テラーノベル
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「チェックアウトお願いします」
ホテルから出て、関西国際空港を目指す。
「まずは…アメリカから」
とにかく国外へ行くことを優先する。
駅に戻り、特急を探して切符を買う。
「…」
特急までかなり時間がある。
「…今のうちに、日本を目に、焼き付けとかないと」
私は残っている1時間を、少しだけ観光することにした。
大阪。
ずっと憧れていた。
周りの人は関西弁を使って話している。
女性二人組がこちらに来る。
「さっきの店員さんめっちゃイケメンやったな?」
「連絡先くらい聞いてくれば良かったやんけ〜」
(…可愛い、私も方言があるところに生まれたかった)
じーっと見ていると、女性2人が私に気づいた。
「ん?可愛いなぁ、観光か?」
「オススメの店教えたろか?」
「あっ…えっと」
「ん?」
「おっ、お昼ご飯は、どこで食べるのがいいですかっ…」
「あぁ、お昼まだやってんなぁ」
「ウチらと来ぃや、ご飯連れてったる!」
「あっ、ありがとうございます!」
女性2人が駅に近いオシャレなお店に連れていってくれるようだ。
「あの…すみません。こんなことお願いしちゃって…」
「いやいいんよ、どーせウチらこのあと仕事サボる予定やったから」
「暇も潰れるし、可愛い子にご飯食べさせられるし、一石二鳥やんか 」
「…!ふふっ…」
(嬉しいっ…優しいな…)
そのお店に着き、テーブルにつく。
「あぁ〜…ほんまに…最近暑いな」
「ジャージ上下きっちり着とるけど、暑くないんか?」
確かに夏の日差しと湿度で汗をかいていた。
「そうですね…上だけ脱ごうかな」
私はジャージの上だけを脱いで、リュックに詰める。
「ところで、なんて呼んだらいい?」
女性のうち1人が聞いてきた。
(本名を言うのは…正直、気が引ける)
私は逃亡の身であるため、本名を言うことに躊躇した。
「か、かずはです!」
「ふぅん、カズハちゃんって言うんやね」
「ウチ、マユミ!」
「ウチはミサト」
マユミさんは少しふくよかで、笑顔が印象的な人だ。
ミサトさんはモデルさんみたいなスタイルで、髪は茶髪に染めている。
「あのっ…ほんとにありがとうございます」
「ええんやって〜」
「メニュー決めちゃい」
「はいっ…」
フレンチトーストや、エピピラフなど、洋食が中心でどれも値段が高かった。
「ウチ、パスタにしよかな」
「ええやん、ウチフルーツサンド」
「えっと…私はフレンチトーストで!」
「決まりやな」
呼び出しボタンをミサトさんが押す。
「ご注文お伺いします」
「パスタ1つとフルーツサンド1つとフレンチトーストトースト1つお願いします。」
「かしこまりました」
可愛い制服を着た店員さんが厨房に行く。
「16歳くらいか?」
「いやぁ…もっと若いんちゃう?」
「アホか、中学生以下の子供を一人で観光させるような親どこにおんねん」
2人が議論し合う。
「えっと…16歳です」
「やっぱりそうやんな?」
「若いってええなぁ〜、ぴちぴちしとる」
「失礼かもしれませんが…お2人は何歳なんですか?」
「ウチらは28よ」
「もうアラサー間近!」
マユミさんが悔しそうに言う。
「でも…大人って憧れます」
「そうか?仕事は大変やし、自分のこと自分でせなあかんよ。まぁ…親だけは唯一味方してくれるけどなぁ」
マユミさんが笑顔で話す。
(…そっか…子供にとって唯一の味方って、親だもんね…)
私は自分の親の異常さを改めて認識して少し落ち込んだ。
ミサトさんが水を1口飲んだあと、呟くように話した。
「…まぁ、ウチは味方になってくれる親もいないんやけどね」
「ミサト〜、あんたこの子の前でそんな話する?」
「カズハちゃん聞いてくれるか?」
「はいっ、もちろんです」
「ウチな、産まれてすぐ親死んだんよ」
「!」
「交通事故でな。ほんですぐ、母方のじいちゃんばあちゃんのところいってん。」
「せやったな」
マユミさんも真剣に聞く。
「ばあちゃんとじいちゃんはもちろん好きやで?でもなぁ、やっぱあるんよ、なんか、寂しいって言うんかな。友達は皆親がいるのに、ウチにはいないから」
「………」
「オヤノアイ、とか、全然わからへんのよ。じいちゃんもばあちゃんも愛してくれたけど、ウチにはただその1つが足りんかった…」
