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「僕はね……」
_僕はね、小さい頃から皆におかしいと言われていた。僕が何かを作っても、皆の反応は薄いもので。それから色々あって、ショーに出会った。でも、僕のショーの内容はおかしいと言われて。それから僕に寄り付く人は居なくなって、いつしか独りになっていた。……だから僕は皆から離れた場所に住んでいるのさ。
この言葉を、しっかりとオレの目を見ながら話してくれた。時折思い出すように上や下を向くことがあっても、それ以外はずっとオレの目を見ながら真剣に話してくれていた。おかしいと言われても尚、続けられたのは凄いことなのじゃないかとオレは思う。離れた場所に住んでいるのは皆が彼の事をおかしいと思うから。寄り付く人が居なくなったのなら、自分から離れる必要はあるのだろうか?どこか引っ掛かる。少しの違和感が残る。
「………君は、誰かに頼まれてここに来たのかい?」
「えっ……」
” 頼まれてここに来た “ なんて一言も言っていないのに、どうしてそう思った?もしかして過去に一度似たような事があったりでもしたのだろうか。
彼の問いにすぐ答えられない……ということは、それはもう頼まれてきたという事実を自分から表しているのと同じだ。つまり、答えないのが最大の答えだ。それに気づいてしまえば苦笑いを浮かべることしかできなかった。……頼まれて来たと分かれば、彼はどうするだろうか。 ” 帰ってくれ “ と言うのだろうか。でも彼の口から出たのは、それとは異なる言葉だった。
「……離れて暮らす僕をどうにかしたいんだろう、きっとね」
眉をハの字にしながら言う彼に、オレは驚いた。どうしてそこまで分かるのだろう?確かに依頼された内容はそうだったのだ。 ” 離れて暮らすあの人の所へ行って欲しい “ と。過去に一度、同じ体験をしたのかもしれない。そこまで分かるのなら、依頼した人も大体検討が付いているのではないかもしれないとオレは思った。
「………前もやってきて頑張ろうとしていたけれど、どうすることも出来ないまま終わったのに」
彼がその言葉を放った瞬間、空気が冷たくなった。身体が寒さで震えた。でも、彼の言葉で確信できる。前と同じことが起きいるからここまで分かるのだと。……そういえば、段々と顔から笑顔が無くなってきている気がする。面白くなさそうにしている。どうせ無理なのだから諦めてほしいとでも思っているのだろうか。
「………まあいいさ。どうせ無理だろうけど、どんなふうに僕を説得させるのかな?楽しみだね……」
また空気が冷たくなる。口は笑っているけど、目が一つも笑っていない。少し不気味に思えて、身体が震えた。……でもオレはこの人を ” どうにかしたい “ と思った。独りで居るよりも ” 仲間 “ と居る方が楽しいから。教えてあげたい。いや、それよりもまずは助けたい。受け入れてくれる人も居ることを。彼を助けようとしてくれる人は、きっと彼を受け止めてくれた人なんだろう。でも、この人はその人に対して少し酷い態度を取っているような気がする。だけどそんなことをする人だとは思えないとなぜか感じた。今日、初めて会ったばかりだが、この人は……優しい人なんだと思う。だからオレは助けたいと心に決めた。