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昼休みのチャイムが鳴っても、教室はいつもよりざわついていた。
柚月は席で静かに弁当を広げようとしていたが、数人が机を囲む気配を感じた瞬間、それをそっとカバンにしまった。
詩乃「……屋上、行こ」
小さく呟いて席を立つ。
その背中を、詩乃は見てしまった。
偶然ではない。
見ようとして、見てしまった。
佳奈に「購買行こ!」と袖を引かれたけれど、詩乃は軽く「後で」とだけ言って席を立つ。
柚月のあとを追うのは、理由なんて要らなかった。
屋上の扉を開けると、風と一緒に甘い香りが流れた。
柚月の髪だった。
誰もいない屋上で膝を抱えて、少し泣きそうな顔をしている。
でもそれを見られまいと、ぎこちなく笑う。
柚月「あ、千歳さん……どうしたの?」
詩乃「こっちの台詞。昼、食べてないでしょ」
柚月は誤魔化そうとする。でも表情が全部語っていた。
詩乃は何も聞かず、柚月の隣に座る。
しばらく沈黙。
だけど風の音だけの静かな沈黙だった。
柚月「……千歳さんって、優しい人だね」
詩乃「優しくなんかないよ。ほっとけなかっただけ」
柚月「それを優しいって言うんだよ」
くすっと微笑んだ柚月の横顔は、昨日よりずっと柔らかかった。
その笑顔が見えたことだけで胸が熱くなる。
詩乃「……後でうるさいやつ来るかもだけど一緒に食べる?」
柚月「えっと…いいの?ありがとう。もしかしてなんだけどうるさい子って佳奈ちゃん?」
詩乃「まぁうん。大丈夫?」
柚月「佳奈ちゃんとは幼馴染だよー!」
詩乃「まじか」
屋上の扉がバン!!と開き、うるさいやつが頭をぴょこっとだした
佳奈が購買から帰ってきたようだ
佳奈「うへぇーまじ購買って戦場!ってゆずじゃん!!!」
柚月「佳奈ちゃん久しぶり!一緒に昼ごはん食べていいかな?」
佳奈「もちのろーん!一緒に食べよぜ!」
詩乃「ほんとに仲良かったんだ…」
柚月と詩乃はお弁当。柚月はthe女の子という可愛いお弁当で、詩乃のお弁当は
質素で健康的。佳奈は購買でパンを買って来ていた
佳奈「うーん!メロン味のあんぱん美味しーい!!」
詩乃「何その変な味のあんぱん…」
柚月「珍しいねぇ」
3人とも食べ終わり、教室に戻る
5時間目を始める鐘が鳴り、国語が始まった
国語の先生はおじいちゃん先生で、話し声でとても眠くなる
ふと柚月見る
詩乃(ちゃんと聞いてて偉いな)
無意識に柚月を凝視してしまい、思わず顔を逸らす
佳奈はもう爆睡で、詩乃は少し面白かったそうだ
5時間目が終わり、詩乃はグイッと背伸びする
今日は先生達全員で会議するらしく、五時間授業
佳奈「まじ5時間授業サイコー!」
佳奈がまた大きな声で近寄ってくる
帰りの準備をし、カバンを持つと佳奈が「待って!部活の顧問に呼ばれてるんだった!
ちょっとだけ待ってて」と走って職員室に行ってしまった。
下駄箱で待っていると、男子達の話し声が聞こえてきた。
竹本「なぁなぁ、1組の来栖 柚月いるじゃん」
桜木「あぁ俺の隣の巨乳の奴だろ?俺今日触ったぜ」
竹本「えっぐおまえ!なんも言われなかったのかよ」
桜木「あいつ見かけによらず大人しいから大丈夫だったぜ」
竹本「まじか…」
竹本「あの子彼女にしたら最高じゃね?」
桜木「確かに 」
詩乃は1発殴ってやろうかなと思うほどの不快感を覚えた
柚月は断れない性格だし、全て私が悪いと飲み込んでしまう
詩乃は気持ち悪い想像をしてしまった。
佳奈「しのーー!!終わった!帰ろぜ!」
詩乃「…うん」
佳奈「なに?どしたんなんかあった?」
詩乃「柚月が気になるって言う男子がさっき」
佳奈「あーー、柚月めちゃ男子からモテるもんね〜。
ふわふわ髪に超可愛い顔!巨乳だし明るくてとにかく可愛い!し」
詩乃「ふーん…」
詩乃は家に帰るとベッドに倒れ込む
柚月のことばかり考えてしまって、何も手につかない
詩乃は一人暮らしで、親は近くに住んでいてよくだる絡みしにくる
今日は親がおらずシーンとしていて、もっと柚月のことを考えてしまう
詩乃「…はぁ課題でもしよ」
―――翌日
3時間目が始まる鐘が鳴る
雨が降っていて、ジメジメして気持ち悪い
でも詩乃は雨が降っている窓を見るのは好き
今日はずっと雨が続くようで傘必須
先生「それじゃぁ来栖さん、29ページを読んでください」
柚月「はい!えっと…」
今日の柚月の髪は雨の湿気でもっとふわふわになっていて詩乃は可愛いと無意識に見つめる
