テラーノベル
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「敵襲か!?」
「若武、静かに」
上杉君が即座に止める。
資料室の空気がぴんと張る。
私までなんか緊張してきた。
「俺、開ける」
黒木君が静かに立ち上がった。
「え、大丈夫……?」
「大丈夫」
軽く言うけど、 みんな普通に警戒してる。
黒木君が扉に近づく。
そして。
ガラ。
ゆっくり扉を開けた。
「……あ」
そこにいたのは、 女子だった。
私より上の学年。たぶん。
肩くらいの長さの髪に、 少しきつそうな目。
でも今は、かなり焦った顔をしていた。
「あっ……その……」
女子は黒木君を見た瞬間、 固まった。
わかる。
近距離の黒木君、 破壊力すごいから。
「どうした?」
黒木君が聞く。
「えっと……資料室、使いたくて……」
声が少し震えてる。
その時。
女子の視線が、 私に止まった。
一瞬だけ。
空気が変わった、気がした。
「……」
なんだろう。
今、 すごく見られた。
「今ちょっと人多いから、あとでもいい?」
黒木君がやわらかく言う。
「あ……はい」
女子は小さくうなずいた。
でも。
帰る前。
もう1回だけ、 こっちを見た。
今度ははっきり。
私を。
ぞわっとした。
扉が閉まる。
しばらく沈黙。
「……怖」
美門君が先に言った。
「アーヤ見てたね」
「や、やっぱり……!?」
「うん。結構」
うわあ。
「立花」
上杉君が言う。
「知り合い?」
「えっ、いや……たぶん違う」
「“たぶん”?」
「見たことある気はするんですけど……」
秀明ゼミナールは人数が多い。
同じ校舎ですれ違うだけなら普通にある。
でも。
なんか引っかかる。
「水の匂いした」
美門君がそっと言った。
「え?」
「さっきの人」
全員が美門君を見る。
「美門、それ本当?」
小塚君が聞く。
美門君は静かにうなずいた。
「雨じゃない」
「じゃあ……」
黒木君が小さくつぶやく。
その瞬間。
上杉君が立ち上がった。
「資料室」
「え?」
「ここ、水場近い」
言われて気づく。
たしかに、 廊下の奥に給湯スペースがある。
「答案を濡らしたあと、 ここに来た可能性がある」
「つまり!!」
若武君が叫ぶ。
「今の女子が犯人――」
「ショート男」
上杉君が言う。
その瞬間、私はポカンとしてしまった。
美門君に助けを求める。
けど。
「アーヤ、国語は得意でしょ。テスト、上位だったじゃん。」
猫アレルギー
111
158
まあ
68
かえ
311
う。そうなんだけどね。
やってみるかあ。
『ショート男』はショート、と男に分けられると思う。
ショートっていうのは主に5つ意味がある。
1つ目は、短いってこと。これが一番よくつかわれる。
2つ目は、野球のポジション。
3つ目は、電気で、豆電球とか通らずに電気が通っちゃうこと。
4つ目は、不足してることとか短絡的って意味。
5つ目は、金融とかでの空売りのこと。
この状況からすると、たぶん4つ目。
で、男は〈~なひと〉っていう意味だと思う。
あ、上杉君が言いたいのは、単純で短絡的な人ってことか!
私は上杉君の方を見て、ニッコリした。
「わかった」
ところが、思ってた反応と違ったんだ。
上杉君は、ため息をついた。
「メッチャ遅ぇ。」
あれ、けっこう早かったと思ったんだけど……。
それを見てみんなが爆笑してる。
若武君は、ムクれてる。
あ、若武って呼んだ方がしっくりくるかも。
そうしようっと!
ひとしきり笑ったところで。
「……アーヤ」
黒木君がこっちを見る。
「さっき、“見たことある”って言ったよね」
「う、うん」
「どこで見たか思い出せそう?」
私は少し考える。
肩くらいの髪。
きつめの目。
それから――。
「あ」
「?」
「サッカー、見てた。」
「え?」
「この前の練習試合。ずっと見てた。」
思い出した。
あの女子。
グラウンドの外から、 ずっと黒木君たちを見ていた。
コメント
1件
まあさん、第5話読ませていただきました! 資料室に現れたあの女子、最後の「サッカー見てた」でゾッとしました…。水の匂いも含めて、ただの偶然じゃなさそうですよね。それと、上杉さんに「メッチャ遅ぇ」って言われちゃう主人公の空気感、めっちゃ好きです(笑)。若武呼びが自然に定着したのもほっこりしました。続きが気になります!