テラーノベル
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「….っあ、ハナマル、あのね。」
何の日でもない休日だ。今から別邸に行ってお茶を飲もうとかさ、2人で街に出かけようとかさ、あなたには似合わない御茶会議をしようとかさ。そんなことを言うつもりだった。だが
作業をしているのに私を見ているハナマルの視線が感じられ少し汗をかく。喉が水を求める様な乾きを覚えながら言う。
「私さ、死のうと思うの。」
作業中の手をピタリと止め本を閉じ今日の予定確認するようあっけらかんとしており表情は少し焦っているかと思って表情を見たが表情もいつも通りだ。
「そっかそっかぁ、場所とかはもう決めた感じか?」
「…..」
あれ?何か違う。もっとさ、こう、哀しい顔してくれると思ってた。言いたいことが山のようにあったが口や喉奥でぐちゃぐちゃにドロドロに溶けてしまった。あぁなんか、そんな反応されると死のうとしている自分が馬鹿みたいに思えてきた。
「場所は決めてないけど、無難に首吊りかな。」
「無難に…ねぇ。」
ハナマルはゆっくりと近付いてくると座っていた私と目線を合わせる様にしゃがんだ。膝に置いていた拳にに力拳が入る。
「じゃあさ、場所は俺に任せてくんない?今日の風呂入った後迎えに行くからさ。いー子で待っててくれよ?」
そう言ってくれたハナマルはくしゃりと私の白髪を子供の頭を撫でるかのように優しく撫でてくれた。
「ぁ、うん。」
私は何だか拍子抜けになってしまった。これが世界が違う故の対応なのかハナマル個人の対応なのかよく分からない。それが酷く悲しくて胸がきゅっと締まった。
「主様…?」
ボーッとしていた私に声かけるように一つ呟く、彼の名前はテディ・ブラウン。あれからハナマルは急に用があるとの事で担当をテディに変えた。窓を見ると外は真っ黒に潰されており結構時間が経っているのが実感できた。
いつも通りの日だった。ロノが手間暇かけて作ってくれた料理やフルーレやナックが綺麗に洗濯などをしてくれたふかふかのベッドやフェネスが私好みの湯の暑さにしてくれ薔薇の花弁が散ったお風呂。私には全て勿体ないのに。けどそこにいつも隣にいたハナマルが不在だった。たしか、私が自殺したいって言ったからだっけな。
「主様、そろそろ寝る時間ですが、寝れませんか?」
そろそろ寝る時間になり寝れるかどうか聞きに来てくれたテディ。私さ、まだ寝れないんだよね、ハナマルが来て一緒に自殺するから。そんなことを言ってしまえばテディはどんな反応をするのだろうか。ユーハンなどに言ってハナマルを叱ってくれるのだろうか、それとも心配してくれるのだろうか。もしかしたらテディだったら持ち前の明るさで死ぬ気を飛ばしてくれるのかも。
そんなことをぐるぐる考えていると嫌な気持ちになってくる。
私はテディに今日は一人で寝たいから。といいテディを部屋から出した。出て行くさえのテディのあの悲しい顔、少し申し訳なかったな。
昼間のハナマルの顔を思い出すと、ハナマルは泣くどころか止めてすらくれなかった。そもそもあの反応は本気にしてくれているのだろうか。今日、このまま時が過ぎて明日を迎えたらどうする?
そのままじっと部屋の椅子に座っていると突如扉が開いた。
「ハナマル…?」
「しぃー、他の人にバレちゃうからな。」
変わりない様子で部屋に入ってくる。少し違う場所があるといえば左手にロープが巻き付くように持たれていた。
少し昼間に話していたことを本気にしてくれたんだな。と安心感が出てしまった。
「それじゃあ行くか、お姫様。」
そういい白い手袋をしていないもう片方の手を差し伸べてきてくれた。その日見たハナマルは1日の中での一番の王子さまだった。
しばらく歩いてここがどこか分からない。けれどひっそりと抜け出した私達は確かに地に足をつけて草むらを歩いていたのは確かだ。構造物一つもない周りには木しか生えていない自然。しばらくそこを歩いていると1本の太くて大きな木が雲がかった月明かりに照らされていた。
「….こんな場所あったんだね。」
「あったんだよ。」
「ねぇ….ハナマル。」
「どうしたんだ?」
木をゆさゆさ揺らしたりしている背を見ながらハナマルに声をかけ、気になったことを聞いてみる。
「なんで手伝ってくれるの?」
「今更だねぇ、なんでそんなこと聞くんだい?」
「ずるい。質問を質問で返すだなんて。」
「じゃあさ、主様はなんで死んじゃいたいの?」
「私の質問に答えてよ。」
「主様のやりたいことはやらせてあげたいから。」
「そっか。」
「なら今度は俺の質問に答えてくれるか?」
「ふん、教えてあげない。」
「ええ、ずるいなぁ。」
「そういえば、私結び方知らないよ? 」
「そこはお任せあれ。」
ひょいひょいと手早く迷いなくロープを結んでいく様子はどこか手馴れていた。
「….なんで?」
「ん?」
「なんでそんなこと知ってるの?」
「あぁ…」
ハナマルはこのことを聞くと少し声のトーンが低くなりながらロープを結んでいる。その顔が何となく想像できた。
「主様は知らなくていいよ、って言うか知って欲しくない。だな」
私を同じ立場のものとして見ていないような、そこにくっきりはっきり執事と主という立場の壁があるように感じる。
