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練習用 単発小説 後半
「本の虫より永遠を語って」
蛍…図書館館長
召蜻…蛍の助手(?)
※注意 台詞多め
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これは僕、「ホタル」の物語。
僕はずっと物語が好きだった。現実にはあり得ない世界はいつも僕をときめかせた。
魔法も、ドラゴンも。物語にはどんなモノがあったって、どんなコトが起きたって、一つのドラマになる。
想像した物語はなんだって楽しかった。幼少期からずっとさ。ずっと、ずっと。
でも、周りはそんな僕を気味悪がった。一人で喋ってなにしてるの?そんなものあるわけないでしょ?一体何が見えてるの?
…僕が作った宝の地図も、段ボールの宇宙船も時には壊されたりもした。
けどね、本は唯一僕の味方でいてくれたんだ。この設定いいな!この表現面白いな!ってどんどん好きを見つけて、どんどん沼っていく。
主人公にも悪役にも、平凡な村娘だって、見習い魔法少年だって、何にでもなれる。
ところが…いつからだったっけな…。ナニカになるたび、「ホタル」が分からなくなっていった。
僕は男の子?女の子?学生?社会人?物語以外の趣味ってなんだっけ? というか…
僕の名前って…?
だから僕はより一層物語に固執する。
それが幻か、現実か分からなくなるほどの
素敵なモノガタリに。
ある日、どこかの屋上から空を飛ぼうとした。
あの時の僕は天使だった。だから、空を飛べると信じてたんだ。綺麗な純白の羽が生えてるって、このオレンジの空を泳げるってね。
でも空へ足を踏み出したとき、
僕は落ちてしまった。
羽なんて生えていなかった。
天使なんかじゃなかった。
でもそれが、図書館の世界に閉じ込もるには良い刺激となったらしい。
色んな設定を作ったよ。僕は「蛍」って言うんだ。この図書館の館長で、成人男性。場所は日本の秋で…、あとは…
空想の友達の召蜻。
「キミの理論は正しいよ。僕の現実の物語は今もずっと続いているんだろ?」
『…』
「現実の物語の僕は今頃、病院にでもいるのかな。それとも、あの記憶も物語?こっちが物語だよね?……あれっ… ねぇ召蜻、」
__どっちが本当の物語なの?
『…蛍。君は物語の消失を恐れてる。現実だろうと図書館だろうと、君にとってはどっちも物語さ。』
召蜻は僕を離さまいと、握った手により一層力を込めた。その僅かな痛みが僕を正気に戻そうとしてくる。
いや、僕は…正気だ。…だよね…?
『だからこそ、私は君に教えただろ?』
沈む夕日が最後の足掻きのように照り、召蜻も構わず続けた。
『物語は消えない。他の世界として残り続けるんだ。人の数だけ物語があり、本のページだけ世界が広がる。』
「…」
『それに、私は物語からしたら偶像だけど、現実からしたら蛍が偶像なんだよ。』
彼女は言いたいだけ言って、手を離した。その温もりが柔らかく引いていく。今度はさっさと現実へお戻りと言ってる。
彼女はヒロインの設定を全うしようとしているのだろう。その揺らす髪も、キミお気に入りの席も、全部彼女を引き立たせる装飾にすぎない。今になって召蜻をまじまじと観察した。
そっか…。キミが読んでた本がなんだったのか分からなかったのは、僕は設定を与えなかったからなんだね。それでもキミは、召蜻は栞を挟むような本を見つけた。僕がココを物語だと気づかせる著作権の切れた本も出てきた。
設定外も動く。召蜻は生きてる。世界は呼吸し続ける。忘れ去られることはない。
「…はぁ………、」
僕は突っ立っていながら、全てを悟ってしまった証拠のようにため息を溢した。
まだ。ここにいたい。
まだ、キミといたい。
ねえ…、召蜻っ
と顔をあげるとキミは泣いていた。
同じ気持ちなのかい?ココでの思い出はどうだった?その設定は気に入ってた?
それに答えるようにキミは優しく微笑んだ。
『ありがとう、ホタル。もう君は大丈夫みたいだ。色んな話をしてくれて、私という物語を作ってくれて、本当にありがとう。』
「…っ召蜻!!、僕は、まだココにいたいっ!キミといたいよっっ!!!」
僕は喘ぐ声で、必死にキミに抱きついた。帰りたくないんじゃない。ココにいたいだけなんだ。
キミは少し驚いた後、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。私もっ…と囁いた気もした。
でも、これが本当の本当に最後。
『ホタルの物語を続けておくれ。そこで私は生きる。君が作る物語が、新しい世界になると信じて。』
「めいっっっっっ!!!!!」
夕日が沈み切っていた。八分二〇秒という時間のラグは、僕らに味方してくれていた。
__えー!じゃあ、メイちゃんはどうなったのー?
__図書館は今もあるのかな…。
__ねぇ、せんせっ?
__続きを教えて!ホタルせんせっ!
「そうだね…、これは僕が覚えてる彼女のモノガタリさ。」
__メイちゃんは…消えちゃったの?
「ううん、召蜻は今もどこかで生きてる。図書館でいつもみたいに掃除をサボってクッキーでも食べてるんじゃないかな?」
__えー?本にカケラが落ちちゃうよ!
「そうそう、だから困ってるんだよ。」
__ホタルせんせは注意しないの?
「しても治らないんだよ、あいつ。」
__アハハッ!
__じゃあメイちゃんは元気なんだね!
__良かった。
「あぁ、みんなが作る物語は、キミ達が信じ続ける限り忘れ去られても、残されなくても、 消失はしないんだ。物語は永遠に続く。」
__そっか。
__せんせっ、別のお話もして!
__アタシ、三日月ウサギの話がいい!!
__まっどはったーの御茶会が面白いよ!
__お、おれ、答えのないなぞなぞの答え探ししたい
__もう!フェイクな猫ちゃん忘れてる!
「はいはい、落ち着いて。順番にちゃんと全部話しますから。」
__やったー!!
「でーも、お昼休み終わっちゃうよ。5時間目の準備は終わった?」
__あー!忘れてたー!次なんだっけ!?
__次は社会だよ!水のじゅんかん!
「ほらほら、トイレ休憩も忘れずにね。」
__せんせっ、後でまた続きお話しして!
__おれも聞きたい!
__みーんな揃ったらよ?
「わかった、わかった。放課後、また図書館ね。続きはいつでも話すから。」
この物語の呼吸が止まるまで。
どこかの栞から引用___
『私のお気に入り』
本の虫より永遠を語って。
__fin.