ナチイタ
「後輩への接し方」イタリア視点
※milk inside a bag of…に影響されました
※性行為もなんもありません
ここ最近、少しでも彼といると調子が狂うようになった。
挨拶も、まして触れることもできない、なんて距離感ではなかったはずなのに、知らん間にそうなって、対策も分からずに、未だ彼から距離を取ることだけが対策だと信じてる。
空に蠢く意識の虫は、いろんな色で輝いている。ドブみたいな色に、彼のような綺麗な赤、少し時間が経った血と赤くなった頬が混ざった色と、死んだ人間の肌の色。
全部ぼくの意識だって言ったら、きっとみんな気色悪がるんだろうな。そう思いながらもその虫が額を突き破っていくのを眠りこけて待つ。本当は触れてすらいないのに。
人格を基として意識は分散する。今の僕はこうでも、いつもの猫の虫は綺麗な蝶々に違いない!そう思って眠ろうとしていたら、後ろから肩を叩かれた。
ITA「あっ、あ、ど、ドイツ…えと、あ、ちゃ、Ciaoなんね!」
上手いこと言葉が出ない。下手に接せば嫌われる?いいや!まず嫌ってくれるほどの好感度もないよ!そう言い猫はぼくと入れ替わる。ああ!なんて快適なんだろう。あんなもの要らなかったんだ!そう、そう思いながら言葉を紡ぐ。
ITA「も〜、せっかく仮眠を取ろうと思ったのに起こすなんてひどいんね!んで、なんの野暮用なんね?」
少し顔を顰めていた彼もほら、いつもの威厳たっぷりの後輩になってるじゃないか!そうさ、彼に複雑な感情なんて抱いていない。それはただの世界一ちっぽけな嘘に過ぎなかった!
Nazi「申し訳ない、野暮用というのはこの件についてなんですが…」
そう言うドイツの一言でまた日常は幕を開けた!そう、あの怠惰な人格はやっぱりエイプリルフールの爪先にも過ぎなかったんだ!
やっぱりこの感情は嘘っぱちじゃなかったようだ。猫が引っ込んだ瞬間あの汚い意識の虫が飛び交う。まるで光るゴキブリのようだ。これが書類を運んで帰る間際でよかったと、それだけは安堵の息をつける。
好き?好きと言えば好きなのかもしれない、でも彼と一緒くたに、同じファシとして、また同じナチとして扱われるのは抵抗感がある。その点は嫌いだ。
でもどうだろう?彼がいなければギリシャに刺し殺されたり、エチオピアに絞め殺されたりしたかもしれない。そこは好きなのかもしれない。
でもでも、勝手に模倣して、勝手に慕って、勝手に超大国を殴りに掛かったのは嫌いだ。でもでもでも彼はぼくのことを慕って、愛して、尊敬してるんだ、きっとそうだ、じゃなきゃあんな思想まで作らない、そう、きっとそう…ならキリスト教に基づいて愛を愛で返すべき?でもぼくは今は無神論者だ。でもでもでもでも…
そう思考を巡らす間に家についていた。玄関にぶつかったせいでおでこがジンジン痛む。そう思う間もなく、玄関のドアノブに手を差し掛ける。内装が見えた。意識の虫が一番を奪ってく。ああ、そういうところもとことん嫌いだ!
