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貴方が咲かせた桜の木の下で。

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貴方が咲かせた桜の木の下で。

1 - 貴方が咲かせた桜の木の下で。

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2024年12月31日

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貴方が咲かせた桜の木の下で。




今年もこの季節がやってきた。

僕が大好きな季節。


今年はどんな色だろう。


…あれ、今年は白色だ。


足りなくなってきちゃった。


また持ってこないと。


今年は誰にしようか。


あの子なら分かってくれるかな?


きっと大丈夫か。


それにしても、今年は短かったなぁ。


やっぱり最初からあの子にしておけば良かったなぁ…。


「あら?貴方が桜を眺めているなんて珍しい。」


あ…いた。


「花にはあんま興味無いけど、この桜は好きだよ。」


「そうなのね。でも、この桜は色素が薄いわね。 」


「あー、うん。そうだね。あんま綺麗じゃなくてさ。」


「…そうかしら。私は好きよ、この色。」


「…ぇ?どうして…? ピンクとか赤の方が綺麗でし            ょ…!?」


「まぁそうかもね。でも花も人もいつかは枯れ果てる。

   永遠と美しく咲き誇るものなんて無いのよ。」


「ッでも…」


「だからこそ美しい。花も人も、枯れ果ててしまうのな     ら、美しく散るというのも与えられた選択肢。私は美     しく散った方が、幾分かマシだと思うわ。」


「…そうだね。でもさ…ずっと咲き続ける花があったと     しても、君は同じ事…云える?」


どうせ云えないだろ。だって、いつだって咲き誇る花が一番、綺麗だから。


「云えるわ。」


「はッ…?なんでッ?どうしてッ!?」


「咲き続ける花なんて、生き続ける人生なんて、苦しい     だけじゃない。親しかった周りの人も皆居なくなっ         て、気付いたらひとりぼっち。そんなの苦痛以外の何     物でもないわ。」


「ぁ…」


納得したくない。納得してしまう。辞めてくれ。今この言葉を聞いてしまったら、今までしてきた事が全部、全部、全部無駄になってしまう。


「…私を殺せばこの桜は残り続ける。私を殺さなければ     この桜の木は枯れ果てる。」


「ぇあ…」


「私はこの木が好きよ。貴方が育てたから。」


「ぇ…」


「この木は幸せよね。貴方に育てて貰えて。」


「それってどういう…」


「私は貴方とこの木の為だったらなんでもすると決めて     いるの。」


「だからここに来た。私が死んだらこの桜の木の下に埋めて頂戴。」


「…本当に良いの?後悔、しない?」


「ええ、しないわ」


「ごめんね…」


「ええ。良かったわね。きっと来年はまた、綺麗なピン     ク色の桜が咲くわ。」





春が過ぎ、夏が来て、夏が過ぎ、秋が来て、秋が過ぎ、冬が来て、冬が過ぎ、春が来た時、


もう綺麗なピンクの桜が咲き誇っていたそう。

それから、『桜の木の下には死体が埋まっている』と言い伝えられている。




おしまい。

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