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「203…203…あっここだ…って、開いてる?」
女子寮の自分の部屋と指定された203号室に来たんだけど、なぜか鍵がかけられていなく、中に入れる。
学園に入る時もそうだったけど、なにか入りにくい静けさがあり、一瞬引き返す選択が頭をよぎる時がある。
「あれっ?君は…」「へぇっ!?」
急に後ろから声をかけられ、変な声がでてしまった。
振り向くと、ツインテールの可愛らしい女の子がこちらをキラキラした目で見つめていた。
「君は、もしかして私のニュー・ルームメイト伊桜羽音ちゃんだねっ!」
テンション高めで問いかけてくれてるので、正直どういう対応をすればいいのか分からないが、名前はあっている。
そう、私は伊桜羽音。
来週からこの優希学園に通うことになり、今日からこの女子寮で生活するんだ。
部屋で一緒に過ごすペアがいることは伝えられていたけど、多分この子だよ、ね。(??)
「はじめまして、私、香村有里奈!よろしく〜!!」
強引に手を引かれ、おまけに手をぶんぶん振られ強引に握手。でも、なぜか嫌いにならない。なんといえばいいのか分からないが、なんかいつでも相談にのれそうなノリのいい子。の雰囲気を持っている、気がする。
「有里奈でいいよ!1年間よろしくね!」「は、はい…わかりま_」「敬語いらないっ!」「わ…わかっ、た、…ありな?」「うんっ、それでいいっ!」
最初はすこしぎこちない感じの接し方になったけど、なんとか1年間この子と一緒なら大丈夫そう。
「ちょっと、あーりん!?何してるの!?」
開きっぱなしの部屋の扉の外から顔を出したポニーテールの女の子が視界に入った。
「あ、まーりん!」「しっつれ〜い…って、あれ?誰?」「ちょっ、羽音ちゃんになんて失礼なっ!」
あ、有里奈と知り合いのこの子は物事を率直にいうタイプなのかも。
「まーりんがごめんね、まーりん、この子伊桜羽音ちゃん。うちの新しいルームメイト!来週からうちらと一緒に学園行くんだよ!」「え、そうなの!これは失礼。私、竹内真里花。真里花でいいよ!」
その日は1日ぶっ通しで女子寮と、先生から許可をいただき学園を有里奈と真里花に案内してもらえた。ふつうに優しくて助かった。
「来週から通うの楽しみだな〜!」
そういいつつ、うーんと背伸びをする。
あ、今はもうお風呂も終えて就寝時間が近づく頃。
そうそう浴室もすごかった!お風呂がもうね、ジャグジーくらいの大きさで、最低10人は入るくらい(って有里奈が言ってた)。そしてね、バスボムをの使用を許可されててね〜その日の気分によって好きなバスボムを入れられる、みたいなの!今日はそのままを堪能したかったから、なんにも入れないでって頼んだ。ちなみにバスボムは、それぞれの学年の科学の授業で月に1回作るらしい。ってことは、私も作るってこと!楽しみ!!!
ただ、ちょっと遠いのが気がかり。
「よかった〜優希学園気に入ってもらえて!あと、2年生の教室はさっき案内したけど3階の中心の科学室の左側…だから、左でしょ?だから…」「この学校の位置的に考えたら、東側だね。」「あ、真里花!」
有里奈はツインテを、真里花はポニテをほどいて、2人ともさっきとはまた別のおしゃれな雰囲気を持っている。
「やっほ〜。あのさ、明日なんだけど、私の部屋来ない?羽音ちゃんも一緒に。」「え、いいの?」
真里花の部屋ってなると…205号室だよね?
「ルームメイトさんに迷惑かけちゃうんじゃない?」「ううん。もう許可は取ってある。羽音ちゃん、多分秒で友達になれると思う。」「ほんと!?」「うん。4人でボードゲームやろ。この前冬休みに実家帰省したとき、おもろいのもらったの。」「そうなの!?行く行く!遊ぼー!」
有里奈はすぐに反応して、ノリノリで賛成。
「許可が取れてるなら、いいよ。私も行く!真里花のルームメイトさんにも早く会ってみたい!」
私も、有里奈ほとではないけど、ワクワクをこめて賛成した。会ってから1日しか経ってないのにボードゲームにまぜてくれる2人がマジで神様すぎだと感じた。
「オッケー!じゃ、おやすみなさい!また明日!」「「おやすみ〜」」
一応有里奈にもおやすみを言ってふとんに入り、あとは消灯時間を待機するのみ。
あ、消灯時間って言ってもね、就寝時間に細かい設定とかはなくって、夜9時になったら寮の廊下以外の電気を消すってかんじで、で、なるべく夜11時までには寝るようにっていうルールはあるんだけど、特に「何時に寝ろ」とかそういうのはないみたい。優しい。(べつに私が夜ふかしするわけでもないけど)
翌日。
私は、朝早くに目覚めた。
あの人のことが頭に入ったからだ。
それは、昨日出会った今年3年生の安藤和也さん。
おもーい私の荷物を持つのを手伝ってくれて、女子寮まで案内もしてくれた優しい先輩。
後悔したくなくって、名字しか言えてなかったけど、最後に呼び止めて下の名前も言ったのは、すごくスッキリしたし、晴れやかな気持ちになれた。
印象に残った彼と出会ったのも朝だ。
もしかしたら、今日も庭に出ているのかもしれない。
一応庭への出入りは無許可でもオッケーらしいので、有里奈に置き手紙を書いて庭へ出た。(ちなみに有里奈は爆睡中で、真里花も多分まだ寝ていたと思う。)
朝のすずしい風と、小鳥のかわいらしいさえずりで、完全に目を覚ました。
女子寮の敷地を出て、庭に行っても、安藤さんはいなかった。
勝手に考え込んで庭に出た私が、逆にバカだったのかもしれない。
……ちょっと反省。
よし、帰ろう。
「伊桜さん?」
聞き覚えのある声が、私を呼びとめた。
振り返ると、安藤さんだった。
すこし生ぬるい風が、私と安藤さんの間を通っていった。