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彼氏side 1
ざわざわと騒がしい店内。ここは、ある飲食店の一部屋だ。
俺は今合コンに来ている。彼女が居るのにもかかわらず、連れてこられたのである。
「数合わせ‼︎💦ほんとにお願い‼︎飯食ってるだけでいいから‼︎」
って…言われて、彼女を一人、家に置いてきた。
でも、出かける時の彼女は今までにないくらい可愛かった。
今にも泣き出しそうな目で、少し怒鳴るように声を張る。
あの顔は、家を出た時から忘れられない。今日はちょっと、意地悪しようかな…
19時から始まったこの合コンは、20時半になった今でもまだ始まったばかりのように声が飛び交っている。
ピコン、と、スマホが音を立てる。彼女からのメール。
「今日9時までには帰ってくるんだよね?」
言っている声が聞こえた気がしたが、これは俺のただの妄想か…それにしても可愛い。
なんで返そう。今日はちょっと虐めようと思っていたので、ここで返すと…いや、ちょっと待てよ。ここで今返したとしたら可愛い顔をして出てくれるだろうか。
とか考えながら、とりあえず返した。
「そうだよ」
一人の女性が俺の隣に来る。
「あのぉ、お名前聞いてもいいですか?」
「あ、すちです、、」
ま、彼女居るけど…
「すちくん、って呼ぶね!」
あー、俺の苦手なタイプだった…
「今連絡してたのって、誰ですかぁ?」
少し殺意が感じられる。
ここははっきり言っておくべきか…
「あ、彼女です」
「え⁉︎じゃあなんで合コンに⁉︎」
まあ、当たり前の反応だ。
「数合わせって…あそこの友達に連れてこられました」
ほんとだるい。早くこの会話を終わらせたい。
彼女以外と喋りたくない。
あ、だめだこの思考になっちゃ…
自己規制をかけて、会話に戻る。
「すちくん、数合わせで来ちゃダメでしょ〜
イケメンなんだからすぐ寄り付かれるよ?」
知ってる。イケメンではないが。まあ、よく
女性に絡まれるのでなんとなく察してはいた
が…
「私みたいにっ♡」
あれこれ考えている内に、女性は俺の腕にくっ付いていた。
「あの、彼女居るんでそういうの困ります…」
「えー、いいじゃないですかぁ♡」
もっと苦手なタイプだった。ぶりっこは好きになれない…
「私に堕ちちゃえ♡」
ため息が出そうだった。というか、出したほうが良かったのかもしれない。そうしたら、離れてくれたかも…後から思った。
「俺、彼女と門限決めてるんで、そろそろ帰ります」
部屋にいる全員に聞こえるように言うと、俺は立ち上がった。
女性も、諦めたらしく、手を離した。誰かに見られてる状況だと、止める事ができない人種っぽい。
現在時刻は20時58分。俺は店を出て、家路の少し外れた道を進んだ。
誰もいないくらい静かな裏路地。ぽつぽつと灯りがつく店々の、一つの店に俺は入った。
「こんばんは、店長。」
俺より年上の男性。ここの店にはよく来る。
「おお、またあんたか。」
「なにかご都合の悪いことでもありましたか?」
煽るように返す。
「いーや、最近はあんたしか来んから逆に暇やわ。」
ふーーっと、店長の口から白い煙が登る。
俺は、小さな店に置いてある品を、しゃがんで見る。
「んで、今日はなんしに来た。珍しく物見よるやないか」
「今日は…ちょっと虐めてあげようかなって♡」
「もう隠さへんのか」
「出かける前の彼女が可愛過ぎたものなので。」
「どこ行ってきたんや。女の匂いもするけど。」
さすが店長。こんなに離れていて匂いが分かるって、
「やっぱり店長鼻いいですね」
どーでもいいことだけ言って、本題に入る。
「今日数合わせで合コンに連れられて。彼女は俺が自分以外の好きな人ができるのが怖いんだと思います、家出る時、涙目で声張って門限の約束何度も何度も言ってましたよ。」
思い出すだけで胸がうるさくなる。
俺は、鍵のセットを手に取る。
「そりゃあ、あんたにはええ彼女さんやないか。」
「あんたには、ってなんですかw」
「んー?わからんかいな、こんな店に夜な夜な来て彼女監禁しようとする奴なんて、町に一人くらいしかおらんがな。」
もう一つ、玩具をいくつか取る。
「なんで監禁って分かったんですか。俺何にも言ってないですよ?w」
「それあんたがもっとって監禁やないわけないわ。」
「あはは、ひどーいw」
俺は、店長の所まで行く。カウンターに持っていたものを置き、「これで。」と、一言声をかける。
「あいよ。」
店長が返す。
その時、ピコンっとスマホが鳴る。彼女からのメール。ありがたいなぁ、予想通り♡
「ねぇすちくん、とっくに9時過ぎてるんだ
けど。まさか他の人と一緒にいるとか時間忘
れてるとかないよね?行く前の俺との約束は
なんだったの?あれは嘘だったの?俺のこと
嫌い?もう俺のこと好きじゃないの?彼女
いて合コン行って浮気とかしてないよね?
するわけないよね?ありえないよね?それで
めんどくさいからって俺のこと捨てないで
よ?約束したじゃん。付き合おうってすちくんも言ってくれたじゃんあれは適当だったの?ねぇ帰ってきてよ。この上のやり取りは
何?9時までに帰ってくるって言ってるじゃん許さないから」
長文のメール。一文字ずつ丁寧に読んで、何も返さずにスマホを閉じる。
顔を上げると、会計が終わっていた。でも、そんな事はどうでも良かった。
「彼女さんからのメールか?」
月日は経っても勘がいいところは変わらない店長。
「そうですよ?」
ダメだ。俺、今絶対興奮してる。
店長にスマホを見せる。全部読み切らせないように、すぐしまう。
「彼女さんも愛重いねぇ」
「そうですね。メンヘラっていうのかな、こういうの。」
そういうところが可愛くて大好き。かまちょで心配性で「俺のこと好き?」とか、「俺以外好きになっちゃだめだから。」とか、言ってくるところ、可愛過ぎるよ。
「じゃあ、俺帰りますね。ありがとうございました。」
浅めのお辞儀をしてから店を出る。「まいどー」
と、店長の声が聞こえる。
遠回りをして帰る俺。ビニール袋を片手にぶら下げて、鼻歌を歌いながら帰る。今の時間は、22時前。思っていたより、店長と話してたみたい。あー、これからが楽しみ♡
「可愛い顔見せてね、みこちゃん…♡」