素直じゃない

「可愛い笑」

「うっせ」

いつものように、仁人は勇斗の手をパシンと払いのけた。

付き合い始めて1年。

いまだに「好き」とか「可愛い」とか、そんな言葉にまともに向き合えない。

だから、勇斗が頭を撫でてくるたびに、

不意にキスしてくるたびに、

ドキドキを隠すためにツンケンしてしまう。

なのに、勇斗はいつも笑って

「ホント、素直じゃねぇな笑」

とどこか嬉しそうに返す。

それが、いつしかお決まりのやりとりになっていた。

けれど、その日は違った。

レッスン後の帰り道。

記憶にも残らないほど些細なことで、ちょっとした口論になった。

お互い疲れていたのもあったんだろう。
ヒートアップしていく言い合いの中で、勇斗が放った一言。

「相変わらず素直じゃねーな。……ほんと可愛くねぇ。」

目線を逸らしながら、小さくため息をつき、わざと仁人の耳に届くように呟いた。

いつもと違う、“呆れ”の混ざった声だった。

仁人は思わず足を止めるが、勇斗は止まる気もなければ振り向くこともない。

胸の奥が痛み、喉がつっかえて上手く言葉が出てこなかった。

仁人は勇斗との物理的な距離が心の距離になってしまう気がして、遠ざかっていく勇斗の背中を必死に追いかけた。

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結局、その後はお互い謝ることもできず、一言も話すことなく解散した。

夜になり、仁人はベッドに横になったもののなかなか寝付けずにいた。

(勇斗はいつも真っ直ぐ伝えてくれるのに、なんで俺は素直になれねぇんだろ…）

「好き」と言われたとき、素直に「俺も」って言えたなら。

手を繋がれたとき、恥ずかしがらずに握り返せたなら。

そうしたら、こんなことで喧嘩せずに済んだのかもしれないのに。

悪い思考が頭の中を巡っていく。悪循環だと分かっていても、もはや自分ではどうすることも出来ない。

そんな仁人の思考を断ち切るように、不意にスマホの通知が鳴る。

「さっきはごめん。言いすぎた」

「可愛くないなんて思ってない。俺は仁人の全部が好きだから」

「ツンツンしちゃうのも照れ隠しだって分かってるから笑」

「もう怒ってない。おやすみ」

いつもの仁人ならとっくに寝ている時間で、勇斗もそれを知っているはずなのに、まるで仁人が寝付けずにいることを分かっているかのようだった。

いつだって欲しいときに欲しい言葉をくれる。こんな時でさえ相手のことを優先する勇斗の気遣いと優しさに、気づけば仁人は涙を流しながら家を飛び出していた。

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勇斗の部屋の前まで来て、心臓がバクバクと音を立てる。

緊張で震える指でピンポンを押すと、すぐにドアが開く。

「……仁人？」

驚きと困惑の表情を浮かべている勇斗。

その顔を見た仁人はハッとして、急に我に返る。衝動のままに飛び出してきてしまったせいで、突然押しかけたくせに話したい事がまだまとまっていない。

「……あー、……いや、なんか、その…別に大したことじゃないんだけど」

仁人はバツが悪そうにもじもじして、なかなか本題に入ろうとしない。

勇斗はとりあえず仁人を家に招き入れ、リビングのソファに並んで腰を掛ける。

「どしたん？急に」

勇斗から聞いてみるも、困り眉で目を泳がせ、いかにも”不安です”という顔をするだけで、口を開こうとしない仁人。

長くなりそうだなと思った勇斗が飲み物を用意しようと立ち上がると、仁人に服の裾をくいっと掴まれる。

「…ごめんなさい。」

いつもの仁人からは想像もできないほどか細い声に、勇斗は静かに耳を傾ける。

「俺…不器用だし、可愛くねぇし……勇斗のことちゃんと…っ好き…なのに、恥ずかしくて。勇斗みたいに真っ直ぐな言葉では伝えられないかも知んないけど…これから、ちょっとずつ、頑張るから、っだから……だ、から。」

あともう少しで言い切れるというところで、涙が溢れ出し止まらない。

勇斗は仁人の涙を拭いながら、

「うん。大丈夫、分かってるから。言ってくれてありがとな。」

と優しく微笑んだ。

仁人が落ち着いてきたころ、ていうか、と勇斗に軽く頬をぺちんと叩かれる。

「可愛くないなんて思ってないって言ったよね？なんならずっと可愛いって伝えてるじゃん！」

不服そうにぷくっと頬を膨らませている勇斗を見て、仁人は眉間にしわを寄せる。

「どこが可愛いんだよ…」

「今とかめっちゃ可愛いよ？笑」

勇斗にそう言われてから、自分が服を掴んだままだったことに気づき焦って手を離す。

「うるせぇ！」

「はいはい笑、そういうとこが大好きでーす！」

「……ばか」

そう言いながら、勇斗は離された手を自分の手と繋ぎ直す。

仁人はその手をそっと握り返した。

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読んで頂きありがとうございました( *´꒳`*)

…お久しぶりです。

すみません、分かってます！ごめんなさい！

作品投稿が怠惰を極めすぎてる…。

リクエストも待たせてしまっていて本当に申し訳ない( ´•̥ω•̥｀)

このお話もなんかあまり納得いってないし…

来月こそは頑張りたい、！

あ、あと皆さんにはこれと言って影響はないと思うんですが、一応報告として。

投稿整理をします！

詳しくは「おしゃべり」に書いてますので、もし良かったら読んどいてくだせぇ。

ではまた´ω`)ﾉ