この作品はいかがでしたか?
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貴方が咲かせた桜の木の下で。
今年もこの季節がやってきた。
僕が大好きな季節。
今年はどんな色だろう。
…あれ、今年は白色だ。
足りなくなってきちゃった。
また持ってこないと。
今年は誰にしようか。
あの子なら分かってくれるかな?
きっと大丈夫か。
それにしても、今年は短かったなぁ。
やっぱり最初からあの子にしておけば良かったなぁ…。
「あら?貴方が桜を眺めているなんて珍しい。」
あ…いた。
「花にはあんま興味無いけど、この桜は好きだよ。」
「そうなのね。でも、この桜は色素が薄いわね。 」
「あー、うん。そうだね。あんま綺麗じゃなくてさ。」
「…そうかしら。私は好きよ、この色。」
「…ぇ?どうして…? ピンクとか赤の方が綺麗でし ょ…!?」
「まぁそうかもね。でも花も人もいつかは枯れ果てる。
永遠と美しく咲き誇るものなんて無いのよ。」
「ッでも…」
「だからこそ美しい。花も人も、枯れ果ててしまうのな ら、美しく散るというのも与えられた選択肢。私は美 しく散った方が、幾分かマシだと思うわ。」
「…そうだね。でもさ…ずっと咲き続ける花があったと しても、君は同じ事…云える?」
どうせ云えないだろ。だって、いつだって咲き誇る花が一番、綺麗だから。
「云えるわ。」
「はッ…?なんでッ?どうしてッ!?」
「咲き続ける花なんて、生き続ける人生なんて、苦しい だけじゃない。親しかった周りの人も皆居なくなっ て、気付いたらひとりぼっち。そんなの苦痛以外の何 物でもないわ。」
「ぁ…」
納得したくない。納得してしまう。辞めてくれ。今この言葉を聞いてしまったら、今までしてきた事が全部、全部、全部無駄になってしまう。
「…私を殺せばこの桜は残り続ける。私を殺さなければ この桜の木は枯れ果てる。」
「ぇあ…」
「私はこの木が好きよ。貴方が育てたから。」
「ぇ…」
「この木は幸せよね。貴方に育てて貰えて。」
「それってどういう…」
「私は貴方とこの木の為だったらなんでもすると決めて いるの。」
「だからここに来た。私が死んだらこの桜の木の下に埋めて頂戴。」
「…本当に良いの?後悔、しない?」
「ええ、しないわ」
「ごめんね…」
「ええ。良かったわね。きっと来年はまた、綺麗なピン ク色の桜が咲くわ。」
春が過ぎ、夏が来て、夏が過ぎ、秋が来て、秋が過ぎ、冬が来て、冬が過ぎ、春が来た時、
もう綺麗なピンクの桜が咲き誇っていたそう。
それから、『桜の木の下には死体が埋まっている』と言い伝えられている。
おしまい。
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