テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日は待ちに待った、一泊二日の林間学校です。
目的は出会ったばかりの私たちの、交流を深めるため。
大自然の中で様々なことに挑戦し、共に時間を過ごす。
バスに揺られて一時間。
視界いっぱいの木々が、私たちを迎えた。
「着いたね!飯田くんよく寝れた?」
目をこすりながらバスを降りてきた飯田くんに声を掛ける。
「浅田さんの隣に座ってたと思ったんだけど、起きたら隣が翼くんになってて驚いたよ。」
寝起きの少しかすれた声で、飯田くんはそう言った。
飯田くんの言う通り、私たちはもともと並んで座っていたのだが、寝かけている飯田くんを発見した翼が、わざわざ席を変わってくれたのだ。
「ふふふ、でもよく寝れたでしょ!」
私がそう言うと、飯田くんは目を細めて返した。
「翼くんのおかげでよく眠れたよ。 」
「うん、!」
今の不思議な感じはなんだったのか、翼の様子を伺う。
「…。」
目は合わなかった。
一方その頃。
「ねーねー、翼といいんちょー、分かりやすい戦い方してくれるね。」
「バスのはさすがに面白かった!翼の顔がすごかったもんね!」
結とさらはこっそり騒いでいた。
「んでもって、どうして花織はあんな鈍感なんだ?」
そんな二人に割って入るように風雅が会話に参加する。
「仕方ないよ、花織今までそういうのと無縁だったんだもん。」
「中学女子校だったらしいしね!」
「ふーん。」
風雅は静かに花織を見た。
「風雅これ持ってー。」
結が自分のリュックサックを押し付ける。
「え、結だけずるいよ!」
押し付けられたリュックサックと、さらの背負っているのを無言で受け取る風雅。
「風雅ありがとー。」
「ありがーと!」
「…ん。」
私はまだ、この三人の複雑な関係を知らなかった。
『バスの隣の席はもらった!!』
そう歓喜していた。
翼くんと君の間にわざわざ割り込んで、ここまで来たのだ。
多少なにか起こってくれなくては困る。
ただ、君は思ったより静かに過ごすし、かと言って寝落ちるわけでもないし…。
『これは僕が動くしかない…!』
寝たふりすることを決心したものの、すぐに翼くんに勘づかれた。
おまけに席を交代してくる始末だ。
『こうなったらちゃんと寝てやる…。』
そうして気がつけば、目的地に着いていた。
悔し紛れに、翼くんに毒を吐く。
『邪魔しないでほしい…僕だけのものにしたいのに。』
君から話しかけてくれるのが、幸運だったと思う。
まだ僕らの林間学校は始まったばかり。
静かに計画を始動させていく。