もたもたして靴を脱いでスリッパに履き替える。トーストをあっためて食べて寝るだけなのに、意識の虫が求愛行動みたいに意識の中身を話し出すから、さっぱり寝付けなかった。
異常だと分かっていた。薬も何十種類だって服用しているのにどれがなんの効果があるか、さっぱり知らない。全部一気に飲んでいるから。
そんなぼくは薬の訳か軍人とは思えない細身な男だった。そのせいで力も弱かったから、後輩の彼にだって逆らえない。その点では彼は嫌いだ。
今日もまた日常は退勤した。あとはもう夢の狭間でシャトルランだ。
この瞬間が嫌いだった。
未来構造を思考する間に、家主の彼は顔を出す。
そうだ、ぼくはあの複雑怪奇な意識を向けている彼に住まわせてもらってるんだ。薬には気付いてないみたいだけど、時々「お前からは医療薬が混じった香りがする」と言われるだけはぞわっとする。
家でだけは猫は脳内で指示したり会話するだけで出てくれない。なんて意地悪なんだ!そう思うも猫は嘲るだけで何もしてくれない。でも言う通りにしたら上手くいくから、消すに消せない。
Nazi「おかえり、先輩」
先輩と呼ばれるのは抵抗がある。彼の心情の基となっただけで他は全部全部、身長も、力も、顔もそれ以外も全部、分からないところもきっとぼくは劣ってる。それは知っていた。彼は薬なんか打ちも飲みもしないし、足だって早くて、誰にも負けなくて、傷すら付かなくて、綺麗な、綺麗な赤い目をしてる。そんな彼を愛してるし嫌いだ。ぼくより優れた後輩の彼は嫌いだ。でも優れてなきゃ嫌いだ。優れてる彼だから、だからあのめちゃめちゃな理論だって押し通せて…。
ああもう、埒があかない。気持ちが破裂しそうだ。試しに相談しようか?いいや、下手にことを進めたくないから、でも、吐き出さないと…
Nazi「…い……せ…ぱい……聞いてるんですか、イタリア王国!」
そう言われハッと意識を現実に戻す。罪悪感が押し寄せる。吐きたい。吐きたい。吐きたい。死にたい。
ITA「え、あ、ごめ、ご、うぁ…あ…ごめ、ね…えと、少しぼーとしただけで、あ、だい、大丈夫だから…」
そんなぼくを一瞥する彼が怖かった。
嫌われる?そんなのは嫌だ、ぼくのことが好きで尊敬してて慕ってる彼じゃなきゃ、ぼくは、ぼくはきっと、ああ…
Nazi「…冷や汗がひどいですね。悩み事でもあるなら聞きますよ。仕事でも、戦局でも、恋愛でも。」
そうやって汗を拭いてくれるような、気遣いができる君が嫌いだ。
ぼくよりすごいきみがなんでぼくなんかに?他のかわいい女の子を誑して抱く方がきっといいのに、なんで?なんで?なんて言えなかった。
そう思うと汗じゃなくて涙が溢れた。みじめなぼくがきらいだ。みじめなぼくを愛する彼が嫌いだ。
ああ、話すのこわいな。
それからはずっと泣いてばっかだった。
話しても話してもきもちわるくて、吐いちゃったのにきみはそれの処理しながら聞いてくれて。さらに泣いちゃった。こんなぼくが嫌いだ。
全部話終わると、身体が人情の暖かさで包まれた。
包まれてしまった。
きみの方が大きいから、ぼくは簡単に包まれた。ああ、嬉しい、悲しい、苦しい、刺してしまいたい。愛してる。
Nazi「先輩も苦しかったでしょう、よく頑張りましたね。」
そうやって撫でるきみの手が嫌いだ。そう言ったら彼は物悲しげに、
Nazi「そうですか…はは、悲しいなあ。でもこれだけは言わせてください。」
呼吸音が聞こえる。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。思考は恐怖で埋め尽くされてく。ああ、言わないで、言って欲しい、言わないで…傷つけないでくれ。
Nazi「俺は、先輩の細い体も俺より少し小さい身体も弱い力も女性によった顔つきも薬を服用してるところも俺への気持ちの全て、全て愛しています。あなたのその触ればすぐ消えてしまいそうな、そんな存在を愛しています。今はきっと怖いんですね、鼓動が聞こえます。安心して下さい、あなたに否定をかけることはありません。刺したかったら刺して下さい、絞めたかったら絞めて下さい、乱暴されたいなら言って下さい、全て、あなたが望むならなんだってしましょう。」
予想外の気持ちに驚いた。ぼくのいいところなんてないと信じていたものをひっくり返されたような気がした。苦しい。肯定が全て皮肉を孕んでるような気がする、きっと本心じゃないのは分かってるのに信じてしまうぼくが嫌いだ。そんな皮肉を言う君が嫌いだ。
でも従順な犬に文句を言う口がないように、ドイツの服を握って泣くことしかできなかった。
ああ、やっぱり嫌いだ。
頭に甘いキスが落ちた気がした。
コメント
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小説書くの上手すぎだろぉ!! 絵も小説もは違反です_(´ཀ`」 ∠)_
イタリア王国さんは二重人格だと私が喜ぶ