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月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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結局柳川はタクシーを止めてくれると、私を車内に押し込みながら「住所言えるか?」って聞いてきて。
「大丈夫よ」と運転手さんに行き先を告げる私を、ドアを押さえて覗き込んだまま、少し戸惑ったように見つめてきた。
「――鳴宮、住んでる部屋、何階?」
ややして、どこか意を決したように聞かれて、「んー? 2階だよ」って何の気無しに答えたら、「エレベーターは?」って続けられる。
もぉ、柳川の世間知らずっ。
2階建ての安アパートにそんなのあるわけないじゃないって可笑しくなった。
「や〜ん。そんな高級な設備あるわけにゃーい。えっちらおっちら歩いて上がりましゅよ、私は」
お酒のおかげか、今度は何もかもが楽しく思えてきてヘラリと笑った私に、柳川が小さく舌打ちするのが聞こえた。
え?
何で怒るの?
私が思いのほかオンボロなアパートに住んでたから?
ん? ん? 意味分かんなぁーいっ!
そう思ったのも束の間、柳川が何故かタクシーに乗り込んできて、「出してください」って言ったから、さすがに驚いて目がまん丸になる。
だってだって。てっきりここで解散だと思っていたんだもん。
「えっ、ちょ、柳……川っ、な、んでっ――?」
実家住まいの柳川は、お店から徒歩圏内に家があるはずで。
私のアパートに向かうタクシーに乗り込んだりしたら、確実に遠回りになっちゃうよ?
「んな、フラフラの状態のヤツ、ひとりで階段上がらせられっか。……怖すぎだろ」
そう吐き捨てた柳川を思わず見つめたら、怒ったようなその横顔にドキッとしてしまう。
あー、これ。絶対呆れられてるね。
好きな人にこんな顔させちゃうとか……ホント最悪!
「ごめ、なさっ」
迷惑かけて。
薄暗いタクシーの後部シートに、大好きな男の子と2人きり。
そう意識した途端、こんなに重苦しい空気だと言うのに心臓がバクバク言い始めて。
走り出した車の揺れに翻弄されたみたいにゆらりと身体を傾がせたら、頭をそっと引き寄せられた。
「え……?」
驚きの声をあげる私なんてお構いなし。
そのまま自分の肩にすがらせるように抱き寄せてくれると、柳川がポツンとつぶやいた。
「あんなぁ、鳴宮。お前、男と2人きりで飲んでるって自覚、なさすぎだからな?」
低い声音で失態をさらしていることを叱られて、私、頭の中で即座に「だって……相手が柳川だったから」って言い訳をした。
私、いつだって貴方になら何をされても構わないって思っているのよ?って。
けれど、当たり前だけどそんなこと、口が裂けても言えるわけないの。
「ごめん、ね……」
仕方なく再度謝罪の言葉を繰り返したら、柳川が小さく吐息を落したのが分かった。
ごめんね、柳川。
大好きな子にフラれたばかりの大変な日に、好きでもない相手とこんな。
迷惑だよね。
***
「着いたぞ」
ゆさゆさと身体を揺すられて、私はハッと目を開けた。
わ、私のバカぁ〜!
気がつくと、いつの間にか私、柳川のひざ枕で眠りこけていて。
「ひゃっ、嘘っ、ごめっ」
慌てて身体を起こしたら、頭がクラッとして身体が揺らめいた。
「バカ。まだ酒、抜けてねぇんだから急に動くな」
言われて、私の手をギュッと掴むように支えてくれた柳川が、私を車から降ろしてくれる。
車外に出る際、車の縁で頭を打たないように、そっと大きな手でカバーしてくれたのにキュンとしたとか……柳川は鈍いから気づいてないだろうな。
走り去って行くタクシーのテールランプの赤をぼんやり見つめながら、私はハッとした。
「たっ、タクシー代……!」
慌ててカバンからお財布を取り出そうとしたら身体がフラリと傾いて、柳川にギュッと抱き寄せられる。
「なぁ鳴宮。そんなんいいからとりあえず立つ事と歩く事に集中してくんね?」
溜め息混じりに言われて、確かにその通りだと思った私は小さくうなずいた。
お財布は部屋に着いてからでも取り出せる。
う〜。でも、でもっ。大好きな男の子とこんなに密着しちゃっていいのかなっ?
そう思ってドキドキしているのは、きっと私だけ。
アパートの階段を柳川に支えられて一段一段登りながら、バカみたいに踊り騒いでいる鼓動に気付かれやしないかとヒヤヒヤしてしまう。
なのにこの時間が永遠に続けばいいとも思ってしまってるの、矛盾してるよね。
コメント
2件
柳川くん、優しすぎるやろ。 でもそれ、片思いしてる相手にされたら辛いんじゃないかなー、ことりちゃん。
第5話、めっちゃ良かった…!柳川、最初はツンツンしてたのに、酔った鳴宮を絶対ひとりで帰さないってタクシーに乗り込むとこ、もう完全に好きじゃんって思った笑 肩に引き寄せて「怖すぎだろ」って言う声、低くて優しくてドキドキする…。膝枕で寝ちゃった後の支え方とか階段カバーとか、細かい優しさにキュンが止まらない。片思いの切なさと密着の甘さ、どっちも味わえる回だったわ🔥