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「——TikTok社員・佐藤藜。君の使命はただ一つだ。」
光の中でスンダー・ピチャイが厳かに言った。
「5分以上動画を見続け、集中力を保て。
そうすれば“Time Eater”のアルゴリズムを破壊できる。」
「……いや、俺、ショート動画しか耐えられないんですけど!!」
「ならば訓練だ。YouTube残業AI、準備を。」
AIがスイッチを押すと、藜の目の前に巨大なスクリーンが出現した。
画面には1時間の企業セミナー映像。
講師は“Googleスプレッドシートの使い方を10倍楽しむ方法”を延々と語っている。
「これを5分以上見るのか!? 拷問じゃねぇか!!」
「集中力が切れた瞬間、広告が流れるぞ。」
「地獄の仕様か!!」
その頃、上空のクラウドサーバーでは、各社の神々が集まっていた。
「さて、今日も広告収益の時間だ」
ゴールドのヘッドセットをつけた男——**Time Eater(Metaの神)**が高笑いする。
「おっと、それは聞き捨てならんな」
林檎のロゴを刻んだローブを纏う男、ティム・クックが登場。
「広告? うちでは全部サブスクだ。収益の香りが違うんだよ。」
「……どっちも人間の時間を吸ってるだけだろ」
呟いたのは、青い鳥のマントを羽織る男、イーロン・X。
「俺はもう“エンゲージメント”とか飽きた。最近は“自由落下型投稿”に夢中なんだ。」
「それ、ただの炎上だろ!!」
そこに、ピチャイが現れた。
「お前たち……まだ気づかないのか?
時間を奪い合う戦いは、すでに終わっている。」
静寂。
そして彼の背後から、無数の光が立ち上る。
「見よ、これが我々の新兵器——Project Focusだ。」
その名を聞いた瞬間、他の神々の表情が凍りつく。
「まさか……“ユーザーが一日中スマホを触らない世界”を作る気か!?」
「そうだ。
通知ゼロ、広告ゼロ、SNSゼロ……
究極の静寂を実現するアルゴリズムだ。」
「そんなの経済が死ぬ!!」
「だが、人間は救われる。」
一方その頃——
佐藤藜は地上でセミナー動画に白目をむいていた。
「ピチャイさん……眠いです……
もういいでしょう……俺の集中力バー、残り3%……」
「耐えろ! お前の“集中”こそ、この世界の希望だ!」
「そんな世界、嫌だぁぁぁ!!」
突然、画面の中からTime Eaterが現れた。
「甘いな、TikTok社員!
貴様の集中力を奪い、我が広告の糧にしてくれるわ!!」
「やめろぉ! 俺の脳内におすすめ動画が流れてくるぅぅぅ!!!」
藜の頭の中に、猫の動画、ASMR、爆笑ダンスチャレンジが連続再生される。
視界が揺れ、意識が遠のいていく——。
「ダメだ……俺、今……バズりそう……!」
だがその瞬間、どこからともなく声が響いた。
「スワイプするな、藜!!」
振り返ると、光に包まれたスマホが宙に浮かんでいた。
そこから現れたのは、かつての同僚AI「TikTok日本支部版・Ver桜」。
「あなたがここでスワイプを止めたとき、
“時間の神”の支配は終わるのよ!」
「……マジで!? スワイプ止めたら世界救えるの!?」
「そう、でも——広告があと5秒で流れるわ!」
「スキップ!!スキップボタンどこだァァァ!!」
ピチャイとTime Eaterが空で激突し、
Appleが課金を請求し、Xが謎のポストを拡散し、
世界は混乱に包まれていった。
そして藜は、震える指で画面を見つめ——
決意の声を上げた。
「……もう、スワイプしない。」
——その瞬間、世界中のスクリーンが暗転した。
Time Eaterの咆哮が響き、
ピチャイが静かに目を閉じた。
「やっと……人類が“時間”を取り戻したな。」