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今は昔、かぐやの姫というものありけりーーーーーー
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その男の名を、小山慶一郎と言った。
男は竹を取り様々な用途に使い暮らしていた。男には妻こそいないものの、加藤シゲアキという伴侶がいた。
ある日男がいつも通り竹林に出掛けると、光り輝く竹があった。不思議に思って近寄ってみると、中には三寸程の可愛らしい女の子ーーーーーいや、男の子が座っていた。二人は自分たちの子供のようにとまではいかないが、大切に育てることにした。
その後、竹の中に金を見つける日が続き、慶一郎とシゲアキは豊かになっていった。
男が見つけた子供はどんどん大きくなり、女と見紛うばかりの可憐な佇まいを残した、眉目秀麗な若者になった。
しかし男は、近頃宮中に、色好みの、いとやむとなき怖ろしき御方がおわして、美しき少年と聞けば、たちまちに掠め去りて己が慰みものにすという女どもの噂を聞いた。
男どもは心配し、その男の子を女として育てることにした。髪を結い上げる儀式を手配し、裳を着せた。
この世のものとは思えない程の美しさで、家の中には暗い場が無く光に満ちている。
男と伴侶は、心が悪く苦しいときも、この子を見れば苦しみは消えるまでとは行かなくとも、軽減された。
やがて男の子は大きくなったため、なよ竹のかぐや姫と名付けられた。
このとき人を集めて詩歌や舞など色々な遊びを催し、三日に渡り盛大な祝宴をした。
慶一郎はかぐやが男だとバレるのも時間の問題だと想っていたが、かぐやは人見知りのせいかあまり人前で声を出さないので、怪しまれることすらなかった。
しかし、かぐやは徐々におかしくなっていったのだ。
ある日突然、小山と加藤に自分の名を手越祐也だと名乗るようになったり、ありもしないメロディーや言語で歌を歌い、そればかりか男であることはこの家のものなら知っているものの、この家中の女中を口説き自室へ連れて行き、夜な夜な帳の奥へ引き入れては怪しげな密事に耽るようになった。
「男であると露見すれば、お前は奪われてしまうのだぞ」そう言い聞かせる慶一郎の声を、かぐやはただ美しい鷲色の瞳を細めて、面白そうに聞き流すのだった。
流石にこれには、シゲアキが眉をひそめて慶一郎を問い詰めた。「小山、いくらなんでも甘すぎる。
かぐやのあれは度を越しているだろう。
女中たちに何かあってからでは遅いし、もし万が一、外の男たちに男だと露見したらどうするんだ。お前からも厳しく言ってくれ」居間の灯りの下、シゲアキは真剣な声を裏返らせる。しかし、慶一郎は困ったように眉を下げ、おっとりと茶をすするだけだった。
「まあまあ、シゲ。かぐやだって悪気があるわけじゃないしさ……。それに、あの子が笑ってくれてるなら、今はそれでいいじゃない」
「よくない!お前がそうやっていつも庇うから、あいつは調子に乗るんだ!」「シゲだってあいつが可愛いから心配してるんでしょ? 分かってるって」
「……っ、そういう問題じゃない!」シゲアキは慶一郎の態度に余計に苛立ち、バン、と畳を叩いて立ち上がってしまった。
いつもならすぐに笑い合えるふたりの間に、冷たくて気まずい空気が流れる。
慶一郎としては、ただでさえ「いつか宮中に掠め取られるかもしれない」という恐怖からかぐやを守るために必死で、これ以上あの子を叱って、どこかへ消えてしまうのが怖かったのだ。
けれど、自分の意図がシゲアキに上手く伝わらないもどかしさに、慶一郎も少しだけ唇を噛んだ。男どもは言い聞かせる。男であるとバレないように、これ以上騒ぎを起こさぬように、と――。しかしその心中は、少しずつ噛み合わなくなっていくふたりの関係に、小さな影を落としていた。
そんな中、世の男どもは、その貴賤を問わず皆、かぐやを我が物にせんと焦がれ死ぬばかりであった。屋敷の周囲には、一目その姿を拝もうと公達が絶え間なく群がる。門を叩き、垣根に縋り、闇夜に紛れては壁に穴を穿(うが)って中を覗き込もうとする。その執念は、正気を失った狂人のようであった。
そのうちに、志の無い者は来なくなっていった。最後に残ったのは5人の公達で、彼らは諦めず夜昼となく通ってきた。
そのうちの1人にいたのだ、彼がーーーー。
コメント
1件
うわあ、これ……めちゃくちゃ重いし、美しいのに苦しい話だね😢 「かぐや姫」のパロディかと思いきや、男の子を女として育てるって時点ですでに歪んでて、そこから手越祐也って名乗り出したあたりで「あっこれヤンデレの気配だ」って確信したよ。 慶一郎の優しさが逆に毒になってる感じがたまらない。シゲアキが正論で詰めてるのに、かわいさで流されちゃうもどかしさ……わかるよ、それ。 最後の「彼がーー」で切れるの、反則級だよ。続きを読むのが怖いけど、読まずにはいられない。そういう作品、大好きです🌙