クリーム色に輪っかのついた可愛い髪型。側面には三つ編みがしており
毎朝あの髪型をしている柚月を詩乃は想像した
詩乃「可愛い……」
雨のおかげで無意識にこぼれた言葉を聞かれることはなかった。
4時間目も終わり昼休み
今日は雨で屋上が使えない、しかも佳奈は顧問に呼ばれていて居ない
詩乃は人が多いのが苦手、お弁当は旧校舎で食べることにした
詩乃「…」
詩乃は柚月を探す、昨日のこともありできるだけ一緒に居たい
嫌な予感がした詩乃はお弁当を教室に置いたまま、旧校舎に向かった。
仁子「あんたうちらのことバラしてないよね?」
美咲「最近また調子乗っててまじうざーい」
柚月「乗ってないよ……」
蘭々「私が竹本のこと好きなの知ってるよね??なんなのほんと」
柚月「……」
詩乃は廊下からそう言う話し声が響いてきて
急いで奥の教室のドアを 大きな音を立てて開けた。
柚月「…あ、え。千歳さ…ん?」
美咲「やば」
詩乃「何してんの」
仁子「いや、ちょっとからかってただけだし」
詩乃「ふーん…」
蘭々「…まじウザ、行こ」
仁子達はグチグチと何かを言いながら不貞腐れたように出ていった。
柚月も柚月のお弁当もぐちゃぐちゃになっており、詩乃は余計腹が立った
だが、少し経つと詩乃も落ち着いてきて、これは柚月の問題だし手を出すのもなと思っていたのに
無意識にしてしまったことを少し反省する。
柚月「千歳さん…えあ」
詩乃「大丈夫?来栖さん」
柚月「ご、ごめんね変なことに巻き込んじゃったかも……!」
詩乃「私は大丈夫だよ、来栖さんが大丈夫なら」
柚月「あ、ありがとう…」
蹲っている柚月に詩乃はポケットから薄い水色のハンカチを取りだし、柚月の涙を拭い
柚月の頭を撫でた。
詩乃「なにかあったら頼って。佳奈にも私にも」
柚月「…」
柚月はまた涙を流し、にこりと微笑み、詩乃に抱きついて
肩を震わせ、ぐすぐすと泣いた
詩乃はその間柚月の背中をさすりながら、無意識に抱き返していた
詩乃は人と関わるのがあまり好きじゃなく、自ら関わろうとすることなんて
一度も無かったはずなのに、柚月には何故か関わりに行ってしまう
そんな気持ちに詩乃が気づくのはまだ先の話。
柚月が落ち着き始め、パッと明るくなる
すると、柚月はお弁当を片付けはじめたそれを詩乃も手伝い
あっという間に片付いたがお昼を食べる時間も無く
そもそも5時間の授業も後半ぐらいの時間になっていた
柚月「今からでも授業…あえっと」
詩乃「まったく、君は…傷の手当が先じゃない?」
柚月「うぅ…」
また二人で保健室へ向かう、会話はしていないけど気まづくなく
何故か2人とも安心していた
詩乃「東雲先生〜失礼しまーす」
保健室はシンとしている、そこには東雲先生の姿は無く
代わりに置き手紙があった
東雲「先生は出張で6時間目後半に帰ってきます!ごめんよ!」
丸く柔らかい字でそう書かれていて、詩乃はため息をし
まず、柚月を椅子に座らせ棚から包帯を取り出す
柚月「千歳さんよく場所がわかるね」
詩乃「まぁ保健委員だし、常連だからねここの」
柚月の足に消毒をかけると、柚月はぴくりと動いて
それが少しいけないことをしてるようで詩乃は少し赤くなった
詩乃「はい、終わり手当できたよ」
柚月「ありがとう!千歳さん」
5時間目が終わる鐘と共に一緒に教室に戻った
教室に戻ると、少し距離を感じて詩乃は変な気持ちになった
佳奈「えー詩乃またサボりー?」
詩乃「今回は違う」
佳奈「えー珍し!てか5時間目授業の次の日の6時間目授業程辛いものは無いわ」
詩乃「まぁね」
無意識に柚月を見る。
柚月は休み時間ぼっちというわけではない、いつも男子達に囲まれている
女子とはあまり喋っているところは見かけない
まぁ柚月に嫉妬してるだけなんだろうけど、あまり良くない視線を柚月に向けている
佳奈「ゆずの事見すぎじゃなーいかい君」
詩乃「…そんなことない」
佳奈「えー佳奈様の目は誤魔化せないよ〜?」
詩乃「だまって」
6時間目授業も終わり、いつものように帰りの準備をする
佳奈と家が近く、いつも一緒に帰っている
佳奈「しの〜!帰るぞーん」
詩乃「わかったから」
雨が酷く、うるさい佳奈の声も少し聞こえない
佳奈と別れ、早足で家へかえる
鍵を開け、傘をたたみ家に入る
詩乃「疲れた… 」
詩乃は濡れたカバンを拭きながら、また柚月のことを考える
詩乃は自分がおかしくなったのだと、頭を抱える
これまでの人生で味わったことの無い感情や想いに困惑しているのだ
詩乃「もう寝よ……」
そういい、詩乃は少しの眠りについた