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「ただいま帰りました。お父様、お母様お元気そうで何よりです。マラリとベルンはいい子にしていましたか?」
「うん!ぼく、いっぱいおべんきょうしたんだ!」
弟のベルン。無邪気で明るくて、マラリとは大違い。…比べちゃだめだ。むなしくなる。
「えぇ、お帰りミラル。学校はどう?楽しい?」
女性にしては低めの声で母、カリージュがたずねる。
「はい、お母様。学年で2位をキープしています。なかなか1位にはなれなくて..」
「いいのよ、あなたは十分頑張ってるわ。自信を持って」
「ありがとうごさいます」
一瞬ざまぁと思った。いつも優秀で一番だった兄が1位にはなれないといったのだ。こんなに嬉しいことはあるか?いや、ない。これほど喜びを感じたのはいつぶりだろう!
なぜ自分がこんなことを思うのかわからない、いや納得したくない。答えは出ている。でもその答えを受け止められない。受け入れたくない。そう思ってしまう。こんなことを考えたくもないのに、
「マラリはどうでしたか?俺が不在の間、何か心配なことは起こりませんでしたか?」
「大丈夫です。心配要りません。兄上もせっかくの長期休み楽しく過ごされてはいかがですか?」
「ありがとう。心配には及びません。休みの間この家にいるが気にしないで過ごしてくださいね」
「そういわれるのなら、ありがたく」
急に話しかけてこないでほしい、いくらなんでもびっくりする。それにしてもきれいな顔立ちだ。白く絹のような髪、白9、緑1できているのではないかと疑うほど白い目と、少し健康的に焼けたはだが唯一の色だ。こんなにもマラリとすべてが反対なのは、逆に面白い。
「あなたも何か言ったら?」
母が父にうながす。
「…無事でよかった」
地面が揺れそうなほど低い声が僕の鼓膜を揺さぶる。どこか怖くて、心地いい音….。
「ありがとうごさいます、私もお父様がおかわりないようで安心しました。」
父は人と話すのが恥ずかしいらしく、あまり声を聞いたことがない。でもすてきな声だった。
気づけばもう部屋に戻っており寝る準備も整ってある。
「坊っちゃん、おやすみなさい」
「なぁ、ルリ、お前は僕が好きか?」
言ってしまった、言うつもりはなかったのに。
「まって今のはう「好きですよ」
えっ、」
「好きですよ坊っちゃん、愛しています」
深い栗色の髪に隠れた、青の瞳が僕を、マラリを貫く。迷いのないその目で。
「よかった」
おやすみ、その単語と僕を残してルリは部屋を出ていった。やっぱりあいつは気が使える。もしかしたらマラリを救ってくるくれるかもしれない。
「んなわけないだろ、」
僕ではない僕が呟く。