そこには――。
つけものが立っていた。
つけもの 「じゃあ俺も旅について行く!」
天の助 「……」
不動 「……」
つけもの 「な?」
天の助 「ただし――」
つけもの 「?」
天の助 「つけもの、お前はダメだ」
つけもの 「なんでぇぇぇぇ!?」
不動 「即答かよ」
つけもの 「俺だって旅をしたい!」
天の助 「ダメなものはダメだ!」
つけもの 「そんなぁぁぁ!!」
不動 「まあ、置いていこうぜ」
つけもの 「不動まで!?」
天の助 「じゃあ行くぞ、不動!」
不動 「ああ」
二人は歩き始める。
つけもの 「待ってくれぇぇぇ!」
不動 「……うるせぇな」
天の助 「仲間が増えたな!」
不動 「増えてねぇよ!」
こうして――。
ところ天の助と不動明王。
奇妙な二人による、サッカーを救う旅が始まった。
だが、彼らはまだ知らなかった。
サッカー狩り隊には、Rブロックだけではなく――。
Aブロック、Bブロック、Cブロック……そして、その全てを支配する恐るべき総隊長が存在していることを。
そして世界のどこかでは、サッカーを守るために戦っている者たちもいた。
円堂守たち雷門中。
そして、まだ見ぬ強敵たち。
天の助 「なあ、不動!」
不動 「なんだ?」
天の助 「次はどこへ行く?」
不動は遠くに見える巨大な塔を指差した。
不動 「あそこだ」
天の助 「なんだあれ?」
不動 「サッカー狩り隊の次の基地だ」
天の助 「よし!」
不動 「行くぞ」
天の助 「おう!」
二人は走り出した。
その背中を――。
つけものが必死に追いかけていた。
つけもの 「待ってぇぇぇぇ!! 俺も仲間にしてぇぇぇ!!」
不動 「絶対置いていくからな!」
天の助 「頑張れ、つけもの!」
つけもの 「応援するなら連れていけぇぇぇ!!」
――世界から消えかけたサッカーを取り戻すため。
――そして、サッカーを愛する人々の笑顔を取り戻すため。
奇妙な二人の旅が、今始まった。
コメント
1件
「ところ天の助」って名前と技名が全部今考えた感満載なの、笑っちゃいました(笑)。不動のツッコミが毎回的確で、この掛け合いのテンポがすごく楽しいです。サッカーが消えかけた世界っていう設定の重さと、天の助の軽さのギャップが絶妙。ラストのつけもの置き去りも、旅の空気感が出てて好きです。次の基地が気になりますね!
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