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< pnside >
pn「お客様すみません、もう閉館のお時間でして …」
今日も今日とて角の席に座っている2人組に声をかける。
いつも開館から閉館までここで過ごしている彼らは、館内の隅にあるカフェも常連らしい。
一時期片方の人が病気で来れなくなってからしばらく姿を見なくなったけど、半年くらいしたらまだ来るようになったって。
見た感じ付き合ってるのかな、明らかに友達の距離感出ないような気がする。
「もうそんな時間 !?」
「ほんとだ、気づかなかった」
「いつも声掛けさせてしまってすみません」
pn「いえいえ、またいらしてください」
「ありがとうございます」
「行こっか」
「うん !!」
俺と同じくらいの背の高さの彼氏の方が俺に軽く会釈をした後、彼女の肩を抱いて図書館から出て行った。
どっちも彼氏ではあるか … 。
そんなことどうでもいいのだけど。
本棚の整理や軽く掃除をして俺も図書館を後にした。
こんな大きい図書館で働けていることにいつも驚くのがこの瞬間、図書館から帰る時。
出入口から外へ出ると先程のカップルがゆっくり歩いていた。
もちろん彼氏は車道側を歩いていてしっかり恋人繋ぎをしていた。
彼女も幸せそうに彼氏と話していた。
これを見て“羨ましい”と思ってしまう自分が大嫌いだった。
きっと先生は3年前のあの夜でこの曖昧な関係を終わらせようとしていた。
それでも俺がこんなに恋愛感情を抱いているせいで今も曖昧なまま。
いや、曖昧と言うより俺が一方的に期待しているだけなのだけれど。
ただの医者と患者の関係で傍に入れるだけで良かったのに今はそれじゃ満足できない。
先生が好き。
帰り道、ふと寂しくなる。
この世界で自分だけが1人なような気がして胸が苦しくなる。
酷い時はかなり自分を責めるし追い込んで辛くなる。
この癖だけは3年前から何一つ変わっていない。
もしこの癖が抜けていないことを知ったら、先生は俺になんで声かけるかな。
優しく励ましてくれるかな、それとも何も言わずただ頷いてくれるかな。
頭の中が先生の事でいっぱいで頭痛がする。
どこを見ても先生の笑顔や優しい仕草、表情で溢れている。
もし恋人だったら、こんな時に電話かけても許されるのかな。
寂しいって、会いたい、話したいって言っても違和感がないのかな。
ずっと一人で生きてきたから、先生という優しさに触れてしまったせいで、もう前みたいに戻ることが出来ない。
先生の優しさに包まれたい。触れたい。
でもきっと先生は恋人なんかじゃなくても連絡したら優しくしてくれる。
連絡さえ出来れば、よかったのになぁ ….
でも連絡先なんて聞いてしまえば、俺がまだ好意を抱いているのが全てバレてしまいそう。
pn「先生 …」
夜道で小さく呟いた俺の声は、冬の風にかき消されてしまった。
< rdside >
rd「ッくしゅん ッ ヾ」
rd「あーくしゃみ、風邪ひいたかな」
今日診察した患者の状態を一つ一つ確認しながらまとめていく。
寒がりな俺はひざ掛けを2枚かけてヒーターの温度をあげた。
そういえばぺいんと、かなり疲れてそうだったな …
3年ぶりに出会って、何度か診断の為に彼と会っているものの、結局恋愛の話は一度も出ていない。
あの夜を最後にしなければならないという気持ちが邪魔をしている。
けれどきっと彼も少しそこに気まずさを感じているんじゃないかと思う。
どこか昔のような雰囲気が出来ても、すぐにお互い意識して引いてしまう。
mb「あの … らっだぁさん?」
rd「ん、あぁ、 どうした?」
mb「いえ、少し時間が空いたので」
rd「そっかそっか、ゆっくり休んで」
mb「はい」
mb「…最近来てる子って、何年か前にも来てますか?」
mb「明るい髪色の …」
rd「あーうん、そうだよ」
mb「やっぱり ! 見覚えあると思ったんです」
rd「そっか 笑ヾ」
同僚からそんな話をされて、俺はふと3年前の彼を思い出した。
最初の頃は中々話してくれなかったっけな。
手を骨折しているのに筆談しようとか言って無理させたこともあったし、俺がご飯を食べさせてあげてたな。
昔の彼は思春期真っ只中のような表情をするような子だったな。
でも話す事に少しずつ打ち解けられているのが嬉しかった。
猫のような彼は俺にだけ心を開いてくれていた。
それが嬉しくて堪らなくて彼のことばかり考える日がどれくらいあっただろうか。
彼が屋上へ行った日、俺は血相を変えて彼を探した。
俺がまだ幼いせいで彼の心を傷つけてしまっていた。
もう同じような過ちは犯したくない。
今度こそ、彼の心の渦を取り除いてしっかり社会復帰できるようにさせてあげたい。
そうしたらもう病院に来る必要はないから、会えなくなるけれど。
それでも、きっと彼を助けられるのは俺しかいないから。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡1000 💬1
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