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キッチンから、いい匂いがしてくる。
「できたぞー」
若井の声。
それでも、ソファーの涼ちゃんは動かない。
元貴が近づいて、少しだけ屈む。
起こさないように、そっと髪に触れる。
「りょーちゃーん」
指先で、軽く撫でる。
「ごはんできたよ」
涼ちゃんは眉をひそめて、少し身じろぎする。
「……ん……」
ゆっくり目を開けて、状況を把握するまでに数秒。
「……あ」
次の瞬間。
「やば!!!」
ガバッと起き上がる。
「元貴!!」
元貴が一瞬びっくりする。
「え、なに」
涼ちゃんは顔色を変えて叫ぶ。
「薬飲ませるの忘れた!!!」
そう言った瞬間、ソファーから飛び降りて、キッチンへ走り出す。若井は一瞬ぽかんとしてから、吹き出した。
「はははは!」
元貴も耐えきれず笑う。
「そんな全力で起きることある!?」
涼ちゃんはキッチンで立ち止まって振り返る。
「だって!!」
真剣な顔のまま。
「忘れたと思って!!」
若井は腹を抱えて笑っている。
「いや、もう」
「起き方が必死すぎだろ」
元貴も笑いながら言う。
「大丈夫だって」
「まだ時間的にセーフ」
涼ちゃんはその場で肩を落とす。
「……よかった……」
安心した途端、眠そうに目を擦る。
その様子を見て、二人はまた笑った。
「(なんて可愛い。)」元貴は微笑みながら立った