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今日から一緒に働く樹さんを、朝の朝礼で柊君が紹介した。
樹さんを知らない社員は、みんなすごく驚いてた。
昨日の私と同じ。
真奈も目をパチパチさせて……
でも、顔やスタイルがそっくりでも、簡単に見分けはつく。髪型、髪色だけでも違ってて本当に良かった。もし、全く同じ髪型だったら、近くでしっかり見ないとわからないかも知れない。
きっと他にも違いはあるんだろうけど、私がそれを詳しく知ることはないだろう。
樹さんは、今日もラフめの服装。
身長は柊君より少しだけ高めで180くらいあるから、雑誌のモデルが目の前に立ってる感覚。実際、元モデルだったことを考えると、確かに立ち方が様になってる。
女子社員達は、そんな樹さんを、目をキラキラ輝かせてうっとり見つめてる。このまま樹さんへの人気が集中してくれたら、その方が私としては嬉しいんだけど……
「今日からよろしくお願いします」
樹さんは、挨拶を簡潔に済ませ、仕事が始まると、柊君と同じ部屋のデスクについた。
兄弟で仕事ができるなんて、2人とも嬉しいだろう。近々、樹さんは副社長になるらしく、柊君が日本での仕事をいろいろ教えてる。
「柚葉ちゃん。これ、コピーお願い」
そう言ったのは、専務の山下佳彦(よしひこ)さん。
35歳、既婚者。ガッチリした体つきは、昔ラガーマンだったかららしい。
柊君とは全然違うタイプだけど、彫りの深い顔が男らしくて素敵だと、ファンも多い。
私は……あまり好きなタイプじゃないけど。
「あ、はい、わかりました」
専務は、なぜかいつも私に雑用を頼む。後輩もいるし、毎回私じゃなくてもいいのにと思う。
もしかして嫌われてるのかな……
「急いでね、頼むよ」
急かされて、自分の仕事を一旦中断してコピー機に向かった。
「お待たせしました」
山下専務にセットした資料を手渡した。
「ありがとう。あ、そうだ、柚葉ちゃん。君、映画好きだったよね。今度、一緒に観にいかない?」
え? 既婚者の専務が私を映画に?
しかも、私が社長の彼女だって知ってるのに。
返事に困っていると、
「冗談だよ。何だよ、その顔」
専務が笑いながら言った。
こういう所が……苦手。
本気なのか、冗談なのか。いつも、本心が掴めない話し方をする。あまり人のことを悪く言いたくはないけど、私はこういう軽い感じの人は好きじゃない。
そんなことを柊君にはわざわざ言わないけど、たまにからかわれるのがすごく疲れる。
柊君と専務とは共通の知り合いの紹介で出会い、設立当初から一緒に働いてるらしい。
仕事ができるのはわかるんだけど……
やっぱり人として信用できない部分がある。