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薄暗いバーの空気は煙草の香りと汗の匂いで満ちていた。遠くからジャズのように響く銃声が闇を切り裂く。
「なあ、Dir。自慰ってしたことあるか?」
GETの唐突な質問に、俺は思わずウイスキーを吹きそうになった。
周囲がざわつく中、Dirは青い丸ぶちサングラスの奥から静かに答えた。
「ある。ただ、感情は伴わず、生理的な行為だ」
Miriが口元を押さえ、Mentはタオルを巻いた頭をゆっくり振る。
テスタは今日も会議室でロープにぐるぐる巻かれている。
俺は呆れ顔で言った。
「なんでそんなことまで記録してんだよ……」
Dirは冷静に答えた。
「“存在の証明”だ。俺には感情が欠落している。快楽の意味は理解できないが、身体は反応する。だから観察している」
GETは笑いながら、
「俺も割と普通だと思ってたけど、Dirの話聞くと自分のヤバさに気付くな」
「どんなヤバさだ?」
「風呂で鏡見ながらやって、最後に自分の尻をペチンて叩いて“お前、もう帰れよ”って言うんだ」
「それ普通じゃねえだろ!」
俺は呆れて顔をしかめた。
Miriが吹き出した。
「ツッコミを自分でやるとは……」
俺は苦笑いした。
そしてGETがボスの話を切り出す。
「Townはどうなんだ?」
場が一気に静まる。
ボスの話題は重い。
townが静かに言った。
「別に普通にする。ただ量が人より多いだけだ。」
Dirが静かに言った。
「あぁ、それは聞いた」
俺は震えた。
「マジでこの組織どうなってんだよ……」
GETは笑いながら言った。
「俺らはこれが普通。Townだけが異常に“普通”だ」
俺は顔を覆った。
「何やってんだこいつら……」
Dirが静かに切り出した。
「俺がTownの“量”を確認してみる」
GETはニヤリと笑い、Townは無言で頷いた。
二人は黙ってトイレへ向かう。
俺は目を丸くして声を上げた。
「ちょっと待てよ!なんでお前ら二人で個室に入ったんだ?」
GETは涼しい顔で答えた。
「量を確認するなら当然だろ?一人じゃ無理だ」
Dirは黙ったまま手を動かしている。
30分ほどが過ぎ、二人が戻ってきた。
GETは無言で小さな容器をDirに渡す。
Dirはそれを受け取り、静かに記録し始めた。
数分後、Dirが真剣な表情でGETに尋ねた。
「量はどうだった?」
GETは少し困った顔で答えた。
「異常に多い。あれは普通じゃない」
俺は遠くからその光景を見て、再び頭を抱えた。
「何やってんだこいつら……」
Dirの青いサングラス越しの瞳が、一瞬だけ何かを感じたように揺らいだ気がした。
そしてすぐにいつもの無表情に戻る。
「奴は誰かに見られることで、わずかな反応を示す。快楽とは違う“認識”だと奴は思いたいようだが……」
俺は小さく呟いた。
「やっぱりこの組織、普通じゃねえ……」