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彼氏side 2
「さてと…」
溜め息に混ぜて声を吐く。
これからどうしよう。今帰ると早いんだよな〜
俺は、隣の街の玩具屋さんに行くことにした。
ガタンゴトン、ガタンゴトンと列車が歌う。
ゆっくり揺られて、いつもなら睡魔が襲ってくるのだが、今日はこれからが楽しみ過ぎるせいか、全然ピンピンである。
2回ほど電車を乗り換えて、少し都会に出る。
すると、スマホが鳴る。
彼女からだ。
「なんで〇〇町まで行ってるの?」
「今誰といる?」
スマホのロック画面に映される文字。メッセージは開かずに、少し笑顔で歩き始める。
暗いのに明るい不思議な感覚。俺等の街なら
暗いはずである。
明るい大通りから見える細い道を進む。ぽつぽつとある人影を抜けて通る。
こそには、いつもの街の様な景色があった。
少し小さい商店街、成人未満は立ち入り禁止。
中でも、シャッターが閉まっている店と、空いている店がある。俺は、シャッターが開いている一つの店に足を入れた。
「こんばんは」
人気を探すように顔を出す。
「んおぉ、らっしゃい」
レジの奥ののれんから声がした。俺は、店内を散策し始めた。
ガタガタ、という物音がして店員はのれんをくぐって出てきた。
「なにかお探しの物が?」
近づきながら言う店員。見た目は…店長と同い年くらいか。
「んー、手錠、鎖、首輪…あればなんですけど。」
我ながらそれなりにやばいことを言っている…
「あー、それならこっちにありますよ」
少しの訛りが聞き取れる。まあ、こういうお店、癖強い人多いからねぇ…
「ありがとうございます」
どれも家になかったし、店長のお店は玩具メインで置いてあるから、嬉しい。
「あ、あとあればなんですけど、スタガン…とか、ありますかね?」
「…何をするおつもりで」
疑いの目。まぁ、俺みたいな人なんてなかなかいないしねー…
「…彼女が可愛かったので」
といい、ビニール袋の中を見せる。店員は察したようで、少し呆れたような笑みを浮かべながら、のれんの奥に行って、スタガンを取ってきた。
「通報されんといてくださいよ」
そう一言言い、俺にスタガンを渡してくれた。
俺は会計を済まし、店を出た。とりあえず、この薄暗い路地から出ようと思った。
明るい駅前の大通りに出た。そこは、まるでライブ会場のように光が飛び交っていた。
今日は朝から空が見えなかったので、スマホを開いて時間を見た。隣街、といっても、電車で40分程かかる所なので、思っていたより時間が経っていた。そして、増えたロック画面に表示されるメッセージの通知。俺は、まるでそれだけで心が満たされたかのように、スマホを閉じた。
駅の方へ少し歩き、ぼーっとホームを見渡しながら、俺は雲の隙間から見えた紅めの満月をみた。
今日の空は、俺の心を表しているようだった。