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月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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鷹槻れん

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「鍵、出せるか?」
聞かれてカバンの外ポケットのファスナーを開けようとガサガサしたけれど指先に上手く力が込められなくて苦戦する。
思わず「う〜」ってうなったら「貸せ」って柳川が開けてくれて。
私はやっとの思いで鍵を手にした。
だけど今度は上手く鍵穴にさせないとかね。
結局ファスナーを開けるのだけでなく、鍵を開けるのも扉を開けるのも柳川がやってくれて。
私は扉横の壁にもたれかかったまま柳川の手の動きをうっとりと眺めているだけだった。
「ありがと……」
何とか口調だけはマトモになってきたけれど、まだ頭はふわふわとしていて。
「ここで見ててやるから部屋ん中入ったらしっかり鍵かけろ。で、酔いが覚めるまで風呂とか入んな? 分かったな?」
玄関先で、一歩たりとも中に入ってこようとしないままにそう言って来た柳川を見上げたら、切ないぐらいに離れたくないって感情が湧き上がってきた。
「ね、柳川……歩くのとかまだ微妙でその……不安だし……わ、私の……酔いが覚めるまででいいから……」
――もう少し傍にいて欲しい。
1番伝えたい要求は言葉にできなかったけれど、いくら柳川でも分かってくれる、よね?
「お、お茶くらいは出す……から……」
恐る恐る問いかけた声は、自分でもびっくりするくらい震えていて。
玄関を入ってすぐのキッチンにある壁掛け時刻は22時を回った辺りをさしていた。
こんな夜遅くに、一人暮らしの家に異性を誘うことの意味が分からないわけじゃない。
本当は……「幼なじみちゃんの代わり、私じゃダメかな?」って真っ向から聞いてみたい。
だけど、そんなの言えるわけないから。
だから色んな答えを先延ばしするみたいに、例え断られても痛手の少なそうな質問を選んで口にしたの。
私、すごく卑怯だよね。
「……ダメ、かな?」
私の問いかけに戸口のところへ佇んでうつむいたまま、何も言ってくれない柳川に、心臓がギュッと苦しくなる。
逃げ道だらけの質問でさえこれ。
――もっと直接的な言葉を投げかけて断られてしまったとしたら、私、耐えられる自信ないよぅ。
そこまで考えて、柳川は今朝、それをして傷付いて来たんだってハッとした。
そう思ったら無意識に――。
私、扉を押さえたまま距離を取っていた柳川に、真正面からギュッと抱きついてしまっていた。
「……お、おいっ、鳴宮っ、お前っ、何考えて……っ」
途端、今まで黙り込んだまま何も言ってくれなかった柳川が、慌てふためいた声を出して身じろぐの。
それが、私には堪らなく愛しく思えて――。
私は柳川を抱きしめた腕を緩めると、一生懸命背伸びをして手を伸ばすと、彼の頬にそっと触れた。
本当は、いつも研究室で見ているつむじの辺りを優しく撫でてあげたい。
頑張ったね、辛かったね、ってヨシヨシ出来たらって思うのに。
身長差がありすぎて、目一杯手を伸ばしても柳川の頭の天辺に、チビな私の手は届きっこなかったから。
だからね、私、ほっぺで手を打ったの。
「今日はすっごく頑張ったね――」
そこまで言って、私はちょっと考えて「……寛道」って下の名前で柳川のことを呼んでみた。
頑張ったのは、きっと柳川ではなく〝柳川寛道〟という人間だから。
柳川の想い人のあの女の子が、いつも柳川のことを親しげに「寛道」って呼んでいたのを知っていた私は、敢えてそちらを選んで彼を労ったの。
と、途端柳川が、彼に触れていた私の手をギュッと掴むと、壁に縫い止めるように押さえ付けてきて。
「――きゃっ!」
柳川が大きく部屋の中に踏み込んできたことで、彼が押さえていた扉が支えを失ってバタン……と私たちの背後、存外大きな音を立てて閉まる。
私はその音に驚いて、ビクッと身体を震わせた。
柳川の大きな手にギュッと握られて、頭上で壁に固定された手首がじんじんと痛む。
「……やな、が、わ?」
痛みで眉根を微かにしかめながら、空いた方の手で柳川の胸元をそっと押し返しながら恐る恐る呼びかけたら、
「え? ――あ、……んんっ!」
いきなり腰を引かれて、荒々しく唇を塞がれる。そんな事されるなんて思っていなかった私は、驚きに瞳を見開いた。
「ぁ、や、なっ、……が、……っ」
口付けの角度が変えられるたび、喘ぐように柳川に呼びかけてみるけれど、そのたび、まるで何も言わせたくないみたいに舌を絡め取られる。
舌先が擦り合わされるたび、ぬるりとした感触とともにゾクゾクと快感が這い上って来て、私は嫌でも柳川に口の中を侵されているんだと自覚させられてしまうの。
それが、ものすごく恥ずかしくて――。
情けないけれど私、今までキスはおろか異性と付き合ったことさえなかったから。
当然、こんな風に口の中を乱暴にかき回されたり、舐め回されるような行為、経験したことがない。
「あ、や……、お願、待っ、……っ」
何とかしゃべろうと頑張るからか、段々息が苦しくなってきて。
ペシペシと、柳川の胸元についた手で、彼の硬い胸板を叩いてみるけれど、それも徐々に力を失ってきてしまう。
柳川に手首を壁に縫い留められたままだから。そうして腰を抱くようにギュッと引き寄せられているから。
かろうじて座り込まずにいられるけれど、それも時間の問題な気がするくらい足に力が入らないの、どうすればいい?
酸欠で、一瞬意識が飛びかけて、ギュッと握りしめていた右手首や、突っ張るように2人の身体の間に渡されていた左手から力が抜けたことに気が付いた柳川が、やっと休む間もないような激しいキスから私を解放してくれて。
それと同時、咳き込むように慌てて息を吸い込んだ私を、倒れないよう支えてくれた。
そうしながら、柳川がすぐ耳元で聞いたことのないような低い声で問いかけてきたの。
コメント
2件
キス、だとぉぉぉ!?
うわあ、もう胸がぎゅうぎゅうする……!「私じゃダメかな?」って言いたくて言えない主人公の心情が切なすぎて。ほっぺに手を当てて「寛道」って呼ぶシーン、すごく良かったです。あの呼び方で柳川の何かが切れたんだろうな……。キスシーンの熱量にびっくりしつつ、2人の関係がどう転ぶのか続きが気になります!