「今更言うのもなんだけど、結構苦しいぞ〜?」
少しちょけたように言うハナマルに対して少しムッと頬が膨れてしまった。
「別に、未練とかないし。」
結局のところ自分の命をかけたってあなたは背中を押してくるだけ。
「まだまだちいせぇガキの癖に、未練なんて意外とあるもんよ。」
「じゃあ…ね。ハナマル、ここまでありがとう。」
屋敷にあった適当な踏み台の上に乗り人生で初めてハナマルを見下ろした。ちらっとロープを見ると首に絡まったり擦れたりしたら痛いだろうなと思う。跡がくっきりと残ってしまうのが目に見えていたが死んでしまう私にはもう関係ない。
ハナマルに視線を戻すと雲に隠れている月明かりがハナマルをうっすらと照らす。ハナマルの表情はいつもと同じでうっすらとした微笑みを浮かべていた。
それがとても悔しい、腹立たしい。
けれど結局私は最後までハナマルに勝てなかったのだ。
「ああ…..。」
自殺する主を送り出すなんてきっとこの世界探したってハナマルしかいないだろう。その微笑みを、それを忘れられないまま地獄で悔しむのだろう。
最後に愛していただの辞めてれだのそう言った言葉はハナマルの口からとうとう出てこなかった。期待していた分けてはないがそれでも何かしら違う。
ロープに手を握り力が篭もる。
「……..あ”っ、」
グッと首が閉まる。自慢じゃないけど首を吊ったのは初めてだから感想としては案外苦しかった。
諦めて静かに逝ってしまいたいと思っているのに生きようとした身体は無意識にジタバタと動いてしまう。
ああ、ハナマルの言う通り私は何も知らない無知な子供だったのだ。
命を軽く扱い、それとして自殺をして地獄に落ちて当然のガキ。
ハナマルの気持ちを確かめたかった。ただの執事に恋した女。
ユーハンがまた一緒にお茶を立ててあげるから一緒にお茶をしようと言ってくれたのを思い出す。
ハウレスと一緒に料理をしようとも誘われたし、次の週にはボスキと一緒にボスキのおばあちゃんの墓参りついて行く予定だったし、テディにも新しい珈琲豆を買ってきたからとまた一緒に飲もうとも誘われたしなどと思い出してしまった。
これが未練ってやつか。と遠くあった意識の中で思う。みんなには申し訳ないことしちゃったなぁ。
ぐるっと風で縄が揺れ見えてしまった。
(…勝った。)
何となくじゃなく絶対に勝ったと思ってしまった。
ねえ、ハナマル。そんな顔、私初めて見たよ。私が苦しそうだからって同情してくれてるの?それとも私が死んじゃうことが今になって嫌になっちゃった?
ああでもそんな顔してくれるなら、首吊りも悪くなかったな。ドクドクと心音だけがデカくなりふんわりと同時に嫌な音が響いた。
ブチブチッと嫌な音が耳に入り体が一瞬だけ中に浮く。ドサッと思っきり尻もちをつく。半分シャットダウンしていた体に走る鋭い痛みが叩き落とされ、生きていると実感する。瞬間に死んでいた肺に空気が入り交じり苦しくなり訳が分からなくなるくらい咳き込んだ。
「げほっ…ぁ、つ”、かはっ、は”ぁーっ、!?!?」
顔をぐちゃぐちゃにししばらく地面をのたうち回っていた。
首が痛い。
手探りで手を持っていけば、ロープはそこにあり、締め付けられた首の肌は酷く赤く凹んで熱を持っていた。
ゆっくり立ち上がろうとすると頭に血が登りカッとなりクラクラし、倒れるように寝転ぶ。
死んでいない。生きているのが怪しいぐらいだったけど生きているのは確かだった。不自然に涙がボタボタと手に着きしゃっくりが上がり空気が空回りしているのがわかる。そんな中徐々に土と草を踏み分ける音が近付いてくる。
「おーい、生きてるか?」
「は、、な、ま、、る….なっ、で….」
私の顔を覗き込むようにハナマルが顔を覗き込む。パチッと目が合いハナマルはそのまま視界以外へ行く。私は体制を起こしハナマルがロープを指でなぞった。
「ロープ、切れちゃったんだな。残念だけど、失敗だな」
ハナマルはふはっ、と自虐的に笑う。
私はそこで全てを悟った。
「うそ、つきだ。」
「……」
「こんなっ、太いの切れ、る訳な、い」
切れる訳ない。私の体重で。こんなに太いロープが切れるはずが無い、それはハナマルもわかっている。
鋭いハナマルは口角を上げたまま私を見つめる。その目は悲しそうな目付きだった。
「ごめんな。」
「初めから、こうするつもり、だったんでしょ、?」
「まぁな、俺が口で言ったって主様聞いてくれないじゃん。」
ハナマルは寝転んでいる私の隣に座ると汗と涙でベタベタに張り付いた髪を流す。
「だからって、ここまでする?普通。」
「そりゃあ、他でもない主様だからな。」
何度繰り返しても彼はきっと殺してくれないだろう。
そんなこと火を見るよりあきらかだった。
「……ハナマル、泣いてる?」
ハナマル顔は影になって少し見えずらい。
けどなんとなく、そんな気がして、聞いてみた。ようやく自由になってきた片手をそっと伸ばそうとすると急に押し倒してきた。
「うわっ、どうしたの?ハナマル。」
「そりゃさぁ….俺がどんな気持ちでロープ結んだりしたと思ってんのよ。」
ポタポタと
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#女主
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