ミサトさんが下を向く。
「…ウチ、18でグレてじいちゃんとばあちゃんに黙って家出てん。でもそれも今は後悔しとる。ほんで、大阪の風俗で働いて…何とか生きてるって感じなんよ」
ミサトさんが切なく笑いながら私に言う。
「カズハちゃん、後悔のない人生送りや」
「ミサト…」
「…ミサトさん、話してくれてありがとうございます」
「ええんやで、むしろこんな女の話聞いてくれてありがとぉやわ」
「…おじい様と、おばあ様と、話してみてはどうでしょうか」
「ん?」
「怒ってなんて、いないと思うんです。18まで親の代わりで大切に育てた可愛い孫が、勝手に出て行ったとしても、とにかく心配してると思うんです…」
「……」
「ごめんなさい、口を出してしまって…」
「ぐすっ…」
「ミサト…?」
マユミさんがミサトさんの顔を覗き込む。
「なんや!?ミサト、めちゃくちゃ泣いとるがな?」
「ぐすっ…うぅっ…」
「ごめんなさい…不快な気持ちにさせてしまって…」
「っ…ちゃうねんっ…」
「…?」
「ウチっ…ずっと…不安やってん…こんな孫がっ…今更じいちゃんっ…ばあちゃんって…呼んでええんかって…」
ミサトさんが涙を零しながら、声を震わせながら一生懸命言葉にする。
「ほんまはもうっ…じいちゃんばあちゃんんとこっ…帰りたいんよっ…」
「ミサト…涙ふき、メイク崩れるで」
マユミさんがハンカチを差し出し、涙を拭く。
「…カズハちゃん、ウチ、じいちゃんばあちゃんと話してみるわ」
「!」
「おぉ〜ウチもなんか嬉しいわ、カズハちゃんありがとぉなぁ。ミサトずっとそれで落ち込んでてん。ウチ高校からの友達なんやけど、18なってからずっと暗くてな」
マユミさんが嬉しそうに言う。
「やぁ…良かったで、ミサト、ウチも着いてく」
「!」
「ウチはいつでもあんたについてるから、二人で頑張ろや」
「…ありがと…マユミ」
「よかったです、マユミさんが決心できて」
「ほんまに…ありがとぉなぁ、カズハちゃん」
「お待たせ致しました、以上でよろしかったですか?」
「はい」
「ごゆっくりどうぞ〜」
「じゃあ!食べよか!」
私達は手を合わせて、3人でいただきますと言った。
フレンチトースト。
今まで食べたことがない。
噛んだ瞬間にジュワッと甘みが広がった。
「カズハちゃん、美味いか?」
私は上下に首を強く振った。
「いい食べっぷりやで、見てて幸せなるわ」
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「ごちそうさまでした!」
「美味かったなぁ」
私は時計を見る。
もう特急に乗る時間だ。
「カズハちゃんもう行くか?」
「はいっ…もう時間です」
「残念やなぁ、寂しいわ」
「私も…寂しいです」
「気ぃつけて旅するんやで」
「ウチら応援してるから!」
「ありがとうございます!」
私は深く頭を下げた。
「さ!急ぎなんやろ、ウチらでお会計しとくから、もう行き!」
「えっ…でも」
「あのフレンチトースト食べた時の幸せな顔だけで充分すぎるくらい感謝伝わっとるよ。」
「!」
「気ぃつけてや!」
「さようならっ…!!」
私はお店をあとにし、駅に急いで向かった。
改札を通り、特急に乗り込む。
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「…ついに」
もう目と鼻の先に、関西国際空港が見える。
毒親から、日本から、私はついに逃げる。
福田 美玲。十六歳。
アメリカへ行きます。
コメント
1件
**みぅ🤍🥀:** 逃亡の途中、偶然出会ったマユミさんとミサトさんの優しさが、すごく沁みました…。ミサトさんが自分の過去を打ち明けて、カズハちゃんの言葉で「帰りたい」って泣いたシーン、胸がギュッと詰まりました。フレンチトーストの "幸せな顔" だけで充分って言われたの、読んでてじんわり温かくなりました🥺 カズハちゃん、アメリカへ向かう決意…次が気になります!
といれっとぺーぱー
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まろ(死んでも愛してね❤️)
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#アンプタックりすなー様と繋がりたい