テラーノベル
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相川は、水道へ牧原を案内する。
牧原は、血塗れの小さな石を水道の蛇口がついている部分の上部に置くと、手を丁寧に洗う。手を洗い終わると、血塗れの小さな石を洗い始める。水流で落とさないように注意しながら、綺麗に血を洗い流す。洗い終わると、小さな石をジッと見る。
「この小さな石はいったい何なんですか?」
相川が聞いた。
「こんな形をしているとは思っていなかったので、まだ、完全に確信を持てていません。とりあえず、霧島さんが刃物を持って戻ってくるのを待ちましょう」
牧原と相川が雑談していると、霧島が手斧と共に大沢も連れて来た。
「我が弟子、牧原よ。モンスターの急成長の謎が解けそうだと聞いたが、本当か?」
大沢が言った。
「まだ、仮説です。その仮説が正しいか確かめようと思っているところです」
牧原が答えた。
「巨大化した死体処理モンスターから石を取り出しました」
相川が言った。
牧原は、二体の犬モンスターに人間に危害を加えられないようにし、モンスターの死体しか食べないように制限を加える。すると犬モンスターたちは小さくなった。
「牧原よ。その犬のような物に何を付与した」
「普通に人間に危害を加えないようにして、モンスターの死体だけを食べるようにしました」
「なぜそんなことをした」
「これから、モンスターの死体を食べるモンスターを作ります。犬モンスターが野生化したら迷惑かける可能性があるので」
「不要になったら処分すればいい」
牧原は苦笑いする。モンスターの魔法少女に変身しなおす。そして、通常の大きさのモンスターの死体のみを食べるモンスターを作る。
「その子は、普通の死体処理モンスターですよね?」
相川が聞く。
「こいつに、さっき取り出した石を食べさせる。そして、巨大化したら、あの石が巨大化した原因だと分かるわけだ」
牧原が、さっきの石を掌に載せて説明した。
「なるほど。でも、その石の正体は分からないままではないですか?」
相川が聞いた。
「物事は順序良く解決していかないとね」
牧原は、小石を小さな球体の目と口だけのモンスターの前に置く。
「この小石を食べるんだ」
小さいモンスターは小石を食べると、ぐんぐん大きくなり三十センチぐらいの大きさになる。
このとき、牧原は新しくモンスターにサブスキルを付与するサブスキルをマスターした。その為、牧原の動きは一瞬止まったが、牧原は平静を装う。
他のメンバーは、モンスターの変化に気を取られて気付かない。
「これでさっきの小さな石がモンスターを巨大化させていたことが分かった」
思った通りの結果が出て、ニッコリする。
霧島と相川は驚きの声を上げる。
「次は、その小石の正体を突き止めなければな」
大沢が間髪入れず言った。
牧原は、黒髪の魔法少女に変身しなおし、目を閉じて精神集中する。すると、死体置き場に一つあることが分かる。
「何をしているのだ?」
大沢が、牧原に聞く。
「見つけましたよ」
「何を?」
霧島が聞いた。
牧原は見つけた所へ行く。そこには元人間のモンスターの死体があった。皆の前で額から元魔法石の残骸を採取する。
すると死体は、ゲル状の物質になり悪臭を放つ。
霧島と相川は顔を顰める。
牧原は、モンスターの魔法少女に変身しなおし、再び小さい球体の目と口だけのモンスターを作る。そして、その前に採取した元魔法石を置く。
「この小石を食べるんだ」
指示すると、モンスターは食べる。すると十五センチほどの大きさまで巨大化する。
大沢、霧島、相川の三人が驚く。
牧原は、二体のモンスターの大きさに違いがあることが気になったが、あえて何も言わなかった。
「石の正体は元人間のモンスターの額にある元魔法石の残骸であり、それを食べたのが巨大化の原因です」
牧原は、黒髪の魔法少女に変身しなおし、二体のモンスターを手斧で処分して小さな石を取り出す。血塗れの小さな石を水道まで行って洗う。綺麗に洗うと二つの石を掌に並べて見せる。
元魔法石だった方も楕円形から先が尖った小さな石になっていた。
「それじゃあ、元人間のモンスターの額にある元魔法石の残骸は、今までただのゴミだと思っていたけど、モンスターの魔法少女には有益アイテムってことか!」
霧島が言った。
「それじゃあ、今度見つけたら、牧原さんに差し上げますね」
相川が言った。
「私にももってこい」
大沢が相川に圧を掛ける。
「は、はい~」
相川は、圧に負けて応じてしまう。
「こらこら。下級生を虐めるなよ」
霧島が大沢を窘める。
「我の崇高な研究を進めるためだ。仕方あるまい」
勝手な言い分だ。
「だったら、大沢もモンスターの死体を食べるモンスターを作れば良い。お前の作ったモンスターが巨大化したら、お前の物。牧原さんが作ったモンスターが巨大化したら牧原さんの物で良いだろ」
大沢は膨れっ面をする。
「モンスターの死体を集めたのは、学校の魔法少女たちでしょ。権利は死体を集めた魔法少女たちにあると思うよ。元人間のモンスターの死体から入手できる石が、モンスターを大きくする効果があるって知らなかったわけだし」
牧原がそう言うと、霧島は「そう言う考え方もあるな」と言った。
「この二つの石は、こういう効果があることを解明した駄賃としてもらっても良いかな。他に試してみたいことがあるから」
「全然問題ないですよ。いろいろお世話になっているしね」
霧島は承諾する。
「おい。勝手に許可するなよ」
大沢が止めようとする。
「僕は、魔法少女総代だから、この程度のことで誰も文句言わないよ。それに魔法石の残骸にこんな効果があるのも初めて解明してくれた。この程度のお礼でも少ないぐらいだ」
大沢は納得していないようだったが、牧原はありがたくもらうことにした。
「約束通り、モンスターの死体を食べるモンスターを作るよ」
「いや。その必要はない。我が作っておく」
大沢が言った。
霧島は、クスクス笑う。
「良いんですか? 手伝いませんよ?」
結局、大沢が一人でモンスターの死体を食べるモンスターを一人で作った。
牧原は、自宅へ霧島に送ってもらう。
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