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「若井とりょうちゃんは、残って。」
そう言われてて、スタジオに残ってた。
いつもなら笑う涼ちゃんも、流石に笑わない。
静かで、重い空気。
元貴がゆっくり口を開いた。
「二人は…辞めないでいてくれるの?」
「僕は…夢を追ってここに来たって、さっき言ったじゃん。まだ叶えてない。ここにいるよ。」
「俺は…。」
俺は…。
涼ちゃんが、また手をぎゅっと握ってくれる。
「なんだろう、勝手な言い分であれなんだけど、若井はオレの側から離れて行かない気がする。だからいいや。」
その通りなんだけどさ。
俺の手を離して、涼ちゃんは突然立ち上がった。
「もとき、泣いていいんだよ?」
さりげなく、本当に自然に。
りょうちゃんは、元貴を抱きしめた。
「いいの、かなぁ…。」
声が篭って聞こえるのは、元貴が涼ちゃんの胸に顔を押し付けてるせいだろう。
「いいんだよ、こういう時は、泣くの。」
ぽんぽんと背中を叩かれて、元貴はワッと声を上げて泣き始めた。
「オレのっ、せいで…!」
「もときのせいじゃないよ。大丈夫。」
「オレっ、またっ、独りに…」
「ならないよ、僕とわかいがいるじゃない。」
こんな子供みたいに。
わーわー泣く元貴を見るのは、初めてだった。
どれだけ不安だったんだろう。
涼ちゃんは、元貴が泣き止むまで。
それ以上何も言わずに、元貴を抱きしめて、背中をさすり続けた。
俺は、何も言えなかった。
元貴の泣き声だけが、部屋に響いてた。
「二人に話があります。」
泣き止んだ元貴が、顔を洗って、落ち着きを取り戻して。
お通夜みたいな雰囲気は、元貴の涙で薄れた。
「ごめんね、りょうちゃん。」
「えー?僕、何にもしてないよ?」
あれだけ泣かせといてよく言うよ。
「…ありがとう、ちょっと楽になった。」
「ならよかった。」
にこっと笑ったその笑顔で、いつもの空気が戻ってくる。
その後、告げられた事は。
「同棲…しろと?」
「期間はフェーズ2を始めるまで。場所はもう押さえてある。引っ越しは明日。OK?」
「全然OKじゃねぇ!」
なんで、コイツと!
「若井に拒否権なしね。りょうちゃん、どう?」
「僕はいいけど、きっとわかいに迷惑かけるだけだと思うけど。」
ほら、また目尻が下がって困った顔になってる。
「んだよ、嫌なのかよ。」
「違うよぉ?迷惑にしかならなそうだなぁって。」
下がり過ぎて、泣き顔みたいになってんじゃねーか。
「それだよ。」
元貴が涼ちゃんを指差す。
「若井とりょうちゃんに、もっと仲良くして欲しいなって。りょうちゃんは遠慮し過ぎだし、若井は全然りょうちゃんを理解してないし。もう…三人しか居ないんだからさ、仲良くして?」
ちょっと言葉に詰まった元貴に、お互い黙る。
「…わーったよ!すりゃいいんだろ!」
半ばヤケクソで、俺は答えた。
「りょうちゃん、若井を頼むね。」
「はぁい。」
なぁ、それ、頼む相手違くない⁈