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遡ること、一ヶ月前の話である。
「現世留学ぅ!?!?」
何かのギャグ漫画みたいな大きな声をだしているのは、僕_____甲斐田晴の事だ。
周りの人からの少し冷やかな視線を感じているがどおってことない。なぜなら、それを上回る驚きの感情があるからだ。
「ぇ、なんで、なんで今なんすか!?!?」
僕は今新種の魔の研究が忙しいってのに。
あとは論文とか、あと二ヶ月後にはお偉いさん方への報告も控えているというのに。
まだ時間はあるじゃないか、と思われるかもしれないがヘマしたら睨まれるのはゴメンだ。だから準備に相当な時間を要するのが僕のやり方というものだ。
「まぁまぁ、甲斐田君。これでいい気分転換になるんじゃない?論文の筆進んでなかったでしょ?
あとは現世に行ってみたいみたいなこと言ってたじゃない。」
いや確かにそれはそうだけどさぁ。
だとしても今ではないだろ。と、思いつつも研究員の僕が上の人に口答えできるはずがなく。
とうとう留学の日が来てしまった。
どうか、留学先が良いものでありますように!
桜魔からのゲートを潜り抜けて、ついた先は神社のようなところだった。
現世の言い方で言ったら、今は夏という季節らしい。
木の隙間から漏れる日差しが燃えるように熱く、僕が直に浴びてしまったら倒れてしまうのではないかと思った。
いやさすがにそれはないか。
自問自答しながら、上司からの説明を思い出すことにした。
・滞在期間は2週間。
・部屋は神社の近くの古屋(桜魔の結界が張ってある)
・衣食住には困らないようになっている(衣服は自分のを持ってきた)
簡潔なメモを取り出して、僕の荷物を古屋に置く。
そして外に出て、置いてあったベンチに腰掛ける。
木々のざわめきやセミの鳴き声に耳を澄ませ、そっと目を閉じた。
これから2週間、何をしようかと考え巡らせている時だった。
じゃり、じゃりと足音が聞こえた。
そしてピタリと止まった。
誰かがこちらを見つめている。
ちらりと、熱い視線の方向を向いてみると小さな男の子がこちらをみていた。
アメジストの瞳に、メッシュが入っている髪。いや、最近の子供はチャラくないか?これが現世の普通なのか?それにしても怖い人じゃなくてよかった。
僕は胸を撫で下ろし、声をかけてみた。
「こんにちは」
すると突然、男の子は茹蛸のように顔を真っ赤にしたのだ。
そして、口をぱくぱくさせて母音しか発しなくなった。
不思議に思って声をかけようと近寄ったら、走り出してしまったのだ。
いやなんだったんだ…?
「あ、ふわっちきた!おそいおそーい!」
「ご、ごめんなぁ…」
「ふわっちがおくれるなんてめずらし!なんかあったの?」
さっきのことを思い出す。
顔を真っ赤にして、恥ずかしさで逃げてきてしまった俺。
あれは俺の人生において最大の失敗だと思う。その事は言おう。そして笑い話にしよう。
でも、あの美しい人の事を共有したくないと思ってしまった。
「おれのしっぱいしたはなし、ききたいんか?」
「きくきく!なにやったの?」
「えっとな_____」
また会えると良いな。ゆうれいさん(仮)
夏はまだ始まったばかり。