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BL
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地雷さん さよなら
「 太 」『 敦 』
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『君の光に溺れる ― 太宰治の視点 ―』
人は、光に触れすぎると痛む。
……そんなこと、誰に教わったんだっけ。
私はいつだって、闇の側にいた。
それが一番楽で、居心地がよかった。
何も信じず、何も望まず、死に場所だけを探していた。
それなのに――。
あの日、白い髪の少年が現れた。
不器用に笑って、必死に人を助けようとしていた。
自分が傷つくことより、他人を守ることを選ぶ、どうしようもなくまっすぐな子。
まったく、厄介な出会いだった。
最初は興味本位だった。
ああいう人間は、どうしてこんな世界で生きていられるんだろう、って。
でも気づけば、彼の声や表情が、頭から離れなくなっていた。
誰かを信じることをやめたこの私が――。
あの少年にだけは、嘘がつけなかった。
彼の手は温かかった。
あの夜、血の中で倒れた私を抱きとめた時の、あの手の温度。
『 太宰さんを傷つける奴は、許さない 』
そう叫んだ声が、今でも耳に残っている。
怒りと悲しみが入り混じった声。
あれを聞いた時、胸の奥が少し痛かった。
――死ぬのが惜しい、なんて、思ってしまった。
馬鹿だな、私。
死に場所を探していたはずなのに、生きる理由を見つけてしまうなんて。
彼は光だ。
手を伸ばせば届く距離にいるのに、掴めば焼かれてしまうような。
だから、私は少し離れた場所から見ていたい。
彼が成長していくのを、彼の優しさが誰かを救っていくのを。
それでいい。
私は影で構わない。
……そう、思っていたのに。
戦いの後、港で彼に会ったとき。
『 僕は、その面倒の理由になりたい 』
そう言われた瞬間、胸の奥に火がついた。
どうして、そんな言葉を言うんだ。
そんな風に、私を――縛るような目で見るんだ。
逃げたくなる。
でも、逃げられない。
彼の瞳がまっすぐで、痛いほど眩しくて。
どうしようもなく、心地いい。
ああ、本当に、厄介だ。
敦君。
君の光は、私の闇を焼いてしまう。
それでも、私はきっとまた、君の方へ歩いてしまう。
たとえ、再び傷を負うとしても。
たとえ、この想いが報われないとしても。
私はもう、君の光なしでは――
闇に戻ることができないのだ。